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布教したい手塚治虫①「ミッドナイト」

「ブラックジャック」がドラマ化されることが決まりました。
この他にも令和になってからAIで新作が発表されたり、いまだに人気が衰えない作品の一つである「ブラックジャック」。

圧倒的にブラックジャック先生がカッコいいですし、作品自体にも学びがあっていつ読んでも気付かされることや大事にしたい言葉や考え方がいくつもあって、読む人を惹きつけてやまないそんな作品です。

そんな「ブラックジャック」の世界線と同じ世界で生きる少年が主人公の作品をお話ししたいと思います。

あらすじ

深夜の街を走るタクシードライバーが出会う奇妙な客たちの姿を描いたサスペンスドラマです。「夜はいろいろな顔を持っている。その顔をひとつひとつのぞいていく男がいる。その名はミッドナイト」
そんなプロローグの言葉で始まるこの物語は、主人公・ミッドナイトの出会う奇妙な客たちの姿を、毎回、1話完結形式で読ませてくれます。

手塚治虫TEZUKA OSAMU Officialより

主人公のタクシードライバー・三戸真也(通称ミッドナイト)と様々な客との出会いで展開する1話完結の物語です。大枠の形式は「ブラックジャック」に似ています。

そして冒頭でお話しした通り、ミッドナイトの世界にはブラックジャック先生が生きています。

ここで少し話は逸れますが、手塚治虫の漫画はスターシステムというやり方で、作品を跨いで同じキャラクターがたくさん登場します。

キャラクター=映画俳優、出演作=映画と捉えているので、当然与えられる名前も役柄も違ってきます。
例えば、ブラックジャックの中で「鉄腕アトム」のアトムが登場した回があります。
この時のアトムは、兄を刺した通り魔に復讐する弟、という役を与えられての出演でした。

このように様々な作品に見たことのあるキャラクターが出てくるということは手塚作品の中ではよくあることではあるのですが、「ミッドナイト」の中のブラックジャックは違います(と私は思っています)。

同じ時間を生きる医者として「ブラックジャック」のブラックジャック先生として準レギュラーくらいの頻度で出てきます。
そんなリンクがまた嬉しいです。

ミッドナイトのここが好き

元暴走族のリーダーだったミッドナイト。
そんな彼のキャラクターがシンプルにカッコいい。

暴走族だったのでその時のノリで、仲間と好き勝手に街中を運転させているような人かと思いきや、全然そうではありません。

たった1人で真夜中から朝方にかけてしっかりお仕事をして、時折お節介とも言えるくらいお客に話しかけたり、面倒を見たり。
乗客だけじゃなく野鳥や野良猫など、気になると放っておけない質なのが魅力です。

この、親分肌で面倒見が良く責任感の強いキャラクターが手塚漫画に出て来るキャラクターの中で5本の指に入るくらい、私は好きです。それくらいカッコいい。

そんな、たくさんの手下を従えていた彼がどうして孤独なタクシードライバーになったのか。

また、彼の乗るタクシーは改造タクシーでどんな道でも走れる上に、人間であるミッドナイトと一心同体なので彼以外の人は運転できないという少し不思議な設定。
なぜ車と一心同体なのか。

少しずつ物語が進んでいくにつれてその経緯やミッドナイトの過去が明らかになっていきます。

物語のジャンルとしてサスペンスと謳っているものの、オカルトやSFの色が濃いです。

人情モノのストーリーの中に、ミッドナイト自身が持つエスパーの能力(本人は自覚なし)に触れることがあったり、改造タクシーがボタン1つで5輪目のタイヤを出して渋滞中の道路を大急ぎで駆け抜けたり。

そんな現実離れした設定でも、ミッドナイトの客に対する粋な振る舞いがその設定に重なると、客の持ち込む面倒の行く末に対して一喜一憂することができるのです。

私は都市伝説や少しオカルトチックな話が好きなので、世にも奇妙な物語のような少し不思議な物語が好きな方であれば、私と同じように楽しく読んでもらえるのではないかと思います。

最後に

「ミッドナイト」に登場するブラックジャック先生が「ブラックジャック」本編よりもメタ発言が多いのもまた、ちょっと笑ってしまいます。

最終回が衝撃的なので面白いと思うかどうか大きく分かれてしまう要素の一つかもしれないですが、「ブラックジャック」以外の手塚作品をあまり知らないという方にとっては読みやすい作品ではないかと思います。

長編ではありましたが、秋田文庫版であれば全4巻なのでサクッと読んでしまえます。
これを機に手塚治虫の作品について気になってもらえたら嬉しいです。

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