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フィールドノート『となりとのちがい』

2016年の年末に、MAD City(まちづクリエイティブ)から、松戸駅西口の空き物件「スイッチルーム」を使ってAAPAのショーイングをしてみないか、と声がかかった。

物件を見に行くと、和室だった2部屋が改装されて1部屋になったリビングスペースと、そのまま残された和室(昭和を感じる)があり、オモテとウラ、外に開く場所と内に閉じる場所を「スイッチ」しやすい並びになっていた。

その和室を見ながら、そういえば西口に来ると、こういうかつての姿が残る場所をよく見るなと思った。自分が普段歩いている松戸の駅と自宅(東口の南側)を結ぶ道では、閉店・開店の工事をよくしてるなという印象はあるが、この和室のような場所があることを意識することはほとんどない。

東口は、リビングにいると和室のことを意識しなくなる、「スイッチルーム」と呼ばれるこの物件みたいな場所なのかもしれない。

そして後日。

実際に「普段は閉じていて見えない和室」があるのか気になって、その西口の物件から、普段は行くことのない松戸駅北側の根本地区にある歩道橋を通って東口まで歩いてみると、あの和室のような「かつての姿が残された場所」が見つかった。

加えて印象に残ったのは、各家庭のプライベートが集積する高層マンションやそこから東と西をつなぐ歩道橋の面(オモテ)が、パブリックな場所として開かれている神社の境内(ウラ山・ウラ庭)を食い破るように成長した姿が見える形で残っていたこと。

ウラは、既にそのほとんどがオモテのなかに取り込まれていて、姿形が見えなくなっているものも多くある。そういえば、「スイッチルーム」のリビングルームも元は和室だった。

もう一度、物件に戻って部屋を見てみると、リビングルームには角に古いエアコンや神棚の名残りが残っていた。よく見ると、札か貼り紙の切れ端のようなものもドアや壁にいくつかあった。

この物件を見て、最初は単純にオモテとウラを「スイッチ」できると思っていたが、こうして見直してみると、ウラがオモテによって覆われ、姿形があらかた見えなくなったリビングルームと、そのままの形で残された和室を「スイッチ」する部屋だった。

ますますこのリビングルームだけだと東口で、和室の入口のドアを外してしまえば西口になる気がしてきた。東口なら、まちの歴史はほとんど隠れているので日常的には意識しないで過ごせて、西口なら「かつての姿」をよく目にするようになる。

和室の入口のドアを残すか外すか?
「スイッチルーム」をどうするか、そこが大事になりそうだ。


<余談>

根本地区を巡ったあと、自宅がある場所の近く(東口側)もあらためて歩き回ってみた。すると今まで意識してなかったが、よく見ると「法律系の個人事務所」がやたら多い。そして、駅とは方向が違うので行ったことがなかった、自宅マンションの向かいにある坂の上で裁判所を見つけた。これが理由だった。

駅からの路面に並ぶ「個人事務所」という場所を見ていると、新しい出会いがいつも外から訪れる風通しのよさと、プライベート感がともにあるその姿が、なんだか魅力的に見えてきた。探偵事務所とか、まほろ駅前の便利屋事務所のように。

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