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トレイ返却用ロボット

日本に住んでいるとファーストフード店などで食後にトレイを片付けるのは当たり前に感じるかもしれないが、シンガポールではそれは必ずしも当たり前ではなかった。それが変わりつつある。
当初は片付ける人の仕事を奪うという声も上がったが、今ではそんな話も聞かず、どのテーブルにもトレイを片付けましょうというステッカーが貼ってある。それから購入時に1ドル多く払い、トレイを返却すると1ドル戻ってくるデポジット方式、トレイを返却してカードをスキャンするとポイントが貯まる方式など様々な試みがなされている。
そんななか、トレイ返却口の方が動き出したと知り、現地を見てきた。

自らトレイを返却しようとしても返却口にトレイが溢れていて返却できないことが多いので、こうして可動式の返却口が用意されるのは便利になって良い。

縦横無尽に動き回るのをイメージしていたが、実際に観察しているとそんなことはなかった。ステーションから出てくる道と、この道と交差する広い道、そしてこの広い道と交差する4本の平行なやや狭い道の3種類の道を動いていることがわかった。より具体的には、ステーションから出てくる道と広い道は2台通れるくらいの広さがあり、実際に2台がすれ違う。しかし、やや狭い道は1台しか通れず往復運動を繰り返すのみである。つまり4台のロボットがそれぞれ割り当てられた4本の平行なやや狭い道で往復運動をして、時間またはトレイ重量に基づいて時折広い道を経由してステーションに戻る仕組みである。

前方に衝突回避のためのセンサーがついており、一時停止したり障害物を避けて動く仕組みになっている。
一見何やらとても複雑なアルゴリズムに基づいてくまなく動き回っているように見えて、所定の場所へ行く・所定の範囲内で往復運動・所定の場所から戻るという単純な動きしかしていないのはとても興味深い。実際のところそれで何も困ることはないのである。各テーブルは固定されていて道幅が狭くなることはなく、人間もサポートしているので不測の事態にはどうにでも対応可能だ。

会社名義ではなく個人名義で意匠登録していた。

社会実装にはこれまでになかったすごい技術なんてものは必要なくて、既存の技術の組み合わせで、現実社会での不確実さをうまく吸収しながらそれなりにうまくまとめることが大切なのだろう。
トレイのサイズを標準化したり、テーブルの間隔が固定であるとか、監視カメラの抑止力が適度に働くことのような一見些末なことの方が社会実装を円滑に進める上での潤滑油のような重要な役割を果たすように思う。



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