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なぜ勉強をするのか【後編】

 「なぜ勉強をするのか」後編です。前編では狭義の「勉強」と本質的な勉強とに分け、「勉強」の方をする理由を書きました。なので後編では後者の勉強について、「なぜ勉強するのか」という問いに対する私なりの考えを書いていきます。ここからは名言引用祭りになりますがご了承ください。

1.巨人の肩の上に立つ

 ニュートンの手紙で用いられたことで有名なこの言葉は、先人の知の積み重ねに基づいて何かを発見することを意味するそうです。私たちは何をするにしても先人たちの発見の力を大いに借りています。

 先日三陸鉄道リアス線に乗ってきました。上の写真はその時撮影した車窓からの景色です。壮大な海を見て私はふと思いました。「地球って丸いんだなあ」と。

 しかし先人たちの発見を学んでいなければ、私は地球がどデカイ球だということを知らず、もちろん地球の裏側に人が暮らしているなんてことを想像することもなく一生を終えていたのでしょう。それはそれで悪くないですが、世界の見え方がまるっきり変わりますね。少なくとも私は、地面がぐるっと続いていてその先に人がいると考える方が好みです。

 私たちは自覚の有無に関わらず、巨人の肩の上に立って日々を過ごしています。義務教育で習う内容の一つ一つでさえ、最初にそれを切り開いた先人たちはそこに膨大な時間と労力を賭したのです。そんな先人たちの知の蓄積という「巨人」の肩を借りることで更なる高みを目指すことに、勉強の価値があると思います。

 土門拳氏についてのnoteにも書きましたが、知識や教養は世界を見るための窓のようなものだと考えています。窓は沢山あったほうが日々が豊かになります。そしてどうせならより美しい景色の見える窓を手に入れたいものです。

2.「生きるに迷うとるんは、自分一人じゃないことを」知る

 これは大河ドラマ「花燃ゆ」の中で印象に残っている、本を読むこと、すなわち勉強することについて述べた台詞です。

同じく悩んで、同じく答えを出そうとした誰かがおって、教えてくれる。その人の目で見た世の中の、人生のあらゆることを教えてくれる。生きるに迷うとるんは、自分一人じゃないことを。

目に見えて役に立つ知識や、数字で実利を叩き出せる知識なんて、勉強で得られるもののほんの一部です。私はそれらを勉強のおまけくらいにしか思っていません。だから私は「それ何の役に立つの?」という質問が好きではないです。そんなことより、自分一人では日々生きていく事すらままならない。自分の内面や世界との格闘は誰しも避けて通れないと思います。

 そういう時に、同じように思い悩み、答えを出そうとした軌跡を残してくれている人が必ずどこかにはいて、その人たちと出会うために勉強をするのだと私は思います。

 生きることへの悩みに限らず、「蚊が絶滅したら困る生物はいるのか」といった一見どうでもいいような疑問でさえ、大体はそれに本気で向き合った先人がいると言う事実に私はいつも救われています。「こんなちっぽけなこと」が気になってしまうのは、決して変なことではないのだと、もっと貪欲に答えを求めていいのだと言われているようで。

3.カルチベートされる

 私が思い悩む時に特にお世話になっているのが太宰治の文章です。その中に勉強することについての言及があったのでこちらも引用させていただきます。

「日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記している事でなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ。」 太宰治著【正義と微笑】より

 やはり文豪と呼ばれる人は言いたいことの芯を捉えて言語化するのがうまいですね…さすがです。

自分の中でもやもやして鎮まらない考え・感情を一旦他の人の言葉で形にしてもらうというのは、悩みに対する良い対処法の一つだと思います。

4.おわりに。ー「進路」と「あなた」について

 さて、ここまで私が思う勉強することの意味・価値を書いてきました。ただ、何を言われても今学校の「勉強」の渦中にいる方にとっては目の前にあるテストや受験のプレッシャーを和らげるものにはならないと思います。ただ、競争や周囲の圧力、進路の不安などの「勉強」の仮面を外していった時に、実はそれはとても魅力的で楽しいものなんだということを1ミリでも伝えられたら嬉しいです。

最後に私が通っていた塾の先生の激励メッセージで心に残っているのもを引用させていただいて、今回のnoteを締めたいと思います。

最初に読んだ時は受験生にこんなこと言うか〜?と思いましたが、受験生にこそ知っていて欲しいことです。

あなたの中で進路によって大きく変わることは何ですか? あなたの中で進路によっても全く変わらないことは何ですか?『進路によって大きく変わること』は実はあなたそのものとは全く関係ありません。『進路くらいでは全く変わらないこと』こそを徹底的に破壊して、自分の納得いくように作り直そうと常に勇気を振るうのが、強くて優しいマトモな奴です。

                                 秕

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