仏教豆知識(漢方と仏教)

その1
月刊誌『文芸春秋』の記事には、11号には、以下のようにはじまる、記事が載っていました。
 平安時代の宮廷医(きゅうていい)・丹波康頼(たんばやすより)が九八四年に朝廷に献上(けんじょう)した日本最古の医学全書『医(い)心方(しんほう)』がいま、世界の注目を集めている。イギリスのオックスフォード大学では最先端治療と『医心方』を融合(ゆうごう)させた新たな治療法を研究するプロジェクトが二〇一四年から始まったほか、ドイツ、中国でも研究が進み、フランスやアメリカの医師たちも関心を寄せている。きっかけとなったのは、二〇一二年のこと。古典医学研究家・槇(まき)佐知子(さちこ)氏(84)による『医心方』全訳精解(せいかい)三十巻三十三冊(筑摩書房)の刊行が完結したのだ。槇氏は八〇八年に勅命で成立した神社や豪族(ごうぞく)に伝わる処方集(しょほうしゅう)百巻を初訳した功績で、一九八六年に菊池(きくち)寛(かん)賞を受賞した人物でもある。国内では『医心方』のユネスコ「世界の記憶」(世界記憶遺産)への登録を目指す運動も始まっている。…現代に通じる処方やテーマも多く掲載されているという『医心方』。槇氏がその魅力を語った。(槇佐知子「天皇皇后も愛読される「医心方」のすごい処方箋」『文芸春秋』2017,11,p.340,ルビほぼ私)
これは記事の紹介文に当たるところです。槇氏自身の文章は、次のようなものです。
 『医心方』は、有史(ゆうし)以来九世紀までの中国の二百数十もの医書や本草書(ほんぞうしょ)(博物学)、養生(ようじょう)書、鍼灸(しんきゅう)・宗教・思想・史書・文学書などから撰集(せんじゅう)されたものです。あらゆる傷病(しょうびょう)の治療法や予防医学、救急医療、長生術(ちょうせいじゅつ)のほか、相愛法(そうあいほう)や胎教(たいきょう)、美容法や占いなど、人間の心身に関するあらゆる知識が結集されています。それは、当時の人々が命についてどのように考え、死の恐怖とどのように戦ってきたのかや、出土品の意味を知る手がかりともなる、たいへん貴重な資料でもあります。朝廷が半井(なからい)家に与えた『医心方』は、一九八四年に国宝に認定されましたが、その内容については長らくベールに包まれてきました。古漢文で記されていたことに加え、心ない人による濫用(らんよう)を防ぐためのからくりが文字に仕掛けてあったからです。(槇佐知子「天皇皇后も愛読される「医心方」のすごい処方箋」『文芸春秋』2017,11,p.340,ルビほぼ私)


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