Tips of Buddhism

No.79
Mahayanists reply that Hinayana is one aspect of Buddhism and Mahayana is another,and feel that their own religion presents certain sides of the Buddhist teaching not to be found in the Hinayana.Without always adhering to the letter of the earier teaching,much of which was monk-made in Hinayana times rather than Buddha-made,they claime that they are presenting and maintaining the true spirit of the Buddha.( B.L.Suzuki:Mahayana Buddhism,1990,rep.of 1938p.xii,ll.20-26)

(訳)
大乗仏教徒達は、こう答える。小乗仏教は仏教の一面である。大乗仏教は別な一面である。そして、以下のように感ずる。彼ら自身の宗教は、小乗仏教には見られないブッダの教えのある側面を示しているのである、と。初期の教えの文言に、常に拘ることなしに、彼等はブッダの真意を提示し、主張しているのだと、言うのである。〔初期の教えは〕ブッダがなしたのでなく、むしろ、多くは小乗仏教の時代に僧が作ったのだ。
(解説)
鈴木大拙の妻、鈴木ベアトリス(Beatris Erskin Suzuki、1878-1939)の著書から引用した。大拙は禅を海外に広めた功労者として、その名を知る人は多いだろう。妻はアメリカ人女性で、日本名を鈴木琵琶子と言う。1906年にアメリカで大拙の講演を聞き、1911年に日本で結婚した。彼女は、元来、神智学教徒であった。その母親も同様で神智学を信奉していた。日本でも、鈴木ベアトリスは、神智学のロッジを開いたりして活動した。その際、夫の大拙も協力したと伝えられる。神智学は、最初、マダム・ブラバツキー(H.P.Blavatsky,1831-1891)やオルコット(H.S.Olcott,1832-1907)の2人が代表者として旗揚げ(はたあげ)した宗教団体である。一般には、オカルト的教団として認知されている。同教団は、アメリカからインドに渡り、現在も活動を続けている。オルコット等は、廃仏(はいぶつ)毀釈(きしゃく)の最中、仏教を救済する白人として、来日し、大歓迎をうけたこともある。
  さて、最近、物故した吉永進一氏の研究によれば、ビアトリスの蔵書を整理すると、雑誌、書籍類の中で圧倒的に多いものは、神智学とニューソート、ヨガ関係のものであり、(吉永進一「神智学ネットワークと仏教―鈴木ベアトリス蔵書から見えるものー」『宗教研究89別冊、2016年、p.271)
とある。また、同雑誌には、
 ビアトリスの神智学への関心が本格化するのは、一九二〇年に在日外国人中心の「東京国際ロッジ」に参加してからで、一九二四年には京都で「大乗ロッジ」を結成している。・・・
 当時、神智学協会はクリシュナムルティをメシアとする運動を展開していたが、ビアトリスもクリシュナムルティ信奉者の一人であった。(吉永進一「神智学ネットワークと仏教―鈴木ベアトリス蔵書から見えるものー」『宗教研究89別冊、2016年、p.271)
と記されている。吉永氏は、最後をこう締めている。
 ビアトリスがヨガなどの心身技法に引かれていてそれを通じて仏教に接近したという点は、彼女の仏教との関係を考える上で、ひいては大拙の英語の仏教論を考える上で、重要な視点を提供している。(吉永進一「神智学ネットワークと仏教―鈴木ベアトリス蔵書から見えるものー」『宗教研究89別冊、2016年、p.217)
ともあれ、世界の鈴木大拙にただならぬ影響を与えたのが、妻ベアトリスであることを記憶しておいてもよいだろう。


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