仏教余話

その207
ローゼンベルグ自身こう日本留学の意義について述べている。
 私に課せられた課題は、…日本に於ける宗教的及び哲学的文献の研究、特に、仏教の生きた伝統の精通を包括し、以ってこの伝統がインド仏教並びに印度の宗教と哲学の研究に対して有している意味を確定することであった。(『仏教哲学の諸問題』O・ローゼンベルグ、佐々木現順訳、昭和51年(1976)p.3)
また、こうもいう。
 上述した如く、典拠として役立ったものは日本文献と生きた伝統及びその援助によって完結した仏教哲学の原典の諸漢訳であった。(同佐々木訳本、p.11)
ローゼンベルグの日本倶舎学への依存度が理解できる。無論、ローゼンベルグは、日本の伝統に唯々諾々と従っていたわけではない。かなり厳しい見方も示している。例えば、次のようにいう。
  古学派の学者が、たとえ不十分な著作を熟知していたとしても、彼はそれを批判しないであろう。彼は未知の著者に反駁することを品格に係わると考えたり、又、同僚の書物を論駁することは適当でないと考えるからである。日本人には客観的批判という考えを理解することは困難である。彼らの意見に依れば、どの批判も侮蔑をふくむ。しかし、そのような立場は当然、自由な思想交換を高度にさまたげているのである。(佐々木訳本、p.38)

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