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あのときの一言(11)「この一報なんかよりも価値があること」

挨拶

こんにちは、みっつです。工学部、化学系の研究室にて博士号を取得したのちに、現在は国内の消費財メーカーで働いています。

この連載では、これまで大学院生活や社会人として過ごす中で出会った方からかけてもらった印象的な言葉について振り返っています。言葉をかけてくださった方や自分の当時の状況、その時の気持ち等を振り返りながら、その言葉が自分にとって重要だった理由や、今の自分にどう影響しているのかについて改めて考えてみています。

どのエピソードも些細な一人の体験ですが、自分にとっては重要な出来事でした。この記事を読むことが、かつての自分の境遇に近い方や、その周りにいるような方々が、なにか気づいたり考えたりするきっかけになったら幸いです。

今回紹介する一言

今月振り返ってみようと思う言葉は「この一報なんかよりも価値があること」というものです。

博士課程へ進学後はじめての国際誌への論文投稿の審査が通った際にかけられた、所属研究室の教授の言葉です。校正など執筆にかかるプロセスで面倒を見ていただいていたので、そのお礼に居室を訪ねた際にかけていただきました。

あの時

博士後期課程への進学後は、自分への周囲の関わり方が一変します。後輩からはドクター進学した先輩として見られますし、研究の進め方や各所での意思決定、自己管理などにおける裁量が増したりします。他方で研究室のスタッフ陣からは、「一人前の研究者に育てるため」に研究内容に対してはより深く、厳しく追求することを要求されるようになったりします。大学院に在籍されている方や、この環境をご存じの方には理解していただけるかと思いますが、進学後の周りからのプレッシャーは相当なものだと思います。

そのような中で手掛けていた研究ですが、なかなか芳しい結果が得られているとは言いがたい状況でした。具体的には、その時の研究テーマが修士課程時に発表した研究の延長線上にあたる内容であり、しかも性能面で以前のものを超えられていないという、研究では比較的ありがちな苦しい状態でした。アイデア面でどこか斬新さに欠ける上、さほど優れたものではないという、数値勝負な側面のある研究分野において、かなり参ってしまう段階です。そのような中、いろいろな方のアイデアや、諸機関での分析結果などのおかげもあり、性能の追求というよりは現象の理解を深めるという方向性のもとで論文を書き、なんとか査読プロセスを通過することができたという頃でした。

成果として世に出すまで時間がかかったこと、そのインパクトも大きいとは言いがたかったこと、また執筆の過程でも多大にお世話になったことから、若干の申し訳なさとともに「この論文投稿に関して、いろいろとありがとうございました」と伝えに教授室を訪れたときに、今回の言葉をいただきました。
実際にかけていただいた言葉(正確にはメモ帳に残っていたもの)としては「君という科学者がこういう経験をしたことが、この一報なんかよりも、何よりも価値のあることだ」でした。

それまでのどこか煮え切らないような思いが、この一言で晴れたのを覚えています。


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