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コラム:Gleison Bremer獲得に拘る理由

 10年以上もクラブを支えたジョルジョ・キエッリーニと、突如として移籍志願したマタイス・デリフトの退団によりCBの後釜探しを余儀なくされたユヴェントス。この2人の後継者はトリノFC所属しているグレイソン・ブレーメル以外に有り得ないと思っています。

 退団がキエッリーニだけならボローニャのアルトゥール・テアテで事足りたでしょうが、デリフトも抜けるならば、このブラジル人CBの獲得は必須目標ということになります。他にも優秀なCBは数多くいる中、何故私がブレーメル獲得に拘るのか、ユヴェントスがブレーメルを獲得しなければならないのか話していきましょう。

セリエA最高のCBという肩書き

 これは理由というより傾向の話ですが、ユヴェントスは基本的にディフェンスラインはイタリアでプレーしていた経験のある選手を獲得します。

 中盤より前の選手は、若き日のポグバやコマンをフリーで獲得。テベスやクリスティアーノ・ロナウドもユヴェントスがイタリア挑戦初のクラブです。BBCという近年最強の守備ユニットは全員がイタリア人ですし、ベナティアもローマを経由してバイエルンから獲得しました。

 マタイス・デリフトは例外中の例外です。彼は19歳でアヤックスのキャプテンを務め、ワールドクラス候補生の看板を引っ提げての加入です。デリフト級でもない限り、基本的にCBを国外から取ってくることは極めて稀有な出来事なのです。パウ・トーレスやガブリエル・マガリャンイスがそれに値するでしょうか?実力は二の次に考えてもこの2人にデリフト級のマーケティング力はありません。その訳も後に記載します。ユヴェントスがブレーメルの確保に失敗、もしくはブレーメルの相方を探す時に初めて彼らの名前が挙がります。

 では何故、守備陣の獲得はイタリアでのプレー経験が優先されるのか。環境の適応の早さもそうですが、言語の問題、そしてイタリアとその他の国では守備の仕方がまるで違うからです。もちろんイタリアのクラブの中でも細かく噛み砕けばクラブ毎に守備の形は変わりますが、他国から来るよりも明らかに順応しやすいです。デリフトでさえ1年目はゾーンディフェンス流の守備の適応に苦労しました。

 パウ・トーレスやマガリャンイスと違い、ブレーメルは既にイタリアで4年間プレーしています。そしてこの2年はセリエAでトップクラス、今シーズンは最強のCBだと誰もが認めるレベルにまで成長しました。ユーヴェV9の立役者であるキエッリーニと、CB版キリアン・エンバペであるマタイス・デリフトを同時に失った今、2人の後継者は『セリエA最高のCB』という肩書きを持つブレーメル以外は考えられません。


ブレーメル争奪戦に至った流れ

 トッテナムもブレーメルの獲得を画策していたみたいですが、ブレーメル本人がイタリア国外でのプレーを望まなかったため、本当につい最近までブレーメルの移籍先はインテルが濃厚でした。私も6月の終わりまではシュクリニアルをPSGへ売却した資金をブレーメルにそのまま注ぎ込むのだろうと思っていました。どうやらシュクリニアルとの去就と、ブレーメル獲得の如何は関係ないと言っている方もいますが、ユヴェントス移籍が濃厚となっている以上、その根拠を万人が納得できるように説明するのは困難ではないでしょうか…。

 PSGがどういう意図かはわかりません。財政的にインテルが22-23シーズンの開幕にシュクリニアルとブレーメルを同時に抱えることは不可能だと思っています。ですので、インテルがブレーメルを獲得する場合は、シュクリニアルを売却して以降に限定されるはずです。しかし、一向にPSGがシュクリニアルを獲得する動きが見られないのです。インテルがブレーメル獲得のためにトリノに提示できる金額は€30Mが限界でした。トリノの€40M以上という要求と大きくかけ離れています。

 ちょうどその頃、ユヴェントスはデリフトの売却先をチェルシーかバイエルンのどちらかを決めている最中でした。最初にチェルシーが€60M+プリシッチorヴェルナーというオファーを出しましたが、ユーヴェは納得せず。バイエルンが横槍を入れた事でチェルシーは撤退。ナポリのカリドゥ・クリバリを€40Mで獲得しました。

 バイエルンに対してもユーヴェは一貫して現金オンリーでの€100Mを要求。€50〜60M+パヴァールやグナブリーを混ぜたオファーもありましたが、最終的には€80M+ボーナスで合意。あれだけ€100Mに拘っていたユーヴェが€80Mで妥協したのは意外でしたが、その後の行動を見れば納得も行きます。そう。デリフト売却で得た€80Mを元手にインテル行きが濃厚と言われたブレーメル獲得レースに参加したのです。


インテルとの差をアピール&スクデット阻止を両立できる唯一の手段

 当初はオークションに持ち込んで、インテルが払うブレーメルの移籍金を跳ね上げる意味合いが強いと思われていましたが、ユーヴェは本気でブレーメルを狙っています。もちろんユーヴェの獲得レース参戦によってブレーメルの移籍金が大幅に上がるのは間違いないです。

 ユーヴェがトリノに出した最初のオファー€35M+ボーナス€5Mです。トリノを完全に満足させるオファーではないですが、インテルより条件がいいのも事実です。これに対してインテルは€30M+カザディという選手のローン移籍が条件のオファーを出しました。

 会長であるカイロ氏の不祥事により、€70Mの出費を余儀なくされたトリノは洒落にならないほどの資金不足に陥っています。ベロッティ退団、マンドラゴラ、プラートの買取り交渉が難航(マンドラゴラは決裂)。冗談抜きでセリエA20チームの中で最悪の夏を送っています。

 もともとブレーメルを売却しないことには選手獲得すらままならない状態なので、出せて€30Mが限界のインテルより最初のオファーで35+5を出せるユーヴェに傾くのも必然でしょう。現時点ではユーヴェが€47Mのオファーをトリノに出したという情報も聞きました。

 ブレーメル自身はクラブの面子も考えてか、移籍先の第一希望はインテルでした(トリノとユヴェントスがローカルライバルなため)。とは言えトリノに移籍金を残すために契約延長したので、ローカルライバルと言えど、より多くのお金をトリノに残すためにユーヴェ行きを決断する可能性は高いと思います。ユーヴェに対する個人的なヘイトがあるなら話は別ですが。

 さて、ここからが本題ですがユヴェントスがインテルとのブレーメル争奪戦を制したという事実は、この2チームの経済的格差をアピールするには充分すぎます。ユーヴェがピッチ内の弱体化を防げるのと同時に、インテルの補強戦略の変更を余儀なくされるという面でもブレーメル獲得は非常に大きな意味を持つと思います。

 そしてブレーメル獲得が、ユーヴェがインテルのスクデットを阻止しうるほぼ唯一の手段です。あまり机上論で物事を語るのは好きではありませんが、インテルがブレーメルを獲得していた場合、22-23シーズンのスクデットは9割9分インテルのものになっていたでしょう。それで仮にシュクリニアルを売却していたとしていても、です。

 今シーズンのイタリアの覇権争いに大きく影響を与えるジョカトーレはグレイソン・ブレーメルただひとりだと思っています。パウ・トーレスやガブリエル・マガリャンイスにここまで記載した影響力はありません。以上が私がブレーメル獲得にここまで強い拘りを持っている理由です。ユーヴェの思惑とどこまで一致しているかはわかりませんが、大きくは違わない事を願うばかりです。



 (了)






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