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蛇の島

空なるブラックホール

を孕んだ

この怪物の

白桃色の薄い皮膚の下の

筋肉はけっして硬くはないが

柔よく剛を制して無敵

どんな勇者の剣にも

息の根を止めることはかなわない


女王蟻の分泌液は

限りなき欲情を誘う芳香を放ち

意志の駆動力を骨抜きにされた戦士たちは皆

母なる地球の乳房にぶらさがり

どれほど血が滲んでも

目を覚まして互いをいたわるようなこと

ない


私たち触覚だけの芋虫は

蛇腹の隙間深くに埋もれ

やっと残った一縷の本能で

光の方へ這い出そうとするが

無数に蠢くお互いが

互いの体によじ登りながら

その全体は

落下していくのだ

天の河の隙間の暗黒の断崖に

果てしなく

虚しく

落下していくのだ


夢から覚めた者は

黙っていなければならない

もしも声を上げたならば

まずは一本注射を打たれ

それでも黙らなければ巧みな裏取引き

富と名声のチャンスでもあるが

引き際を間違えると

寝首を刈られて

消されてしまう


あらゆる芸術も

ガス抜きとして折り込み済であるからして

誰にもけっして

「抜け人」

になることはできない

明るい絶望共同体よ


ああ 

瞳孔を全開にして

凝視するしかないのか

私たちの蛇の尻尾の断末魔

やさしい雨の降る

今日も放射能の雨の降る

私たちの

島よ

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