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「新版 わたしのじゃじゃ麺」第一部 脚本/演出担当 くらもちひろゆき

 盛岡のソウルフードとして確たる地位を築いていた「じゃじゃ麺」は、13年前の初演時、全国的にはまだそこまでメジャーなモノではなかった。わんこそばや冷麺は、すでに全国区のものになっていたが「じゃじゃ麺」は、温かい麺にキュウリがかかっていたり、味噌を混ぜ込んだときの見た目、自分好みの味に調整するまでの手間がかかるなど、まあ、そういう理由かどうかはわからないが、とにかくまだ知る人ぞ知る名物だった。それから瞬く間に時は過ぎ、盛岡三大麺のひとつとして全国区の知名度を誇るまでになっている。
 旧満州にルーツのある食べ物であるということ以外、さほどの情報も無かったのだが、この作品を作るにあたって、取材を重ねると、驚くべき、興味深い、面白い事実がわんさかと出てきた。そんなエピソードを虚実ない交ぜにして作り上げたのが、この第一部。
 満州でどのようにじゃじゃ麺と出会うことになったのか? このあたりは思い切り想像を膨らませて作り上げた。様々な分断がけたたましい足音を立てて近づいている中、外国にルーツを持つ食べ物をここまで受け入れ、誇りとするモリオカ市民は、多分それほど悪くない未来を見ているんじゃないかと思う。

2022年3月に上演された「新版 わたしのじゃじゃ麺」のパンフレットに書いた原稿

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