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適切な場所に駐輪させる試み

シェア自転車が広まると、様々な場所に置かれることに対して目くじらを立てる人が増える。ゲームでアイテム拾う感覚でそのへんにある自転車に乗って移動速度がアップするのはシェア自転車の醍醐味だと思うのだが、そのような考え方は今の社会とは相容れないようである。そのような現状に対するシンガポールの取り組みが以下のLTAのプレスリリースである。

自転車が放置されるのは住宅や目的地の近くに駐輪場がないからではないかと考えて、7000ヶ所の駐輪場(イメージとして駐輪指定区域に近い)を追加で用意した。例えば、シンガポールのバス停には下の写真のように駐輪する場所が明示されている。この結果、住宅の95%、主要な目的地の97%の徒歩5分以内または400m以内に駐輪場があるとのこと。

それから別記事に書いたように台数を制限してシェア自転車事業者にライセンスを付与している。これによりシンガポール内での自転車の総量が大幅に減らされている。それから駐輪の際に駐輪場のQRコードをスキャンさせる仕組みを来年から導入する。

数ヶ月前に駐輪場にQRコードが出現した。公団住宅の一階や駅の駐輪場など様々な場所に現在このようなQRコードが埋め込まれている。

まだアプリでは実装されていないようだが、駐輪した際に駐輪場のQRコードをスキャンすることを義務付けることによって適切な場所に駐輪させる試みである。

きちんと駐輪場のQRコードをスキャンしないと追加で5ドル課金され、3回駐輪場のQRコードをスキャンしないと一ヶ月間どのシェア自転車業者のサービスも使えなくなるというものである。これがもし位置情報と連動してなかった場合、駐輪場QRコードの画像を一つ保存しておけばいいんじゃないのという抜け道を考えてしまうわけだが、バックエンドの詳細は不明である。

似たような仕組みとして、ジオフェンスというものがある。GPSによる位置情報に基づいて自転車が指定の範囲にあるときだけ駐輪できる仕組みだ。しかし、GPSがそれほど正確でないことを考えると、駐輪場QRコード方式の方がシンプルなだけに柔軟性があるのかもしれない。仮に駐輪場に空きがなくて枠の中に収まらなかったときでも、すこしはみ出して駐輪して駐輪場QRコードをスキャンすればよい。完璧を求めるのではなく、おおよそ許容範囲に収めようとする線の引き方がとてもシンガポールらしい。

一応QRコードが汚れていてうまくスキャンできない場合や、駐輪場にQRコードがなくてスキャンできない場合は、その旨を通知する機能もあるとのこと。社会というのは基本的に完成品ではなくベータ版であって、フィードバックを受けながら適宜軌道修正して、より良い方向に進んでいくという価値観の共有が技術の社会実装には不可欠なのだろう。

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