アカデミーヒルズの「World Report」（オンラインによるセミナーシリーズ）にご登壇いただいている、デンマーク在住の文化翻訳家ニールセン北村朋子さんに、「教育」（2023年7月開催）と「メディア」（2024年2月開催）をテーマにして、デンマークの民主主義について２回にわたりお話をいただきました。

朋子さんは民主主義を「プロがいるわけではなく、正解や完成形があるわけではない。みんなで意見・考えを出し合って、誰一人排除せず最善の妥協点を探すこと」と説明されます。
デンマークの子どもは、小さなころから民主主義という言葉を聞きながら育つそうです。そして、遊び方（ルール）をみんなで話し合って決めるなど、子どもの頃から民主主義を経験し、小学校・中学校・高校・大学、そして社会に出ても、政治も含めて様々なことを話し合う機会があり、議論すること（民主主義）が身に付いているそうです。
このような経験を通じて、自分と異なる意見に対して敵対するのではなく、「そんな考え方もあるのか！」とお互いに認め合い、尊重しあえるようになります。

そして今回の記事では、朋子さんが準備してくださったプレゼンテーション資料に着目したいと思います。
下の画像は朋子さんの資料の表紙と2枚目のプロフィールのページです。

カラフルで可愛いなと思っていたところ、これらはレゴブロックをイメージされているそうです。
レゴは色や形が違うブロックを組み合わせて作品をつくりますが、これを人に置き換えると、「一人で全部する必要はなく、一人ひとりの強みを持ち寄ればよい」という発想になります。その根底にはデンマークの“苦手なことをがんばって克服する”というよりも、“得意なことをどんどん伸ばしましょう”という考えがあります。

1934年にデンマークで創業したLEGO社は、「よく遊べ」を意味するデンマーク語「leg godt」から社名を決めたそうです。
レゴブロックの基本形は、赤、黄、青などのカラーとシンプルなブロックの形です。それらを組み合わせて、お家・お城、電車や自動車、ロボットなど、様々な作品に変身していきます。
ところで、私の友人に子どものころからLEGOが大好きで、自宅の一室をLEGOルームにしている方がいます。ご自身の結婚披露宴では、各テーブルの装花の代わりに夫婦でつくったLEGOの作品を展示したそうです。

朋子さんからは、「子どもは、遊びの中で小さな成功や失敗を経験している。遊びがトレーニングになっている」というお話もありました。
先ほどの友人から、レゴスクールへ通っているお子さんの話を聞いたときに、レゴスクールにはデンマークの「遊びから学ぶ」という要素が含まれていると感じました。
例えば。。。

• お題（例えば「公園をみんなでつくりましょう」）は決まっていても、その後は自由です。子どもたちは話し合いながら進めます。そこでは「ブランコは2ついらないよね。じゃあ、僕が作って良いかな？」という会話が自然と起こってきます。

• サファリパークがお題のときには、園内を回るバスは車椅子でも乗れる設定になっていたことに気付いた子どもたちは、「車の窓は低くしないと見えないね」という考えになり多様性について学びます。

みんなで話し合って決めていくことや、世の中には様々な人がいることを遊びの中から学んでいます。

一方、日本人は「空気を読む」と言われます。
例えば、人類学者の長谷川眞理子氏と社会心理学者の山岸俊男の対談本の『きずなと思いやりが日本をダメにする』では、この「空気を読む」ことを、相互協調性のネガティブな側面だと説明しています。

相互協調性のポジティブな面は、問題や課題に対して協力して一緒に解決していくことと説明しています。それがネガティブになると、問題や課題を解決するのではなく、波風を立てないようにする、これが「空気を読む」ことです。

日本もデンマークも相互協調性の文化を持ち合わせているのではないでしょうか。そうすると、日本にも議論をすること（民主主義）の土台はあるので、相互協調性のポジティブな面を伸ばしていけばいいのではないか、と感じています。

※2023年7月に開催した「私たちがデンマークの民主主義から学べること」についてはこちらのnoteをご覧ください

アカデミーヒルズ　熊田ふみ子

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