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ダトゥーになった日 #フィリピン冒険談 その1

 皆さんが聞きなれないであろう、「ダトゥー」という言葉。これはフィリピン語で「部族長」といった意味です。私は日本人で初めて、このダトゥーになりました。

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2017年7月7日のことです。43kgの豚の丸焼きを1頭、儀式の会場に集まった人たちに振舞うために用意します。もちろん生きた豚を買ってきて、その場でしめてレチョン・バブイ(丸焼き・豚)にします。専門家を雇って、皮がパリパリになるように焼いてもらいます。会場の周りに住んでいる人たちがこれを食べに集まってくれました。

洗礼式を執り行ってくれるのは、先輩ダトゥー達です。殺した豚の足先を四方に埋めて、血を流して、その土地の神様にお祈りを捧げます。ペソというフィリピンのお金を真ん中に置き、その周りに血を流して呪文を唱えます。

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さらに生きた鶏の首をカミソリで切って、血を出します。その血を使って洗礼式を行います。

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お酒は日本から持って行った松竹梅を用意。

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私も儀式のための衣装に着替えます。一週間前から特注で作った伝統的なものです。

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ダトゥーの儀式は、他の族長たちが執り行ってくれます。ダトゥーというのは、何百年も続いている昔からの地主の家系のことで、独特の文化を持っています。いろいろな言い伝えや、シャーマンのような役割があり、薬草などにも詳しく、私は彼らの中に入り、フィリピンの古来の植物を研究したのでした。特に探していたのが、トンカットアリという植物です。

フィリピンは木の伐採の後何もせず、はげ山が増え森林局の管理が厳しくなっています。私はその森林保護に協力いてほしいと彼らに請われ、買い取った土地もあれば、15年契約で土地を借り、トンカットアリの生えている計40万坪もの土地を持っています。その土地は木を切らず必要な薬草だけを採集させてもらうという約束を結びました。薬草の多くは絶滅危惧品種で、他にも蝶や鳥、昆虫も珍しいものがいます。そうした生物を守るため、環境を守るために契約を結んだわけです。その中に私が探していたトンカットアリも含まれているわけです。

彼らはお金をあまり持っていません。若い人は町に働きに出てしまうので、私はその土地を借りることで彼らに対価を支払い、森の保全が続けられるようにしたのです。こうした取り決めがって、彼らは私を認めてくれて、ダトゥーの称号を与えてくれることになりました。

この儀式を経て、浅岡はトンカットアリという特別なハーブのダトゥーだということが認められます。この土地は石灰岩で、コブラが出ます。そこから、コブラがトンカットアリを守っているというイラストレーションを描き、それを浅岡ダトゥーの家の紋章にしました。

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この儀式に参加したのも、私が日本人で初めてでした。そもそも新しいダトゥーが誕生すること自体がとても珍しいことです。

私は彼らから、トンカットアリの生える森を守る役割を託されたのでした。

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