見出し画像

読書感想をもうひとつ


最近読んだ本

大地(一)/パール・バック

新居 格 訳
中野好夫 補訳

以前からずーっと気になっていたけどなかなか手が付けられなかった。
難しそうだから。

これ、結構、中学生とか読んでたりするので驚きです。
そういう子って頭良いんだろうなーって思う。

19世紀〜20世紀の清王朝末期の中国の農村を舞台にした親子三代に渡る大河小説。
500ページのボリューム×4。
ね、読む気しないでしょ??(笑)
しかしね、コレ

スッゲエ面白い!!

それもそのはず。
だって、ピューリッツァー賞、ノーベル賞を取ってる。化け物本なのだ。

1巻目は、祖父に当たる王龍が阿蘭と結婚する所からスタート。
ガンダムAGEで言うところのフリット編です。
貧乏な水呑み百姓の王龍が元奴隷で働き物の阿蘭の内助の功でサクサクとサクセスしていくストーリィです。
摩天楼ではなく、舞台はあくまで農村なサクセスストーリーな訳です。
ホント、阿蘭さまさま。
私は女性の阿蘭に感情移入してしまうので、王龍の亭主関白っぷりに終始イライラします。
だってさ、たまたま紹介して貰った阿蘭が大当たりだったからお金持ちになれたのに、兎に角扱いが酷くてムカつく。
阿蘭が主人公なら、中国版宮尾登美子の『櫂』になってたかもね。
いや、1巻の後半はとにかく宮尾登美子でした。
中華版『櫂』。

阿蘭はとにかく我慢強い。元奴隷ですからね。
古今東西、女性は虐げられていますね。腹立たしい!

しかし、そんな王龍も根っからの農民魂で二宮尊徳みたいに勤勉だしなんだかんだ情に厚い漢なので、人望がある。
そして、学が無いのに聡明で(妻以外には)モラルが高い。
今で言う所の投資を無学でやってのけちゃうし、
令和にはとりあえずいない、頼りになる男。

トラブルメーカーの叔父が事あるごとに登場するのがスパイスが効いてて良いかと。
かなり性格悪くて嫌な奴ですが。

コレ、中国に住んでた欧米人が書いてたと言うから驚き。
海外から移住してきた欧米人の物書きの女性がいきなり日本で『おしん』とか書いたみたいな感じ?
貧困層とか田舎の描写がリアル。

登場人物が生きてるし、太陽の照ってる感じ、土の匂いがしてきそう。

なんて説明すれば良いのか、語彙不足でうまく言えませんが、

「めちゃくちゃ面白いので騙されたと思って読んで欲しい」

続編は息子、孫と続きますが、時代は清王朝末期ですからね、色々ありそうな予感。

ボリューム:★★★★★
文学:★★★★★
泥臭さ:★★★★★


大地(ニ)/パール・バック


新居 格 訳
中野好夫 補訳

1巻で主役だった王龍が死んで世代交代する所からスタート。
ガンダムAGEでいう所のアセム編です。
(実はAGEは未視聴なのは内緒だ!)
一番AGEの中ではビジュアルがカッコいいアセムではなく、ノーベル賞を取った文学小説では、スポットライトは馬鹿息子3人に。

三男の王三改め王虎を中心に進んでいきます。
サブタイトルは「息子たち」。

王龍が根っからの勤勉な農夫で、命よりも土地を大事にしていたのに息子達にはその血は一滴も継がれていない模様。
寧ろみんな土いじりが嫌い。
ウチの親父の実家も兼業農家でしたが、土弄りが大嫌いで、祖父母が亡くなってから真っ先に土地を売りました。

長男の王大は南の都の大学まで行ったくせに、親の財産で生活する道楽者。
趣味は美食と女遊び。
カカア天下で家族はギクシャク。
まあ、クズです。
まるで、彼等が今当たり前のように住んでる御殿の元々の主だった没落した黄家の大旦那そのものです。
王龍が残したクソBBA妾が遊んでるし、家の中は最悪。
あーら、王家は二代目で没落かしら。

それでも、次男は商売人として身を立ててるので、がめついけど倹約家だし、家庭内は仲良しで奥さんも有能。
兄弟内では唯一まともで一番賢い。
故に兄弟に恵まれなかったな〜とちょっと同情。

末っ子、王虎は一番問題児で、実はコイツがトラブルメーカー。
勝手に軍人になって家出したと思ったら、オトンの葬式で
「なぁ、兄ちゃん達、いいビジネスあるねん。父ちゃんから継いだ土地を売ってさ、そのお金を俺に寄越せよ。ついでに働き盛りの息子を1人ずつ寄越せ。これは投資だぜ?」
とマジでトチ狂った事をぬかす。
しかも、王兄弟
「おお、いいぜ!!乗った〜!子どもも連れてけよー!」
と何故か乗っちゃうのよね。
読者の頭の中は「?」マークでいっぱいです。

彼は、三兄弟の中では唯一男らしい性格なので、他の2人よりも猛々しく、読んでいて爽快です。
しかし、男らしく野心を燃やして兵団を作るのですが、マネーは実家持ちという‥なんじゃそりゃ。

そんな感じで、第2巻は馬鹿息子達によって王家が二代目にして傾く話‥?
なのかと思いきや、この問題児三男坊、王虎がなかなかサクセスしちゃうストーリー。
色々紆余曲折ありましたが、虎がノリに乗って2巻は終了。

1巻同様
やっぱり説明出来ないけどめちゃくちゃ面白いので騙されたと思って読んで欲しい。

馬鹿兄弟:★★★★★
サクセスストーリー:★★★★★
戦い:★★★★


大地(三)/パール・バック

新居 格 訳
中野好夫 補訳

「息子たち」の続きなので、王虎が中心のストーリーからスタートです。
ノリに乗ってる王虎は途中色々あったけど、結婚してめでたく男の子が生まれます。
自分の後継ぎが出来たので手塩にかけて立派な軍人にすべく育てますが、どうもその息子は軍人としては生きたくない、というか
「農場にあこがれるゥ!!」
なようで、段々と不安になる王虎。
そんな中、青年になった息子は家出をします。
そこで「息子たち」は終了。

最終章「分裂せる家」がスタート。
主人公は王虎の息子、淵に交代。
このバトンタッチの描写の勢いがすごく良いです。
ガンダムAGEでいう所のキオ編ですね。
(実は私はここまでガンダムAGEを例えに使ってますが、未視聴です。ガハハ‥そのうち見たい)

淵君は、まずは王龍の生家に居候しますが、そこで間借りしてた老夫婦にめちゃくちゃ迷惑がられますが、淵君は気にしない。
牧歌的な生活に大満足。
自由って素晴らしい〜ヤッホー!!
‥とか思ってたら、母ちゃんが迎えにきて連れ戻される事に。

暫くしてまた家出します。
今度は腹違いの妹と第一夫人がいる、海の近くの大都会に行きます。
そこで夫人に可愛がって貰って楽しいシティライフ!
この第一夫人は梨花と並んで、この話の唯一の良心ですね。めちゃくちゃ良い人。
実は王大一家もいたりして、従兄弟もいっぱいいて楽しい。
妹も夫人も従兄弟も性格が良いので楽しい。
しかし、従兄弟の末っ子、猛が名前の通りなんか血の気が多い‥と思えば、どうやら革命運動やってるっぽい。
「お前も入れよ」
と誘われる。でも入らない。面倒だもん。

しかし、またもやオトンが連れ戻そうと色々策を巡らしてきて妨害されたので、オトンの敵である革命運動にとりあえず参加する事に。
そして、色々あって淵は警察に捕えられて死刑を待つ身に。

途中はなかなか退屈でしたが、後半は勢いがあって面白かったです。
他の2編と違って、淵は近代的な精神の持ち主なので、なんていうか、ちょっと遅い思春期の葛藤がフレッシュに描かれています。
龍と虎は土煙っぽいですが、淵は都会的な感じ。
だけど、彼は土弄りが好きみたいなので、結局どう収まるのか、最終巻へ続く‥という感じですね。
王虎があれだけ憎んだ大地に愛着を持つ淵。
DNAが巡ってる感じ。

タイトルが「分裂せる家」なので、やっぱり王龍の土地と子孫は黄家と同じようにバラバラになるんでしょうか‥。

王大ヘタレ:★★★★★
泥臭さ:★
都会ライフ:★★★★


人形の家/ルーマー・ゴッデン

瀬田貞ニ(訳)

コチラは岩波少年文庫で読んだので、対象年齢は小学生の中〜高学年くらいらしいですが、

いやはや、哲学的過ぎて恐れ入った‥!

登場人物はオランダ人形のトチーを主人公に、人形のことりさん、プランタガネットさん、りんごちゃん、犬のかがり‥とすごい個性的で、コチラはみんな持ち主のエミリーとシャーロット姉妹の人形遊び設定なので、まあ、色々めちゃくちゃなんですが、古今東西人形遊びは大体一緒な感じなので面白い。
女性なら分かるはず。
あと、私は姉がいるから分かるのですが、何故か小さい頃って姉に逆らえないものなんですよね‥。
そんなことも思い出した。

人形は某ディズニー映画のウッディやバズみたいに自由に動けはしないけど、各々感情となかなか骨太なバックボーンがある。

味があって可愛らしい挿絵と人形達の生活がメルヘンチックで
舞台も家の中(と展示場とおばさん家)と狭く、全体的に可愛い感じなのですが、後半50ページくらいですごい怒涛の展開になります。

最後のトチーの諦観っぷりはすごい。
そして悲しくも美しい。

冒頭〜100ページくらいまでは
メルヘンで可愛いし、トイ・ストーリー(あ、言っちゃった)みたいに子どもに「おもちゃを大切にしようね」的な意味合いで読ませたいかも〜。
とか思ってたら、後半で

「ちょっっと待って!!コレやばい!!コレは実は人形を擬人化した人間讃歌だと‥ッ!!」

うん。一言でいうなら、人間讃歌だ。
なんか分かりかけてきた‥ッ!

とにっっかく深い話なので、子どもが読むよりも、ある程度社会の理不尽とか、自分ではどうにもならない禍事とか経験した人はすごく刺さるんじゃないかな。

・物を大切にしよう
・家族の絆
・どうにもならない理不尽
・善悪のリミッターがないサイコパス
・諦観
・隣人愛‥etc

とても私の乏しい語彙力と文章力では表現出来ないのですが、
短い話の中にこれでもか!って程詰まってる名作です。

あと、この訳すごく好き。
かがりの鳴き声を「ちくん」と訳してるのも、犬ではなく、人形という感じがするし、
全体的に語り口調が雰囲気にマッチしててテンポが良くて好き。

メルヘンチック:★★★★
哲学:★★★★★
女子あるある:★★★★


嘘をもうひとつだけ/東野圭吾

一話完結式の話が5つ収録された短編集。
全く無知で知らなかったのですが、コチラ「新参者」「麒麟の翼」のシリーズだったのですね。
「加賀恭一郎シリーズ」というのですが、映像化作品はもう有名過ぎて説明不用だと思いますが、阿部寛が演じる加賀恭一郎があの平たく無い、濃ゆ〜いお顔でネチネチと犯人を追い詰める描写が印象的。
今作も5編みんなそんな感じで、全部に阿部寛‥加賀が出てきます。
というわけで、もう加賀の脳内再生は阿部寛しか勝たんな訳です。濃いですからね。

今作は加賀シリーズの6作目らしいですが、私のように予備知識無しでも楽しめると思います。
推理モノとしてもやっぱり面白いです。

あんまり関係の無い話。
ちょっと前に話題になりましたが阿部寛のホームページは容量が軽くアクセスがめちゃくちゃ早いです。

ミステリー:★★★
意外性:★★★★
阿部寛:★★★★★


今年の中秋の名月は手作りで月餅を作りたい。
ではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?