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どうする家康

【どうする家康】

▶︎大河ドラマ



【鎌倉殿の十三人】が本当に大好きで私的歴代ナンバーワン大河ドラマだったので今作になかなか気持ちが切り替えられず少し遅れて視聴開始。

嵐の松本潤って
俺様でかっこいいキャラなのに
俳優の松本潤って
どうして嵐でのイメージの逆をいく役が多いんだろうとよく思う。
今回も見始めて真っ先にそう思った。

徳川家康にしては顔が濃くてかっこよすぎるし(家康さんに失礼。)若々しすぎないかと思ったが前半と後半では全然違う印象だったし、家康が歳を重ね功績を挙げるごとに松本潤の演技や佇まいも重みを増していっているように見えて私は好きだった。
脚本としてもこれまでの家康像をぶっ壊す家康だったがそれが良かった。
家康が出てくるドラマや映画なんて数え切れないほどあるし、歴史上もインパクトが強いからどんな戦いをしてどんな功績があるかなんて普通に物語にしたところで今更感が否めない。
だからこそ家康のイメージを覆してよく描かれる家康とは違う家康像と史実とは逆をいくような家康の選択や新たな想像を掻き立てるような物語を描こうというのが面白い。
賛否の否は多かったのかもしれないし(終わりにいくにつれて週刊誌だけが叩き続けて見ている視聴者からは好評だったように思うけど)史実を大切にする歴史好きには邪道だったのかもしれないがドラマとしてはこういう試み好きだ。
前作とのギャップも良かったと思っている。
2作連続、【鎌倉殿の十三人】みたいな作品だと少々重苦しすぎる気もする。
ただ、天海として小栗小四郎が出てきてくれたこと、吾妻鏡と源氏物語とこの作品を繋げてくれたことが粋すぎて感動。特殊メイクのすごさにも感動。いまだ鎌倉殿ロスなので本当に嬉しかった。



8・9話、三河一揆で家康が家臣たちの裏切りにより悩む。寺という家康が生きる世界とは真逆な世界との戦い。家康の人生に大きな影響を及ぼすものだったろう。これがこの先の家康の考え方や江戸幕府を作る大事な1歩だったと思うので1話以降で1番最初に家康と家臣団から熱量を感じる回だった。
とくに家康が夏目広次(甲本雅裕)と本多正信(松山ケンイチ)に対して罪を言い渡すシーンはかなり印象的だった。
今作は三河家臣団(松重豊)(大森南朋)(山田裕貴)(杉野遥亮)(他)が居てこその家康だったから、この辺りで強くなっていく殿と家臣の絆、そしてある意味でこのちょっと後までが家康の力はないけどきっと平和で自由があって幸せだったんだと思うから最終話の描き方によるところもあるけれど、最後はこの頃のみんなを思い出した。



11話、瀬名とお田鶴(関水渚)の回想シーンの美しさと友情ではどうにもならない家による戦い。見るのが苦しくて色濃く覚えている。
各々が思う正義と各々の信じるものがあって、それが相容れない場合は命をかけて戦わなければいけない時代。みんなが平和を祈って幸せを求めていることに変わりないのに。
男臭い時代、ドラマの中この回だけは美しく綺麗でそして美しく綺麗だからこそ残酷さが際立っていて切ない。



そして何より瀬名と信康(細田佳央太)の自害はクライマックスかというくらい泣いたし、印象に残っている。
瀬名は歴史上は悪女とされることが多いけど、このドラマでは本当に家康と子どもたちそれから家臣を含めた家族を愛し、平和を願い、心優しい女性として最後まで描いたんだなあと。
信康も心優しくて戦国の世に生きるには向かなかった。
(鎌倉殿でも書いたが、大河ドラマもドラマなので史実と違ってこそ面白みがあると思うタイプなので。)

瀬名と千代(古川琴音)の面会は個人的に最高だった。
直近ではコントが始まるを見ていたので、中浜姉妹だと感動。
ただ、この面会から瀬名の心に命を懸けるほどの大きな夢が出来て、最終的にその命が燃え尽きると思うと切ないのだが。
もしかしたら本当にこの世を生きた瀬名も、この瀬名と同じだったかもしれない。
ただ愛おしい人と平和な世界で生きるために命を懸けたけど上手くいかなくて徳川家を守るために悪役を買って出たのかもしれない。
どんな悪人も100%悪ではなかったり、誰かにとっての大切な人だったりヒーローだったりする。逆にどんなに善人に見えても本当は悪人かもしれないし、どこかしら汚い部分は人間だからある。それが悪いことだとは思わない。
鎌倉殿の政子の描き方にとても似ていると思うけど瀬名も後の世に生きた人が瀬名の一部がそう見えたから悪女として扱われただけで本当はどんな人間だったかは本人にしかわからない。
(自分がどんな心を持った人間かなんて自分自身にもわからないのだから。)
少なくともこの家康と瀬名はふたりで平和な世界で愛に溢れた静かな日々を過ごすことをずっと願っていたのだから本当に辛すぎるお別れだった。
愛に溢れた瀬名と信康だからこそ力強く自害するという選択ができて、その愛を力に変えて家康が江戸幕府を開く道へと進む未来を思うと辛いこともまた運命という皮肉を感じた。

歴史の流れを見るとわかってはいたし、於愛(広瀬アリス)が出てきた時点でもうすぐだと覚悟はしたし、1年間で家康の人生を描かないといけない大河ドラマにしては頑張って引っ張ったほうではあると思うけど瀬名がいなくなるのは悲しすぎて瀬名ロスだった。
ずっと家康のそばに居る瀬名を見たかった。



瀬名を失くした家康は織田信長(岡田准一)を討つという心の弱い家康には大きすぎる野望を抱く。
本能寺の変で明智光秀(酒向芳)が信長を討つことにはなるのだが、本作の本能寺の変は家康と信長の戦いであったし信長は家康しか見えていなかった。
今回描かれた家康と信長の関係は最後まで互いの人柄や思いは相反するのだけど互いに相手を自分の人生の大きな財産として認識し、立場は違えど友としてある意味で最後まで執着し合っている。
信長の持つ強さと冷酷さと孤独さを岡田准一が演じるのはものすごくしっくりきていたが、本作での家康と信長の描き方を知ってますます信長を岡田准一が演じたことに意味を感じた。


家康と石田三成の戦いも最高。
親友同士の初共演で、歴史的戦い!
大河ドラマってこういうのが多くて映画・ドラマオタクの興奮案件がたくさん。幸せ。



そしてクライマックスに向けての豊臣秀吉(ムロツヨシ)と茶々(北川景子)の憎たらしさには感動さえしたほど。
北川景子に関してはお市と茶々では全く別人のようだった。
顔は変えれないので声と衣装・メイクを変えたと仰っていたけど、お市と茶々では顔付きが違って見えたし姿形は似ているけど完全に別の魂が入っていたから本当に母と娘のようで驚いてしまった。
そんな茶々が作り出した最後の怪物・秀頼(作間龍斗)もとんでもない恐ろしさだった。ただ、その反面可哀想でもある。
最後の覚醒は幼少期からのある種洗脳の賜物なのだから。

考えさせられたのは茶々の遺した言葉。
戦いは意味のないこと。戦争は絶対に認めてはいないこと。それは強く思うけど、本当の平和とは何なのだろう。茶々の憂いた日本になっている今どうしたらよいんだろう。

戦国時代の歴史上の人物としても私は徳川が好きで(女のドロドロがある大奥が好きなのだけど)豊臣はそんなに好きじゃなかった。
でも今回、ものすごく豊臣に興味が湧いた。
そんな新たな出会いをもたらしてくれた。



とにかく家康と瀬名が大好きでたまらなかったので最後、瀬名と信康が迎えに来てくれて本当によかった。
今作の家康も、(想像でしかないが)実在した家康も、天下を統一するくらいだったから相当大きな権力があって威張っているじじいだっただろうが本当のところは強くなるたびに孤独になっていったと思う。ともに戦ってきた三河家臣団には先立たれていたわけだから、こんな恐ろしいじじいの死に目に立ち会いたいと心から思う家臣などいなかったように思う。阿茶の局(松本若菜)がぽそりと何度か口にした家康の最後を憐れむ言葉が真実のような気がする。
でもそんな悲しい最後にもし家康が大好きで心の支えで、何より2人のために頑張って築いたといっても過言ではない平和な日本を去るときに2人の姿が見えたなら唯一の救いだなあと思うから幸せに眠ったかもしれない。

古沢さんらしいというか【レジェンド&バタフライ】に似ているなあと思ったのだが、ファンタジーな世界で救いを差し伸べる終わり方で最後まで明るい世界で今作はよかったなあと思える。
大河ドラマにハッピーエンドもバッドエンドもないのだけど、【どうする家康】はハッピーエンドだった気がした。

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