アホウノトンマ

素人

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詩10

お前の身体は風でできている 吹き荒れる暴風 巻き付く温い風 身を刺す寒風 頬を撫でる優しい風でできている お前の身体は雨でできている 叩きつける強い雨 湿度を含む温かい雨 身を凍らせる冷たい雨 涙を隠す優しい雨でできている お前は自然に含まれる中の一つでありながら 自然の中でお前は独つだけだ 太陽 大気 草木のそよぎ 山の清流  全てお前と繋がりお前を形作っていながら お前はお前にしかなれないものだ 蒼い空よ 降る雨よ 吹く風よ 流れる雲よ お前は個で有り群で有る

    • 詩9

      夜暗に光線を引くテールランプの灯り 夜風に乗って耳朶を打つエンジン音 あの灯りは命の灯り あの音は命の鼓動 胸を締め付けるような苦しさ  指先からジンジンするような寂しさ 立っている その脚で 立っている 生きている 誰もが 生きている 涙がこぼれるけれど 足が竦むけれど それでも一番に大事だと思うことができたなら それでも隣に居たいと叫ぶことができたなら それは何よりも素敵なことなのだろう 頬をかすめる風 誰かの体温  あの灯りを追いかけた束の間の日

      • 詩8

        ボール・ボーイと呼ばれる少年がいました よく飛び跳ねころころと転がるようにアチラコチラに行ってしまうからです その日も思い出したかのように家を飛び出し左側を道なりに行くと見えてくるスーパー「フレッシュマーケット」の脇道を通り、庭で放し飼いされている大型犬がいる家の前を早足で右折し、そこを道なりに5分ほど行くと木が茂って薄暗い道が出来ています そこを抜けると小高い丘がありました そこは少年のお気に入りの場所でした 傷ついた心を慰める事のできる秘密の場所でした しかし今日

        • 詩7

          この空の果てを見ることができたらしあわせと呼べるか 誰かと深く深く愛し合えたらしあわせと呼べるか 幸福論を片手に持っていたらしあわせと呼べるか 飛べないあの人はしあわせと呼ぶでしょう 孤独なあの人はしあわせと呼ぶでしょう 目が見えないあの人はしあわせと呼ぶでしょう であるならば 果てというものを知られずに済む空はしあわせでしょうか 誰にも譲渡されずに済む愛はしあわせでしょうか 読まれずに済む本はしあわせでしょうか 私が書くこの詩はしあわせでしょうか?

          詩6

          堕落と腐敗に支配され心は乱れ 身体は人のまま中身が獣となった化物が跳梁跋扈するようになった 忠義を忘れ優しさを忘れ哀しみから涙を流すことも忘れてしまった 寄り添い背を擦る温かさを忘れてしまった 己の利益と優越の感情ばかりが眼に映っている 人の時代は既に終わっていた 獣の時代 こと近代史は獣による悪徳と殺戮の競い合い 言葉も愛も純白さも崩れ去り 跡には瓦礫と煤ばかり 地獄は此処にあった  地の底の地獄など生温い この世は地獄よりも地獄らしい 人は地獄の鬼より鬼らしい

          詩5

          1 朝日が唸っていた 暁鶏の戦慄き  その鶏は朝日の大きさを初めて知ったろう  朝日の真ん丸さを初めて知ったろう  朝日の哀しみを初めて知ったろう 2 中天を報す鐘が鳴っていた 獣の蠢き 青緑の丘を駆け上がる少年が居た 丘の上の木の根元に座り込む少女が居た 陽光の楽団が葉を叩き重奏を奏でる 少女はそっと泣き涙は譚詩曲になった 3 暮れる日をずっと見ていた 烏の啼き声 地に影を落とす真っ赤な飛行機が 地球の輪郭に沿って飛んでいる 吾々はその孤独に気がつくだろうか 嗚呼 飛行

          詩4

          春の風のような喜びも 夏の夜のような淋しさも 秋の暮のような哀しさも 冬の朝のような優しさも 全て少しだけもらっていくよ それで半分を埋めたら 静かに青い海を見ている 喜びも淋しさも哀しさも優しさも溶け合って漂うあの青い海をずっと見ている 海の遠鳴り 汽笛の響く声 貝殻が弾ける音 地上と海は別れてなどいなかった 吾々は海の青さをはじめから知っていた!

          詩3

          吾々は常に汽車に乗っている 歓喜している時 悲観している時 寂しくてやるせない時もそれは汽車の中で起きている 汽車に乗った時外界の景色ばかりに気に取られている 歩む親子 数多の商店 医院の看板 遠くにきらめく波間が網膜を掠めていく 人間の生活というのは汽車に乗った客のようなものなのだ 外ばかりに気を取られ内は気にしない 他者の言葉や想の内に滲み出る悲しさに目をやろうとはせずに外面ばかりを論い殴ったり蹴りを入れたりしているばかりじゃないか 他者への傷つけ方ばかり覚えて内省な

          詩2

          風に吹かれる砂塵の様 大海に揺蕩う白波の様 掴んだものは崩れて消えて 掬ったものは解けて溶けて その有様はぐるぐると回り続ける水車のようだ 揺ら揺ら揺ら揺ら揺ら 野山に咲く花々の囁きも群青に瞬く星々の煌きもひとえに夢幻なのだと想えば 快い侘しさ 障子の隙間から射す二月の陽光

          頭蓋の上を覆う青に何を見る 頭蓋の上を漂う白に何を見る 土から生えたコンクリートや鉄でできた四角い植物に囲まれながら 想像の中の自然という虚像に思いを馳せる 純粋や清廉、高潔さは何処にある 此処になければ地獄にあるか 地の底の極楽 地の上の地獄 空の音ばかりが鳴り響く

          紅梅香る 三月の月

          紅梅香る 三月の月

          二鶴

          鶴は羽を折ってしまいたい程にもう飛びたくないと思っているのか 風に乗ることに疲れてしまったのか 鶴である事そのものに絶望したか 折り鶴は羽があるのに飛べないことを嘆いているのか 風に吹かれる感触を羨んでいるのか 本物の鶴では無いことに失望したか 鶴は己を鶴でいいと思っているのかそれとも別の何かがいいと思っているのか 折り鶴は己を折り鶴でいいと思っているのかそれとも別の何かがいいと思っているのか 鶴の地に堕ちる希望 折り鶴の浮かび上がる希望 鶴の羽ばたく絶望 折り鶴の動

          意味の無いショート

          同居人から"しかいかかぐるぐrしてふ"という文と画像が送られてきた。画像を開くと450mlの缶が散らばった部屋で焦点のあってない目をしながらピースサインをするバカの姿があった。 「ただま〜、高阪、また潰れるギリまで飲んでたんか?ようやるねぇ毎度懲りねえなぁお前も。」 「小塚…うっせえ…デカい声だすんじゃね」ヴォェッッ 「だっはっはっはっ最高におもろすぎる」 そう言って小塚は手を叩きながら高阪を見て爆笑している。もう便所で吐いた後らしく、吐瀉物特有の匂いがトイレの方面から漂

          意味の無いショート

          腐肉

          腐っていく。目に映る人の波が、テーブルに置かれたままの半分だけ食べて残した食べ物が、その横に撒かれたゲロが、植えてた植物が、足元にある死体が。 腐っている。思考が、精神が。人生が。 おーおー、やっちゃったねぇ。これで3度目?4度目? 遅いですよタカナベさん。 早く着いた方なんだけど。 まあとりあえず車は来てるから埋めに行こっか。 ふー、こんなくらい掘れば埋まるでしょ。 お疲れ様です。 ほんとだよ、半分以上私が掘ってたし。 穴掘るのなんて幼稚園児の時の芋堀り以来だよ。 幼稚