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〔掌編小説〕仲直り



 おかしい、計算が合わない。終業時間まであと10分、残業は確定だ。彼女の誕生日、せっかく良いケーキを予約したってのに、このままでは引き取りの時間に間に合いそうもない。やっと巡ってきた仲直りのチャンスを、俺はまた逃してしまう。理由もわからず、一言も口を聞いてくれなくなってからはや三日。僕が何かをしてしまったのか、考えても考えても思い当たらないから質問を投げかけたって、君は何一つ返事をしてくれなかった。君の好きな花を買ってきたり、丹精込めて美味しい食事を作ったりしてもダメだった。僕が差し出した対象を睨みつけて、君は終始無言で、部屋に閉じこもってしまうんだ。おかしい。全てこの本の通りにしているのに、どれもうまくいかないじゃないか。しかし、誕生日の項目を試せるのは今日しかないのだ。なるべく早く帰らないと。

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