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Road to INDIA


<第1回>祖国(仮)へ向かう

 コロナの影響もあり、実に5年ぶりの海を渡りました。向かった先は、私のソウルフード生み出したCurryの国 インド。血液の1/3はCurryな私にとって初の渡印ながら、何かしらのシンパシーを感じずにはいられませんでした。
 という冗談はさておき、チームメイトの大矢が一昨年よりJICA隊員としてインドで陸上指導現場にいるということで、インドの実態を見たいと思いお邪魔させてもらいました。大矢のナイスなアテンドでディープなインドの一端を垣間見ることができる旅になりました。

JICA隊員として活動中の大矢(左端)。今回の案内人

 Accelメンバーをはじめとした友人がJICA隊員として、パラグアイ、ジンバブエ、バヌアツと途上国へ陸上隊員として派遣されています。陸上では海外のことを知りたいと思ってはいましたが、自分ができる国際協力はないか?と模索する人生になるとは想いもよりませんでした。模索した形の一つが、SNSで皆さんいご協力頂いた途上国へ物品を届けるプロジェクトが”orz#400プロジェクト"になります。
 ”orz#400プロジェクト"の「orz」はネットスラングで「絶望・残念な様子」意味しています。しかしながら、この姿勢は何も「絶望・残念さ」な時だけ、この姿勢になるわけではありません。この姿勢はまさにオールアウトした陸上選手の姿勢と同じです。この名前、ロゴには、世界中どこでも、誰でもケツワレしてほしい。ケツワレしているときに戦争しようなんて思えない。世界平和につながる!という如何にも脳筋な想いを込めています。
 想いは脳筋であっても、多くの方に共感を頂き、想像以上の支援物資が届きました。斬炎ながら、あまりに多く今回の渡航だけで全てを持っていくことはできませんでしたが、必ずどこかの国にお届けをします。もうしばらくお待ちください。そして、快くご協力頂きました皆様には心より感謝申し上げます。
 話は戻り、久しぶりの海外、カレーの国、ディープ世界があるというインドの事前情報にただただ胸踊らせて向かいました。

<第2回>Kalinga Stadium

 向かった先は、大矢の活動拠点となるインドの東に位置するオリッサ州ブバネシュワールの"Kalinga Stadium"。オリッサは近年スポーツに力入れ街おこしをしている地域だそうです。カリンガスタジアムでは2017年のアジア選手権が、2023年にはホッケーの世界選手権が開催されています。そして帰ってから気がついたのですが、2018年のアジア選手権には当時Accel所属だった川崎和也選手が出場した記念すべきスタジアムでした。何かの縁を感じずにはいられませんでした。

 大矢はじめ一部のコーチは、このスタジアムに住み込んで活動に当たっていました。競技場に住み込むってどういうこと?ってなりますが、スタジアムのコンコースに当たる部分に部屋があり生活をしています。窓からはスタジアムの内部を一望できる陸上狂には最高の物件でした。選手たちは競技レベルによって、異なりますがスタジアムの敷地内(日本でいう総合運動公園に近い)にある寮に住み込み朝から晩まで競技に打ち込める環境にあります。(日本のどっかの大学みたい…)
 見たかぎり一日中明かりがついているので、カウントダウン400mもできそうな気がしました笑

全体図とメインゲートと部屋から見える景色

 メインスタジアムの通路を挟んだ斜向かいにサブグラウンドがあり、サブのホーム側にはインドアトラックが建設されていました。(ちょうど1週間前にオープンになったところでした。)バンクの200mのトラック、インフィールドには60mの走路と砂場、ポールのピットがあり、バンクの裏手には砲丸とハイジャンプのピットが設置されています。インドアトラックのバックストレート裏手にはW-upエリアとして100mを走り抜けられる直線5レーン分があり、ゴールのシャッターを開けると100mを走り抜けることができる仕様でした。(海外のインドアスタジアムをイメージしていだければ相違ないかと思います。)また、アウトドアのトラックはそれほど良いものではありませんでしたが、混雑具合やコンディション、トレーニング応じて場所を選択できるのは羨ましい限りです。

インドアトラック・芝生のグラウンド(投擲)・ジム

 この他にも投擲場として芝生のグラウンド、スタジアムの周辺は緩やかな傾斜の坂もあります。ウエイトについては、スタジアム内にフリーウエイトができる場所が1階・2階とあり、器具も十分に揃っています。また、同施設内にはハイパフォーマンスセンターも別に建てられており、バイオデックスやバイコン、トレッドミルも完備され、スポーツ科学からの見地からも選手のサポートを試みているようです。(試みるというのはまだ実装しているとは言える状況ではないため)

にわかに信じがたいですが、90日でこのスタジアムができた。(アップデートはしていると思いますが)という動画かこちらです。恐るべしINDIA Power!

 受け入れてもらえるかわかりませんが、個人的にはトレーニングキャンプするのにカリンガスタジアムはオススメです。今回の11〜3月はインドも冬らしく、暑さも落ち着いているとのことです。今回も快適で日中は半袖で短パンで過ごせ、朝晩は長袖一枚あれば良いくらいな感じでした。これまでラオス、ブータン、ジンバブエ、カンボジアと途上国の練習環境を見てきましたが、ダントツでインドが抜けていました。(そもそもインドは途上国扱いでいいのか?と思いますが…)
 ただ、食事と衛生面は気をつけなければなりません。今回は現地で活動する大矢のアドバイスもあって、口にする水は全て購入した水を飲みました。シャワーのみ現地の水を使いましたが、それも口に入らないように最善の注意を払いました。食事はカレーという概念がなく、スパイスを入れたスープは全てカレーと呼ぶのでは?思うくらいに当たり前にあります。辛くないものを探すのが大変ではありますが、私は全く気にならず毎食美味しく頂くことができました。インドでのキャンプには腹の強さは必須条件かもしれません笑

<第3回>India Athlete

 大矢が現地で指導するIndia Athleteたちと4日間と交流しながら、指導もさせてもらいました。一括りにIndia Athelteとしてしまうのは無理があるかもしれませんが、カリンガで見た光景・印象を書きたいと思います。
 最近、India Athelteの活躍が世界でも目立つようになりました。その代表格といえば、チョプラ!やり投で東京五輪、ブダペストを制しています!今年のパリ五輪に向けては、連覇が期待される選手です。(女子やりの北口選手と共にアジア人のアベックVに期待してしまいます!)また、昨年はマイルチームが予選でアジア記録を更新の大活躍を見せ、5位入賞しました。個人的には、中国、日本、に続くのがインドだなという印象を持っています。 

 カリンガスタジアムを拠点にするアスリートたちは、世界を目指す育成年代(U23くらい)の選手の活動拠点になっています。スタジアムの敷地内には、選手たちが暮らすホステルがあり、その選手たちをホステルアスリートと呼んでいました。ホステルアスリートになるためには、各地で行われるセレクションや大会結果によってスカウトされなければなりません。現在、陸上競技では13歳〜23歳までの240名のホステルアスリートが在籍しているようです。
 
 ホステルは日本の環境からするととても質素に感じるものでした。しかしながら、ここに来るまでは1日3食の食事を摂ったことがない。実家は屋根も窓もない家で暮らしている。と話していました。選手たちは貴重なスポーツに専念できる環境に素晴らしいを与えてもらったと感謝していました。

 今回の渡印にあたって「インドは途上国なのか?」という問いがありましたが、思ってた以上に国内での経済格差が大きなものになっているのだなと改めて感じました。私たちからすれば、物足りなく感じる環境も彼らにしてみれば天国のような場所なのかもしれません。

ホステルの看板と1週間の食事のメニュー

 カリンガスタジアムを拠点にするコーチは、ガバメント所属(政府・陸連)のコーチ、カンパニー所属(実業団)のコーチに大別されます。所属は異なりますが、いずれもカリンガの選手たちの強化が目的になります。
 各コーチたちのもとに5-10人程度の選手がグループを作り、トレーニングに励んでいます。多くのグループは暑さを考慮して朝と夕方の2部練をしていました。今回行った時期は大変過ごしやすかったものの、夏のインドは息をするのも大変な暑さになるようで練習時間も朝と夜の涼しい時間に行われているそうです。大矢のチームは6時半〜8時、17時〜19時の時間でした。朝については他のチームでは4時台から行っているチームもあるとのことでした。 

各コーチの指導を受ける選手たち

 練習施設はとても良いのですが、環境としてはなかなか厳しい環境ではあります。では、なぜそのような環境にも関わらず、スポーツをするのか?疑問に思いました。
 歴史的な背景も理由も含まれますが、「人生を変えるチャンスがある」からだということがわかりました。日本の文化には馴染みは薄いですが、賞金文化が根付いており、全国大会、州の大会はもちろん、学校行事(バレーボール大会や鬼ごっこ大会など)でも賞金が出るようです。また、競技成績によって提供される物品、居住環境、食事の内容、制約(スマホの使用時間など)が変わっていくこと、上位大会に行くと選べる職業は増えることがあり、競技成績が生活に直結していました。賞金の金額も親の年収を超える規模のものもあるようです。(ここについては別回で掘り下げていきます。)また、コーチの多くはインド人であり、インド国内でスポーツの勉強や経験がある人が指導にあたっています。コーチもしっかり職業として認められており、報酬をもらいながら指導をしていました。カンパニー所属のコーチは選手の成績と紐づいているようで、ドーピング問題とも関係しているようです。


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