見出し画像

Slackフリープランの変更への対応について

(扉画像はSlack公式サイトより引用)

Slackの料金プランが9月1日から改定されることが発表されました。これまでフリープランで利用してきたという人も少なくないはずで、先日行った講演でも「どう対応したらよいか」という質問がありました。対応策について自分なりに整理しておきたいと思います。

変更がもたらす影響

今回のプラン改定は初の値上げとなり、プロプランでは1ユーザー月額960円であったところが月額1,050円になるというものです。例えば100人が月額払いで利用する場合は、96,000円→105,000円と1割近く負担が増えることになります。グループウェアを導入したばかりで、売上や生産性の向上などがまだ数字に表れていない組織では、負担感は小さくないと思われます。

それ以上に10人程度の小さなチームで、Slackのプロプランに含まれるような通話機能や組織外のユーザーとの交流など高度な機能を用いていない場合は、これまではフリープランで十分だというケースも珍しくありませんでした。(実際、筆者の関わるSlackワークスペースも、NPOとしてSlackの支援プログラムで無料でプロプランを用いているところを除いて、全てフリープランで運用されていました)

これまでは「メッセージ数1万件、ストレージ容量5GB」がフリープランの上限となっており、なかなかメッセージ数がそこまで蓄積されないことや、ストレージもGoogleドライブなど外部サービスと連携させれば上限に達しないことから、この上限を意識する必要がほとんどなかった(あるいは1万件・5GBという制限がどう影響するかよくわからなかった)、というのが実情だと思います。

しかし、これが90日、およそ3ヶ月間しかメッセージ履歴やファイル保存ができないとなると、上限を意識せざるを得なくなってきます。

対応の3つの方向性

対応の方向性としては3つ考えられます。

  1. 予算を確保した上で有料のプロプランに移行する

  2. 制約を理解した上でフリープランを使い続ける

  3. Discordなど他のグループウェアの利用を検討する

予算が確保できるのであれば、1の「プロプランへの移行」が最も理想的です。実際、わたしが所属しているNPOでもプロプランでSlackを運用していますが、音声通話や他組織(相手側もプロプラン以上に加入している必要があります)とのチャンネルの共有などフリープランにはない便利な機能を活用することが出来ています。有名なところでは、近畿大学が2020年に全学生・教職員にSlackを導入して大幅な生産性の向上を実現しています。

しかし、やはり予算化のハードルが高い、という組織も少なく無いはずです。業務効率・生産性の向上などの実績が上がるまでは、近畿大学がそうであったように、特定の部門部署に限定して導入し、その成果を元に全組織へと拡げていくといった方向になると思います。

また、そもそもフリープランで十分だったのに、というのが本音の組織も少なく無いはずです。Slackがいつまでこの上限を維持するか(更に厳しくなる可能性も有る)という点は念頭に置いた上で、もうしばらくフリープランで行きたいというケースもあるでしょう。

前述のとおり、ファイル保存はGoogleドライブなど他のストレージサービスを用いることを原則とすれば90日制限が問題になることはあまりないはずです。メッセージが90日より前のものが参照できなくなる、という点をどうするか?

制限はプロジェクトであれば問題にならない?

実際のところ私が関わっているSlackワークスペースではでは90日より前のメッセージを参照したいというケースは希です。というのは、Slackで進めている内容が、プロジェクトベース、つまり有期性のものであり、何らかのゴールに到達すればそれでSlackワークスペースの運用も終結することが多いからです。

新潟で展開するプロジェクトの1つ「阿賀北ノベルジャム

もちろんプロジェクトとはいえ、90日より前の情報を参照したいということは時々あります。そういった場合に備えて、ミーティングの内容はGoogleドキュメントやNotionに残しておいたり、タスク管理アプリTrelloなどに作業手順は履歴を残しておく、といった具合にアーカイブは他の場所に残しておくようにする必要があります。逆にいえば、Slackはメールなどではやりとりが煩雑になる現在進行形のコミュニケーションに特化させるということです。

更に言えば(これは改善してもらいたいポイントでもありますが)Slackの検索機能は必ずしも使いやすいとは言えません。過去のメッセージがなかなか見つからなくて困った人も少なくないはずです。他のツールとの組み合わせ方も含め「90日より前の投稿が見られない」ことが本当に問題になるのかどうかは、改めて検討しても良いかも知れません。

Discordなど他のツールの検討も

このような有期性のあるコミュニケーションは、Slackの主な想定利用シーンからは恐らく外れています。というのは、Slackは2020年にCRM(顧客関係管理)大手のSalesforceに買収されており、プロジェクトの対義語でもある定常業務に今後も最適化されていくことが予想されるからです。

一方で、毎回少しずつ形を変えて実施されるイベントなど、プロジェクト運営に特化させるのであれば、Discordなど他のグループウェアの活用も検討すべき時期かも知れません。わたしが関わる小説ハッカソン「ノベルジャム」や、7月にはじめて開催した「アニメ×ゲームジャム」でもDiscordを中心に採用し成功裡にイベントを終結させることが出来ています。

Discordについては、こちらのnoteがかなり詳細にその魅力を紹介されています。Slackが「業務」に重点が置かれているのに対し、ゲームをしながらコミュニケーションをすることを想定して生まれたDiscordは、若者・クリエイターに受け入れられやすい仕組みやUI(見た目)を備えています。現在のところ、音声コミュニケーションなど主立った機能については無償で使えることができるのも大きな魅力です。

グループウェアの活用が進むにつれ、目的に特化したバリエーションが生まれてきた、とも言えるでしょう。Slackのプラン変更はどんなツールをどのように使うべきなのか、改めて私たちに考えるきっかけを与えてくれるものだと言えそうです。

※この記事は日経媒体で配信するニュースをキュレーションするCOMEMOキーオピニオンリーダー(KOL)契約のもと寄稿しており日経各誌の記事も紹介します。詳しくはこちらをご参照ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?