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ひとびと

タクシーのりばにて

駅前でタクシーを待っていたら、先に待っていた2人組の
女性が、やってきたタクシーに乗り込もうとしている。
50代くらいの女性と、もう1人は6~70代くらいだろうか、
いわゆる手押し車のようなものを押していて足が少し
弱っておられるようだ。

手押し車の女性が先に乗り込んで、もう1人の女性(娘さんか
つきそいの方か)が、その手押し車をあちこちぐいぐい
押したり引いたりしてみるが、どうやらたたむことが
できない模様。そのままでは、かさばって座席には
持ち込めないもののよう。

運転手さんがトランクを開けてくれて、それをあずかり
積み込もうとするも、ちょっとの幅でトランクが閉まらなく
苦戦している。

運転手さん「これはー、たためないんでしょうか?」
50代くらいの女性「たためないのよ~~」すでに後部座席に
乗り込んで、落ち着いてしまわれたご様子。
運転手さんは、何度かあちこち押してみて、どうやら望みの
ツマミをみつけたらしい。手押し車はスレンダーになって
トランクに消えた。

トランクの蓋をバイーンとしめると、並んでいる私と
目が合った。
運転手さんの目が「これ、たためました」といっている。
「タシカニ、タタメマシタネ」私も目だけでメッセージを
返して、走り去っていくタクシーを見送った。

池袋のDivaたち

池袋の駅前にて、手の込んだ編み込みの髪で、つやつやに
光る黒い肌の女性が3人でスマホを覗き込んでいる。
大人の女性にみえないこともないが、
きっと高校生くらいなのだろう。堂々たるDivaみたいな3人。
休暇を利用して日本旅?などと思いつつ、信号待ちをいいことに
彼女たちの会話をさりげなく聞いてみる。

Diva1 「こっちがわはウェストだから、ポキモンセナーに
行くにはイーストに行かないとだめらしいよ〜」
(※発音がはやすぎて一瞬混乱するが、ポキモンセナー
→ポケモンセンターであると理解)
Diva2 「そうなの~?反対側じゃん。こっから電車?」
Diva 1「地下鉄で1個ぽい」
Diva 2「ほほーん」
Diva 1 「歩くと~20分くらいみたい」
(私、心の声:すぐですよ、近いです、サンシャイン)
Diva 3 「ありえな~い、20分も歩くなんて~。電車でしょ~」
Diva 1& 2 「じゃあ電車にしよ~」
(私、心の声:歩けますのに・・・)

ポキモンセナーで、何買ったかな。想像するだけでかわいい。

ワンタンと500円

私も私の友人たちも、まったくグルメではないが、
おいしい+大事につくられたご飯が好き、という
共通点をもっている。
そんな友人のうちの1人と、中華料理のお店に行った。

すぐに予約でいっぱいになってしまうお店で、
やはり私たちが行こうとした日も日程が迫っていたため
予約しようと試みるもすでに満席で
「直接来店いただいて、万が一空きが出たらという感じで
待つことは可能」という言葉に一縷の望みをかけて行った。

19:00少し前には到着したが、19:00からスタートのお客さんが
多いので……とのこと。しかし「無理だったらあきらめます!
1時間くらい待ちます」と外で待たせていただくことに。
あれやこれやと最近の出来事について話し合っていると、
お店の方が「どうぞ!」と呼びにきてくださった。
え?時計を確認すると19:30になろうかというところ。

「えぇぇぇ!もういいんですか?」2人して予想外のよろこびに
挙動不審になる。「さっき2人組が何回か続けてでてきてたから
ひょっとしたら、て思ってた」こういう時だけめざとい友よ。
冷静に私に耳打ちをしてくる。

さらに、通してくださった席は、4人がけの広い席で
「えぇぇぇ!こんな立派な席でいいんですか?」と再び
挙動不審になる我々。

お店の方は、席の前でちょっと動きをとめると、にこりと笑って
「こういうのは、巡り合わせですので。どうぞ、こちらのお席で」

あれやこれやと注文して、おいしさをかみしめていると、先に食事を
済ませた隣の2人組の女性のお1人が「500円がない!」と慌てている。
お会計の準備を席でしてからレジに行こうとしたところ、500円玉を
落としてしまわれたようだ。「500円はなかなか大きいですよね」と
席の周りや周囲の席の方を見てみるが、見つからない硬貨。
我が友は「たいへん!」とそれまで食べていたワンタンを放り出し、
バーーーンと立ち上がって、半ば這いつくばり気味に床を探す。
瞬発力がすごい。こういうのが彼女のいいところだよなーなどと
別のことを考え始める私。

結局、コートやカバンを入れる足元のカゴの奥底に落ちて
まぎれていたらしく、「あったー!」と嬉しそうに帰って行かれた。
見つけたかたも、ご一緒の方も、お店の方もそして我々も笑顔。

もちろん頼んだご飯はやはりどれもおいしくて、
大事につくられている味がしたのはいうまでもない。

下校

制服を着た小学生男子が3人、水筒のゴムのパッキンのようなものを
蹴り飛ばして、一回の蹴りでどれだけ飛ばせるかを競いつつ、
順番につないで駅の方に向かっていた。少しふっくらした男子が蹴ると
「ほら◯◯は、あれで一蹴りだろ?でももうちょっと上手く蹴れば
もっと遠くまでいけるんだよ」などと後ろで見守っている2人が
ヒソヒソ講評を加えたりしている。

いいぞいいぞ、その無意味にも見えるものに注ぐ情熱よ。
存分に駅までの時間を堪能するのだ、と思いながら
ちょっと歩くスピードを落として横を歩き、少しの間見守っていた。

ふっくら君がもう一度蹴ると、その黒いゴムは反対側から向かってきた
5人組の大人の真ん中にころころと転がっていってしまった。
年の頃と、彼らが向かっているであろう方向から、その小学生達の
学校と同じ名前を冠した学校の大学生らしかった。

5人の真ん中にいたやや小柄な女性の足元に転がっていったものだから、
その女性が「わぁぁぁ!びっくりした!ゴキブリかと思った!!」
と大きな声で叫んだ。

ふっくら君、声の主の方は一切見ないで、黒いゴムを見失わないように
小走りになる。ようやく見つけだして足でそれを大人の間から
救い出す。そして言った。
「ゴキブリじゃねぇぇぇぇぇぇーーーーーー!」
力強くもう一蹴り入れると、ランドセルをがたがた鳴らしながら
走り去っていった。

もしサポート頂けたら、ユニークな人々と出会うべくあちこち出歩きます。そうしてまたnoteでご紹介します。