ロールプレイングゲームとしてのアイドルマスターシンデレラガールズ

 アイドルマスターシンデレラガールズとはどのようなコンテンツでしょうか? 多種多様なアイドルを育てる、好きなアイドルが唄う歌を聴いてエキサイトする、などいろいろな味わいかたのあるコンテンツですが、ここで考えてみたいのはユーザーがプロデューサーとしての役割を演じ体験するコンテンツなのではないか、ということです。ユーザーがプロデューサーのロールプレイをするわけです。
 どのようにプロデューサーを演じるかはユーザーによってそれぞれ異なり、どのようなロールプレイが優れているかという議論に意味はないと思いますが、いろんな役割を演じる場として、シンデレラガールズは強固なコンテンツです。
 以下、思いついたいくつかの役割についてちょっと考えてみます。

・恋愛の相手としての役割

 アイドルマスターシンデレラガールズにはたくさんの女性キャラクターが登場します。女の子が大量に出てくるコンテンツは現代において無数にありますが、シンデレラガールズもその中のひとつに数えられるでしょう。そうした女の子たちに対して性的な好意を抱くことは別に不思議なことではありません。「このアイドルと恋人になりたい!」と思うユーザーも多くいるでしょう。恋人としてアイドルの活躍やアイドルとの触れ合いを観察していき、可憐な女の子と恋愛する者という役割をプロデューサーという役割に代入するわけです。
 しかしシンデレラガールズに登場するキャラクターたちは自身の内面とアイドルであるということが不可分に結びついています。だからこそそれぞれのキャラクターはアイドルとして駆動していくのです。そこを踏まえて「恋人であると同時にアイドルである」という関係をプロデューサーとしてどう演じていくか、というのは創意工夫が必要だと思います。イマジネーションが求められる役割なのではないでしょうか。

・保護者、賢者としての役割

 まだ未熟なキャラクター、または内気であったり素直にコミュニケーションがとれないキャラクターを強く育てるために振る舞う役割もあると思います。人生の先輩として相手を保護したり、力・アイテム・ヒントを与える「賢者」として迷える子を導く者としてのプロデューサーを演じる形です。「このアイドルにこうなってほしい!」と未来・将来の可能性を引き出していく役割で、アイドルが持っている力を伸ばし、すばらしいアイドルとしてなっていくよう育てていく親のようにプロデューサーを演じます。
 自分なりにアイドルの将来像についての考えを持つ役割なので未来のアイドルを想像するイマジネーションがこれまた必要になります。指導者として、アイドルの射程を未来に伸ばして、それに向かって進んでいく役割です。

・黒子としての役割

 上記の役割と似ているものですが、黒子としての役割はアイドルを監督するプロデューサーではなくアイドルに貢献する者としての役割です。主役はアイドル自身で、プロデューサーは脇役です。あるいはプロデューサーという形を取らず、アイドルの友達としての役割とも言えるかもしれません。アイドル自身の成功を望み、そのために下側からアイドルを支える、ボトムからのサポート役です。アイドルを導くというよりはアイドルを信頼する役割というイメージで、決定権はアイドルにあり、ユーザーとしてそれを尊重します。多様な性格のアイドルたちを信じ、幸せを願う感性が大切になってくるのではないでしょうか。

・まとめ なぜロールプレイするのか

 最後に、なぜアイドルマスターシンデレラガールズがロールプレイングゲームとしての側面を持っているかについて考えてみます。
 鍵になっているのは会話で、かつてのモバマスにもスターライトステージの中にもたくさんの会話劇(コミュ)が展開されています。プロデューサーとアイドルの会話もありますし、アイドルたちの間での会話シーンも大量にあります。ユーザーはその会話を読み取って、共有することができます。会話というのは他人がなにを考えているのかを知るやり取りです。そこからアイドルがなにを求めているか、自分だったらそれに対してどうアプローチするか、ということをユーザー自身が考えます。そしてコンテンツ全体を見ればその中にプロデューサーというポジションがあって、ユーザーはそこに自分を当てはめるわけです。それによって自分の役割を見出し、そしてその役割を演じるロールプレイが起動します。
 これからもシンデレラガールズの中で交わされる会話は増えていくと思いますし、会話の新しい解釈を通していままでにない役割が誕生するかもしれません。加えて己がロールプレイをすることでユーザー側が新たな自分に気づくこともあるでしょう。今後のシンデレラガールズがどのような役割を我々に示唆していくのか、楽しみにしています。

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