新チベット仏教史―自己流ー

その4
素直に読むと、奢摩多=止を否定しているようにさえ見えます。しかも、その証拠として引用しているのが、サムイェの宗論でインド代表となったカマラシーラの著作です。サムイェの宗論では、無念無想の瞑想を悟りとする摩訶衍(まかえん)を退けたことは覚えていると思います。つまり、ツォンカパとは、カマラシーラの教えを受け継ぎ、智慧を極めて大事にした人物なのです。彼は、理屈の学問、因明を重んじました。前にも触れた因明の大物、ダルマキールティを尊敬し、因明は悟りを得ることに直結すると述べています。ツォンカパの前の時代に生きた、プトン(Bu ston,1290-1364)は、有名な『プトン仏教史』を著した大学者ですが、因明の価値は低く評価していました。中国や日本での評価は、以前触れたように、極めて低いのが一般的です。それに反し、ツォンカパやその弟子達は、膨大(ぼうだい)な因明書を残しています。中核を占めるのは、ダルマキールティの主著『量(りょう)評釈(ひょうしゃく)』Pramanavarttikaに対する注釈書です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?