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アラ還原付日記(仮)episode 017 カブと両立しないこと[1]~納車124日

2020年1月24日(金)
オイル交換に行ってきた。

1000kmまでの遠い道のり

初回点検の時、走行距離が1000kmになったらオイル交換に来るよう言われていた。

そもそも初回点検が「1ヵ月、または1000kmの早いほう」とされている。1ヵ月で1000kmくらい乗ってしまう人もいるのかもしれないが、その頃、ミドリの走行距離は300km足らずだった。ちょっとそこまで乗るのもおっかなびっくり、バイクショップまでの片道15kmかそこらでも「遠出」という感覚ではそんなもんだ。

それでも年末までに900km乗った。あと100km。このペースなら年明け早々オイル交換だなと思っていた。

が、その100kmが意外と遠かった。

年末年始をはさんで自分の時間が取りづらかった。寒くて日が短くて、乗って出かけるのも億劫になりがちだった。などなど、この季節ならではの理由もある。

だが、季節には関係ない理由もある。

スタンプラリーだ。

カブと両立しない趣味

スタンプラリーが趣味になったきっかけは、2015年、JR東日本で開催された「来たぞ我らの!ウルトラマンスタンプラリー」だ。
山手線、中央線を中心に、「ウルトラQ」12駅、「ウルトラマン」27駅、「ウルトラセブン」14駅、「帰ってきたウルトラマン」11駅のトータル64駅でスタンプを集め、制覇証をもらおう! という趣向である。

たまたま用事で降りた渋谷駅で、専用台紙とスタンプコーナーを見つけた私は、1つだけのつもりで押した。スカイドンだった。
帰りに寄った新宿駅でも押した。ウーだった。

「ウルトラQ」からのリアルタイム世代である私にとっては、まさか21世紀にこんなところで再会するとは思わなかった懐かしの怪獣たち。
だからといって、全64駅は回れる気がしない。
けれど、2駅押してしまった以上、そこでやめられる気もしなかった。

翌年には第二弾「帰って来たぞ!我らのウルトラマンスタンプラリー」を迎え撃つ。前年より1駅多い65駅、路線も東京モノレールが加わったうえ、エリア外にもお楽しみスタンプが用意されるなどさらにパワーアップ。いっそう過酷な山に挑んでこそ、去年の制覇証を持つ選ばれし者。

こうして私は、駅で、街で、「スタンプラリー」と書かれたポスターや台紙があると、向こうから目に飛び込んでくる体質を獲得した。

商店街や文化施設のスタンプラリーもあるが、やはり胸躍るのは鉄道関連。
もともと旅行が好きだったのに、息子の学業問題や実家の老親介護問題で、気軽に出られる状況になかったのも関係あるかもしれない。電車に乗っては降りてスタンプを集めるという道楽が、旅の代替になっていたのだ。

納車直前の夏には、「夏休みそうにゃんスタンプラリー」(相模鉄道)と「東急線電車スタンプラリー」(東急電鉄)にいそしんでいた。
納車以降も、「中央線開業130周年記念スタンプラリー」(JR東日本)、「小田急江ノ島線開業90周年記念スタンプラリー」(小田急電鉄)と次々に参戦した。
明けて1月には、年をまたいで「私鉄10社駅名かるたスタンプラリー」にチャレンジ中であった。月末に迫った最終日までにあと8駅回れるかどうかを懸けて。

ミドリは留守番である。

コンプリートの概念

「私鉄10社」は、首都圏の私鉄(西武、相鉄、京王、東京メトロ、東武、つくばエクスプレス、東急、京成、小田急、京急)が10社合同で開催するスタンプラリーである。
私の知る限り、2016年からやっていた。その前には9社だったこともあるようだ。

各社2駅ずつ、指定の駅でスタンプを押し、2つ揃うとオリジナル電車カードがもらえる。カード配布場所は、2駅のどちらかの場合もあるし、別の場所の場合もある。
したがって、回るべき駅はとりあえず20。「ウルトラマンスタンプラリー」に比べれば楽勝に見えるが、10社という広範囲にわたるのが、醍醐味でもあるし過酷さでもある。
神奈川県民の私には、小田急、相鉄、京急あたりは身近だし、千葉出身なので京成もなじみ深いけど、西武、東武となるとほとんど接点がない。
接点がないからこそ、スタンプラリーに託した旅心を満たせるともいえる。

けど、いくら何でも西武秩父駅は過酷すぎないだろうか。
旅の代替どころか旅そのもの、日帰り旅行だ。

行った。

実質、スタンプを押して帰るだけのとんぼ返りの旅。
それでも、駅周辺を散策したり、歩いてすぐの秩父鉄道御花畑駅で貨物列車を見たりして、つかの間の旅気分を味わった。
そして特急ラビューで西武秩父駅をあとにした。

さて、電車カードはどこでもらうんだっけ。
スタンプ台紙をあらためて広げて、愕然とした。

西 武 秩 父 駅 お客さまご案内カウンター

えぇー。何でだ自分。なぜカード配布場所は別だと思い込んでたんだ。
そこは社によって違うので、よくよく確認のうえスケジュールを組んだはず。なのに、なぜ。

この時点で最終日まで2週間。残る駅はまだ6つもある。カードだけもらいに、もう一度西武秩父駅を訪れる余裕はない。
いいじゃない、スタンプは押したんだから。スタンプが揃えばコンプリートでしょ。
そんなのきれいごとだ。20のスタンプと10枚のカードが揃ってこそコンプリート。20のスタンプと9枚のカードじゃコンプリートとはいわないんだ。

ミドリに留守番させといてこんなことに夢中になっていたら、いつまでたってもオイル交換なんて行かれるわけがない。

アラ還の私がミドリに乗れる月日はそんなに長くない。
限られた時間、スタンプラリーの旅を取るか、ミドリとの旅を取るか、いっぺん考えてみるべきだ。
と言いつつ、ようやく1000km乗ってオイル交換に行ってきた私は、何とかあと1日ひねり出して西武秩父駅へ電車カードをもらいに行かれないか懊悩していたのであった。

(※その2日後、もらいに行った)
(※しかし、スタンプラリーかミドリかの問いにはおのずと答えが出た。この頃すでにひたひたと迫っていた新型コロナウイルスのため、世の中はやがてスタンプラリーどころではなくなるからである――が、それはまた別の話)

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