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サーブ900カブリオレ走る

10月の終わりに1992年式サーブ900カブリオレが納車になりました。

オークションで落札したのはまだ夏真っ盛りの7月の終わりで、その後、専門店でメンテナンスと登録をお願いしていたのが終わりました。

実はメンテナンス作業期間自体は1ヶ月も掛かっておらず、メンテナンス作業待ちの時間の方がずっと長かったです。また自分で行なった車庫証明取得も慣れないために時間が掛かってしまいました。

ひょっとしたら来年になるかも?と悠長に待ち構えていたら、納車が雪の降る前の10月中に実現して、心の中の声は早かったと言っています。

晴れて自分の名義となったサーブ900カブリオレについて、ファーストインプレッションをお伝えします。

初日は都内をうろうろ

納車当日は見事な秋晴れで恥ずかしさよりも嬉しさが勝ってしばし都内をオープンにして走りました。

写真で見るとキレイですが、実物はそこそこボロがある感じです。ボンネットやボディパネルはクリア剥げやら素人仕事の鈑金補修跡がある車体でしたが、前のオーナーが自分で出来ることはやってしまわれるすごい方だったのでしっかりとよく走ります。

街を走っていても、なんというか、残りの人生を楽しみたいおじさんが酔狂で乗っているのだなぁとあまりまわりの鋭い視線は受けなかったように思われオープンカーを楽しむ感覚です。

ファーストインプレッション

去年まで乗っていた1993年型サーブ900S 3ドアコンビクーペの記憶が立ってしまいそのコンビクーペとの比較になってしまいます。

年式も1年しか違わず、エンジンの仕様も同じ低圧ターボ、ミッションも同じ3速ATも基本的に同じでそんなに違わないはずなのですが、後半でお伝えするミッションオイルのせいなのか走りの面の個体差が大きかったです。

前に乗っていたコンビクーペと今度のカブリオレの違いは屋根が開くかどうか以外の違いは
①ハンドル位置以前は右ハンドルだったけれど今回は左ハンドル
②シートは以前はファブリックだったけれど今回は革シート
③ハンドルは、以前はハンドル中央にSAABのエンブレムがありましたが、今回はちょっと地味なエンボス加工のエンブレム

一番の違いはカブリオレボデイのゆるさがすごいこと

サーブのクラシック900がどういう乗り味か?について基本的なところはざっくり言うと、レシプロの飛行機それも戦闘機のような小型機に乗っているようです。特に、横風で斜めになって飛んでいるような感じの時のどこかお尻がムズムズする違和感のようなものをサーブ900カブリオレは感じるような気がします。

最善か無か?で有名な1980年台から1990年台のメルセデスベンツのW124やS124のシャーシのネジを数本緩めて、ボディと足回りが離れて別の動きをしているような、フロントもリアも緩々のぬるま湯状態の風呂桶に浸かっている気分ですらあります。

どこか危なっかしい感じで、昔のトヨタクラウンがNVHを抑えるためにあえてキャビンと足回りを分けていた時代の乗り味とも似ているかも。ボディはゆるゆるでも車体の軸に沿って固い芯が通っていてそのおかげか、高速でも直進安定性がすこぶる高いし疲れないです。

フロントがダブルウィッシュボーンでコンビクーペの場合はそれを強く感じてフロントタイヤが路面を滑らかになめていく高い追従性を感じられたのに対して、カブリオレは緩すぎてもなんだか分からない感じでした。

エンジンは3000回転ぐらいでモーターが回っているようにブゥゥゥーーーっと歌う様に細かい低音を緻密に小気味よく響かせてくれるので心地よさからこれまた温泉に浸かっているようなリラックス感を与えてくれるので思わず笑みがこぼれてきます。

先ほど戦闘機のような小型飛行機に乗っているようと表したのは、左右が湾曲しているフロントウィンドウや、切り立った崖のようなダッシュボードが小型機のコックピットを思わせることが影響している面もあると思います。

特筆すべきはシートのかけ心地の良さ。そんなに広いわけでもサイドのサポートがしっかりしているようにも見えないのですが、座ってしまうと何時間座っていても腰が痛くなったりしない。ただハンドルはちょっと重めで長時間のドライブでは自分の運動不足による筋力の低下を意識させるところがあるのです。

カブリオレなのですが、幌を閉めている時のキャビンの中の守られ感が高くコンビクーペとの違いを感じない程にしっかりしています。高速道路でトンネルに入って幌がふわっと浮いたことによる微妙な負圧で引っ張られた髪の毛の違和感があって「ああ、カブリオレだったな」と感じることがあるぐらい。遮音を含めてとてもしっかりしています。ただ、このクルマの幌はオリジナルの黒から社外品の緑に変えられているのでオリジナルはどうなのでしょう。

「雨の日には幌の内側リアシートの後ろにお椀のように凹みがついたトノーボードがあって、雨水がそこに貯まる仕様」なのだそうです。雨水が貯まるからバケツとスポンジで水を吸ってやるものだと説明をいただきましたが、雨の降り込まないガレージに保管して雨が降るのが分かっている日には絶対乗らないようにしようと心に決めましたが、人生って思い通りにはいかないからトランクにバケツとスポンジもいれておこうと思います。

高回転型!?

もっとも違いを感じたのは、オープンカーなことだけかと言うと、もう一点あります。

今回のカブリオレはATに入れているミッションオイルが指定と違うものらしく、回転を上げてもなかなかシフトアップしないのです。逆に峠道でいい感じに高回転をキープしてくれるのですが、高速道路主体で燃費命の私の走り方では2速からトップの3速に上がらないのは特にストレスを感じます。なんかいきがって頑張っちゃってるように見られてたらどうしようと小心者が焦ってる感じになります。

この変速タイミングの遅れについては、メンテナンスをお願いした専門店のご主人から「ミッションオイルがデキシロンオイルのようでこれだと変速タイミングが遅い」と聞いていたから「これは何かおかしいのではないか」と思わずに済みました。もしそうアドバイスを頂いて無かったらすぐに故障か?と一人で焦っていたことでしょう。

以前のコンビクーペだと1速から2速も、2速からトップの3速も2300〜2600回転で違和感なくシフトアップしていたところ、今回のカブリオレは2700〜3400回転という低圧ターボのATにしてはずいぶんと引っ張っていてもなかなかシフトアップしない。

1速から2速は2700回転ほどで上がってくれるのですが、2速からトップの3速の時が変速しずらく、時速50キロから90キロぐらいまでは2速のままいつまでも高回転でいい音を鳴らして走ってしまう。信号待ちで隣りに並んだ軽自動車(高齢者が運転しているターボもついてない)と信号が変わって加速していくと、まるで勝負を挑んでいるみたいに異様に高回転まで回して頑張ってる変なおじさんみたいになっちゃって恥ずかしかったです。

もちろん本気を出すと、信号ダッシュでは2000ccのターボ車(低圧ターボとはいえ)低速トルクを効かせてくれるため、そこそこ頑張って加速するプリウスタクシーといい勝負をするくらい早くも走れます。燃費はたしかリッター10キロぐらいでしたでしょうか。カブリオレだからと言ってガソリンタンク容量が小さいことはなく68リットル入るそうです。(まだ未確認、そのうち試してみますが、ガソリンタンクが劣化していると満タンでガソリンが滲み出してガソリン臭がするそうなので、人間も車も腹8分目ぐらいがちょうど良いのではないかと思ったりします)

気持ちの変化

このカブリオレをオークションで落札当初8月頭、手元に来た時に、かなり手強そうに感じました。実際少々引き気味でした。

そんな自分の気持ちが、夏から冬を感じさせる気温の低下と逆の方向に反比例するように、乗りたい気分がだんだんた高まってたタイミングで、メンテナンスが終了しての納車。

専門店でキーを渡された日はとても良い秋晴れで、私の気持ちも穏やかに晴々とした気分でした。

始動時には、エンジンオイル、ミッションオイル、クーラントのサブタンク容量を必ずチェックし、始動してもダッシュボードの警告が全て消えてエアポンプのタンクにエアがたまるまでは始動しない。もちろんエンジンが温まるまではエンジンに負荷をかけるような走りはしない。

オイルは指定の半化学合成と半鉱物油の10wー40を使うと言われました。ミッションオイルは一番大事で探さないとなかなか見つからないFグレードのオイルを使うようにするが、一気に入れ替え無い方がいいので基本専門店で面倒を見てもらうべきようです。

この点、古いバイクで20wー50とかシングルグレード50を入れていた自分からすると15wー50とかどうだろうと思いますが、粘度が高すぎるとそれはそれでエンジンに負荷になってしまうから専門店のオススメに従うことにします。

幌を全開にしてみる

サーブ900カブリオレはオープンにするとフロントウインドウの上縁が、頭の上に回り込んではいないため、運転していても視界の中にフロントウィンドウ枠の上にある空が入ってきて見れます。今回カブリオレで一番楽しみにしていたのがこの古いタイプのオープンカーの感覚。

「イイねー!」と声をだしてしまいました。

運転していて自分は今オープンカーに乗っているのだという感覚です。
久しぶりにバイクや自転車、歩行者に近い目線で街を楽しめ楽しい気分になりました。

オープンにしているとエンジンの排気音も聞こえやすくなります。整備していただいたこともあり、エンジンのきめ細やかで滑らかな吹け上がりが楽しめました。サーブ900のエンジンはこんなに気持ち良いのだと感じられ気持ち良い!

あえて表現するならば、直列4気筒エンジンなのに、V6エンジンのシルキーさを感じさせるきめ細やかさ、排気音は「ブゥゥーーーッ」と低くうなるような、レシプロ飛行機の機内にいるようなエキゾーストノートが響いています。

サーブ900の基本設計はメインボディをそのまま流用した前身のサーブ99にあり、1960年代に発売されていた時のものだとどこかで読みました。99から900にしたのはアメリカでの販売のために前後を伸ばし衝突安全性を高めたのだそうです。

フロント、リア共に角張ってて、特にリアのタイヤハウスから先のオーバーハングがやたら長いのはそのためだったのですね。

今回のカブリオレも前のコンビクーペも、年式としては1992年や1993年ではありましたが、ボディの切った貼った叩いた感は60〜70年代の高度経済成長期のクルマにありがちな大らかさ。今となってはリサイクルしやすそうに見える安そうな真っ黒樹脂で味気なく切り立ったダッシュボードは70年台後半から80年台前半を思わせ、タイヤの細さ具合は間違いなく70年代、エンジンルームは70年代半ばから80年代風、シートも70年代かなという何とも昭和レトロ感溢れる不思議な作りをしています。

1960年代の設計の車の想定面で今の交通事情と大きく異なるのが「大渋滞」など無かった時代の設計ということ。ましてやスェーデンですから、今の東京の真夏の路面の熱と大渋滞はきっと想定外の厳しすぎる環境でしょう。

夏場に大渋滞にはまろうものならきっとすぐにオーバーヒートしてしまいます。基本的にエンジンをかけているときは走って風を当ててあげる必要があるのは、空冷の大排気量バイクと同じでしょう。渋滞にハマろうものならすぐにオイルがゆらゆらと蒸発して上がってくるのを感じ、なんとかエンジンに風を当て続けようとジタバタしたくなる感じ。

この個体差はいつまで続く?

前に乗っていたサーブ900S 3ドアコンビクーペとの大きな違いは、3ドアコンビクーペは渋滞した時に、2〜3分でオーバーヒートになりそうな気配がしていましたが、今回のカブリオレは2〜3分止まっていたくらいでは根を上げない粘り強さを感じました。

今回、エンジンオイル交換やエンジンヘッドガスケットの交換をしていただいたり、ラジエーターまわりも含めて手を入れていただいた直後だったからで、いつまでもこんなに良くはないかもしれません。

真夏ではない10月後半の気温というのも良かったのかもしれません。いずれにしても渋滞が一番怖いです。あ、雨も怖いです。

ほぼサイドシルが無いため、
シートからすぐ足を降ろせます

次に、直進安定性に関して言うと、3ドアコンビクーペが圧勝です。カブリオレは屋根を開ける構造も、ドアのサイドシルが無いと言って良いくらいの構造も、現代のクルマより遥かに弱い剛性になっていて、一般道を普通に走っていてもグニグニは言い過ぎとしても、路面に合わせてシャーシが歪むような感覚を受けます。

要するに3ドアコンビクーペの時とは違ってカブリオレはボディがメチャクチャ歪みまくっている感じがします。

バイクに乗らなくなって久しいですが雨やら道すがらの匂いに敏感になるのはオープンカーならではの醍醐味です。でも、養豚場や牛舎を感じる匂いには「うへーっ!やられた〜」でした。

まずは納車して2日で500キロほど走ったことでこのカブリオレの個性を感じることが出来ました。

カブリオレだけどコンビクーペとの違いでのネガは今のところは感じませんでしたが今回は晴れの日しかなかったから雨が降ったら違うのでしょうね。

2022.11.29気付いた誤字や文章を修正しました。

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