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人には言えない“欠乏感”に感情移入 『その年、私たちは』ドラマレビュー

2021年12月からSBSで放送された『その年、私たちは』について、あらすじやキャスト、見どころについて紹介する。

■『その年、私たちは』とは?

予告ポスターを見た時から、センスが良さそうなドラマが始まる予感がした『その年、私たちは』。主演はあの『パラサイト』で半地下家族の長男を演じたチェ・ウシクと、日本の韓国ドラマブームを再燃させる火付け役となった『梨泰院クラス』でソシオパス、チョ・イソ役を演じたキム・ダミ
このふたり、映画『The Witch/魔女』で共演していて、キム・ダミはこの作品を決めた理由のひとつはチェ・ウシクだったと語るほど、信頼関係にある実力派俳優のケミストリーが好評を呼び、韓国でも人気を呼んだ。

■『その年、私たちは』あらすじ概要

高校時代にドキュメンタリーに出演した学年最下位のチェ・ウン(チェ・ウシク)と学年1位のクク・ヨンス(キム・ダミ)。撮影中はいがみ合いながらも、撮影終了する頃に交際をスタート。しかし交際5年目にヨンスから突然別れを切り出し、破局。それから5年後、ヨンスは小さい広告代理店でクールにチーム長を務めながらも、毎日に物足りなさを感じる日々。一方、無欲でマイペースなウンは人気覆面画家「コオ」になっていて、ふたりは仕事がらみで再会することに。さらに10年前のドキュメンタリーが若者の間で話題となり、続編を撮影することになったことから、不本意ながらウンとヨンスが関わっていくことになっていく、というストーリー。

■『その年、私たちは』見どころ

高校時代から大人になった現在を織り交ぜながら描く、ウンとヨンスの10年愛(実際は5年ほど空白の時間はあるが)。付き合っていた頃、別れた本当の理由、別れてからのふたりの心情がモノローグやエピローグで丁寧に語られ、思わず感情移入してしまう。

最近の韓国ドラマは深読み傾向にあり、各話が終わってからSNSでは考察に関する投稿で溢れることがよくある。しかしこのドラマは、キャラクターの気持ちが手に取るように分かるセリフや行動が多いため、ストーリー展開、役者の演技、映像の美しさなどをゆっくりと楽しむことができる。いわゆる王道のラブストーリーではあるが、モノローグで語られる“人には言えない彼らの欠乏感”がなんとも切なく、思わず見守ってあげたくなるハートウォーミングなところもこのドラマの魅力だ。

■『その時、私たちは』キャスト

本人のキャラとシンクロする、自然で透明感のある素朴な演技力

チェ・ウン役を演じたチェ・ウシク

本作でのほほんとした無欲でのんびり屋のチェ・ウン役を演じたのはチェ・ウシク。バラエティ番組(『ホームバカンス』 『ユンステイ』『IN THE SOOP』)やメイキングでもムードメーカーで、いたずらを企てては周囲の人を和ませるような人柄だ。その姿はヨンスに仕返しを企てたり、都合が悪くなると逃げてしまうウンと重なる。演技は自然ながら、その時々のウンの感情が伝わってくる演技は、透明感のある素朴さが魅力のチェ・ウシクだからこそ。
30代というのに制服姿にも違和感がない童顔っぷりや、韓国のおばさんが使うようなサンバイザーで庭の手入れをしている姿も可愛く、改めてチェ・ウシクに魅了された人も多かったようだ。またウンの衣装はスタイリングセンスが抜群。181cmという長身で高級ブランドをこなれた感じに着こなしているので、ファッションも見どころのひとつと言えるだろう。

クールに振舞うヨンスの涙シーンはもらい泣き必至!

クク・ヨンス役を演じたキム・ダミ

一方ツンケンしている女子高生から、仕事ができるクールなチーム長となったクク・ヨンス役を演じたキム・ダミ。顔も小さく華奢な体つきなので小柄かと思いきや、なんと170cmとこちらも長身。相手役のウシクとの身長差やふたりの佇まいのバランスが絶妙で、ふたりのシーンはなんとも微笑ましい。
彼女はこれまで強めのキャラクターが多かったが、さすが怪物新人と呼ばれていただけあって、本作での自然な演技は“お見事!”のひとこと。特に涙を流すシーンでは、いつも強気に振舞っているヨンスが抱えた辛さや悲しさが切なくて、もらい泣きしてしまうこと必至だ。

可哀想なジウンを繊細かつ丁寧に演じ、応援する人が続出

キム・ジウン役を演じたキム・ソンチョル

そして忘れてはいないのが、チェ・ウンの親友で、クク・ヨンスに片思いしているキム・ジウン役のキム・ソンチョル『ヴィンチェンツォ』でカサノに想いを寄せる悪役ながら愛らしいファン・ソンミン役を演じて強い印象を残したが、『ブラームスは好きですか?』など過去の作品でも辛く暗めの役が多め。
本作でもソンチョル演じるジウンの欠乏感はウンやヨンスとのことだけでなく、母親との悲しいエピソードもあり、可哀想度はNo.1。そのため主役のウンよりジウンを応援する派も続出したほど。それは感情をひた隠すジウンをソンチョルが繊細かつ丁寧に演じたからこそ。彼の代名詞となる役にもなった。

■『その年、私たちは』もうひとつの魅力

本作が人気になった理由はもうひとつ。それはOSTにBTSのV(テテ)が参加したこと。チェ・ウシクはパク・ソジュンやVなどをメンバーとするウガファミリーの一員。いわゆるファミリーからの援護射撃だ。第1話、ウンの作業シーンで流れ出す「Christmas Tree」はハスキーかつセクシーなVの歌声が、覆面作家「コオ」としてのウンの孤独感や部屋の雰囲気を絶妙に醸成する。ウンのヨンスへの気持ちを代弁しているかのような歌詞で、画家として作品に真摯に向き合っているウンのシーンでよく流れ、各国のiTunesチャートでも1位を記録するほど人気を博した。

■最後に

『その時、私たちは』のあらすじ・キャスト・見どころについてご紹介した。ファッションやインテリアのこなれ感をはじめ、おしゃれで美しい雰囲気が漂う映像はMZ世代からも共感度が高く、高視聴率ではなかったにも関わずTwitterなどで話題になった。最近の韓国ドラマは重めなテーマを題材にした作品も多いが、ラブコメ系や心温まるヒューマンものなど、安心しながらドラマを楽しみたいという方にオススメしたい作品だ。

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