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地図はアート!

メンバーズ・コミュニティ「天空のマップ・カフェ」の定例会(10月)が、「地球の真裏ケープタウンで開かれた世界の地図の祭典- 国際地図学会議(ICC)南アフリカからの報告 -」をテーマに開催されました。
天空のマップ・カフェを主宰している太田弘さんは、日本地図学会の常任委員を務められており、8月下旬に国際学会へ出席されるために、初めて南アフリカへ旅されました。今回の定例会では、南アフリカ旅行記と国際地図学会議の様子を紹介いただきました。

太田先生の旅行の楽しみ方については、アカデミーヒルズのPODCASTで語ってもらいましたが、①事前の下調べ、②現地を楽しむ、③旅行中の新たな発見について調べてみる、という3つのフェーズがあります。
ところが、南アフリカに関する現地の情報は限られており、日本で得られる事前の情報が殆どない状態での出発となり、とても心細い旅だったそうです。

南アフリカはどこにあるのか?どんな国か?

地球の真裏にあたる南アフリカと日本の距離は約13,000マイルになります。下の図は太田先生の説明資料になりますが、どれくらい離れているのかを感じることができますね。
太田先生は、関西国際空港から香港経由でヨハネスブルグ、そしてケープタウンに入りましたが、トランジットの時間を含めると24時間かかりました。

日本と南アフリカの距離は約13,000マイル(太田先生の説明資料からの抜粋)

南アフリカの基礎情報を、外務省在南アフリカ共和国日本大使館のサイトを参照にまとめました。
面積:122万平方キロメートル(日本の3.2倍)
人口:6,004名(2021年世界銀行)
民族:黒人(81%), 白人(7.7%), ラード(8.8%), アジア系(2.5%)
(2022年南ア統計局)
経済:GDPは4,199億米ドル(2021年世界銀行)
産業:天然資源に恵まれ、特に金、クロム鉱、白金(プラチナ)、バナジウム等の生産量、埋蔵量は世界上位です。
自然:太陽の国と言われるほど年間を通じて晴天の日が多く、全体的に気候は温暖です。また、2000m級の山脈、砂漠と森林、高原と平野など多様な地形と気候を反映して動植物の宝庫です。またアウストラロピテクスなどの人類化石が発見された遺跡群及びロベン島などの文化遺産、その他自然遺産等10カ所が世界遺産に登録されています。
スポーツ:最も盛んなスポーツのラグビーは、世界のトップクラスです。
食文化:ぶどう栽培に適した地中海性気候と肥沃な土地に恵まれたケープタウンとその周辺では、17世紀半ばからワインづくりが行われてきました。南アのワインは全世界のワイン生産量の4.1%を占めています。日本への輸出も増えているようです。
歴史:7世紀半ばからオランダ、19世紀前半からは英国の植民地になりました。1910年に南アフリカ連邦として独立しましたが、白人政権は黒人の政治的・社会的・経済的権利を剥奪するアパルトヘイト(人種隔離政策)を実施し、国際社会から厳しい非難を浴びました。1994年4月に初の全人種参加による総選挙が行われた結果、反アパルトヘイト運動を主導したネルソン・マンデラ氏が大統領の民主政権が発足しました。

現地ならではの情報

太田先生が一番心配されていたのは治安でしたが、ケープタウンは問題なかったとのこと。移動はタクシーではなく、Uberのサービスが良く明朗会計でとても便利だったそうです。
また、通貨のランドは日本円との為替レートが20年間(コロナ禍の下落を除いて)ほぼ安定しているので、円安の現在でも欧米系のハイクラスホテルに1泊2~2.5万円で宿泊できます。そして、そのクラスのホテルのコンシェルジュはサービスが良く滞在中に頻繁に活用されたそうです。

世界遺産

太田先生は、学会の合間を縫って観光(を兼ねた地理調査!)もされました。
隣国のジンバブエ共和国とザンビア共和国の間にある、世界三大瀑布の1つビクトリアの滝へ行かれたそうです。そこでヘリコプターによる遊覧で撮影された画像がこちらです。自然の凄さが伝わってくる1枚です。

太田先生がヘリコプターの遊覧で撮影したビクトリアの滝

また、ケープタウンから沖合約10㎞に位置する世界遺産のロベン島へも行かれていました。かつては監獄島と呼ばれたこともあり、故ネルソン・マンデラ元大統領らアパルトヘイト(人種隔離)政策の廃止を求めた政治犯が多数収容されたことで知られています。
下の画像は太田先生の資料からの抜粋で、独房や実際に収容された方による体験談の様子です。

ロベン島にある監獄の様子(太田先生の説明資料の一部から)


国際地図学会議 (ICC 2023)

太田先生の南アフリカ渡航目的である国際地図学会議 (ICC 2023)についても紹介してくれました。
今回のテーマは、"SMART CARTOGRAPHY FOR SUSTAINABLE DEBELOPMENT"(持続可能な開発のためのスマート地図作成)でした。

国際地図学会議(the 31st International Cartographic Conference)

8/13~18までの6日間の会期中には様々なセッションやイベントが開催されましたが、太田先生の紹介で一番印象的だったのは、こどもの地図展です。

Children’s Map Competition(こどもの地図展)の作品

こちらのサイトには、世界の子ども達が描いた世界地図が紹介されています(6歳未満、6~8歳、9~12歳、13~15歳の区分で紹介されています)。
太田先生が、「日本の学校で描く地図は地域の環境を調べた地図が中心だが、他国は世界地図を用いて色々な社会問題を描いている。さらにデザイン的な綺麗な地図がほとんどで、社会科の枠では限界があり、美術の先生の協力が必要!」とお話をされました。
上記のサイトの世界の子ども達が描いた作品を見てください。それには年齢に応じた子ども目線での思い、問題意識が表現されています。
正しく地図を描くことも大切ですが、世界へ視野を広げて思いを巡らせることも大切な視点だと感じました。

定例会の最後に、ケープタウンで太田先生が持ち帰られた現地の地形図を囲んで、みんなで語り合いました。

左:ケープタウンのカラフルな地形図 / 右:地図を囲んでの語り合い

その中で、南アフリカの地図はカラフル、黄色など原色を使っているが、日本の地図はグレーなど淡い色が多いのではないか、という話題で盛り上がりました。
下の写真はICC2023で販売されていたエコバッグです。ケープタウンの地図がプリントされていますが、それだけでとても素敵なデザインになっています。

ICC 2023で販売されていたエコバッグ

太田先生は事前の情報が少なく最初は心細く感じた旅でしたが、「百聞は一見に如かず」で、現地に行かなければ分からないこと、空気感、食事、人々との触れあいなど、今回の旅を非常に堪能されたようでした。


アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

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