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訥々日記

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タイムカプセルから掘り起こした拙い言葉の詰め合わせ
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2019年5月の記事一覧

夜を行き交う人たち

真夜中、どうにも眠れなくなっていたタイミングで偶然にも友達からのLINEがきた。 どうしようもなく消え入りたい気持ちを引き換えにして投げかけたLINEの内容は、今となっては微塵も覚えていないけれど「嫌われちゃうかもな、そしたら嫌だな悲しいな」と思いながら、行き場のない想いをただ聞いてほしくて吐露せずにはいられなかった。 お酒で浮かれてしまった夜も、居心地の良さに甘んじる夜も、すべてを台無しにしてしまいそうなほどひとりぼっちを自覚させられる。どうやらわたしの体は、お酒に溺れる

もう後戻りできないから どうか光のなかに立っていてね

人間を太陽と月に分けるとするなら、きっとわたしは月側の人間だな。太陽の光がなければ光ることすらままならないから。 あの頃、本気でそう思っていた。 誰かに「そんなことないよ」と言って欲しかったわけじゃなくて、本心で、なんなら無邪気に、むしろほんのすこし、そう思うことが誇りにさえ思っていた節があった。わたし、自分のことよく分かってるでしょって。 そんな高校生だったわたしに、当時バイト先の仲のよかった大学生の男の先輩が「きみも、誰かにとっての太陽なんだよ」と言ってくれたことを、

わたしの届かぬあなたへ愛のある日々を

それは、年末の片づけをしていた日のことだった。 かつての恋人からもらった“最後”の手紙を見つけたのだった。 微かに手が震えてはじめて、弾けんばかりに込み上げるなつかしさとせつなさを自覚する。泣いてしまうかもしれない気持ちに戸惑いつつ、読み返そうとする指先を止められずにいた。 一呼吸おいて読んだその手紙は、皮肉にもあたたかさに満ち溢れていた。 こんなにもやわい力で、これでもかと言わんばかりにやさしさとさみしさを詰め込み、せつなさにしっとりまみれた手紙をもらうことはもう二度と

過ぎ去った嵐と夜の瑞々しさ

あれは嵐だった。 いつだって、あとから振り返ってみればよくわかる。 晴れ渡る空を、薄雲から差し込む光を、まろやかな日差しと、刺すように冷たい風がわたしを通過してはじめて分かる。あれは、やはり、毎年恒例のごとくやってくる嵐だった。 抗わないようにと、わたし自身はどんどん丸くなっていくけれど、いつだって悲しみの記憶は容赦なく覆いかぶさってくる。どうしようもない。逃れられないとわかっているからこそ、本当にどうしようもない。 それでも、その嵐が過ぎるころにはちゃんと、流れ星みたい

キラキラにもメンヘラにもなりきれないまま、春は

TWICEが歌うOne More Timeみたいな女の子になりたかった。 帰宅したというのに、上着も脱がず、テレビもつけず、誰もいない静かな部屋で、昨夜見た情熱大陸を思い出しながらひとり思った。 それ以外はなんにも考えられないくらい、ただ、すっかり疲れていた。 Gimme gimme more 君と歩いて行く One more time gimme gimme One more time O-oh 手を繋ぎ見える全てが好き one more time 誰より One

ごめんねばかりでいつもごめんね

いまだに好きになれないバンドの曲を、彼らが解散してずいぶん経つというのに今になってヘビロテしている。 どうも好きになれないとかなんとか言いながら、繰り返し聴いてしまうのはなぜなんだろう。執拗に「ごめんね」と歌う声が耳の奥でこだまする。 あなたのことは好きになれなくても、あなたたちの作ったこの歌は意味が分からないからこそ美しく煌めいていて好きだ。 このところのわたしは、すぐに気持ちが溢れてしまうから「ごめんね」と言いながら笑って、「ありがとう」と言いながら泣いてばかりいる。