仏教余話

その218
昨今、中国撰述の基などの著作は顧られることも、少ないような印象を受ける。私などは、手にしたことも、ほとんどなく、まともに読んだ記憶もない。因習深い、旧式の学問という印象が強く、毛嫌いしていたのである。しかし、ローゼンベルグの時代、ヨーロッパの学者には、宝の山に見えたのであろう。この点について、西村氏は、こう伝えている。
 ローゼンベルクもやはり中国の基と普光の注釈に注目した。この点はローゼンベルグ自身、
  玄奘は多くの門弟を持っていたが、その中で窺基(K’uei-chi)―慈恩大師の名で知られているーと普光(Fuku-ang)が最も卓越している。窺基は世親の大乗仏教及び論理学に於て玄奘の後継者であり、又、師匠は普光に小乗の伝統を手渡していた。玄奘とその親近せる門弟達の共同労作の結果として翻訳書と註釈書の長い系列が生じた。これ等の浩瀚な解明書のうちに、玄奘が印度から持ってきた伝統的知識がすべて採用されている。…
と、基と普光の著作には玄奘が印度から直接伝えられた知識があるとみていた。ちなみに〔『唯識20論』等の原典を出版した、ヨーロッパの世界的学者〕シルヴァン・レヴィが来日中、注目したのも基と普光の著作であった。(西村実測「荻原・渡辺とローゼンベルク(続)」『佐藤成順博士古希記念論文集 東洋の歴史と文化』2004,pp.250-251,〔 〕内私の補足)

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