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It's a Small World


バヌアツ人スプリンター帰国

 短パンで過ごせた季節から季節が進み朝晩の冷え込み始めてきた一昨日Obedが帰路についた。昨日、母国に無事に帰国した連絡がきて、この2ヶ月間のバヌアツ人スプリンターとの合宿も終幕を迎えた。本当の終わりを告げた。
 
 改めて関わってくれた皆さんには心から感謝を申し上げたい。

野生の世界チャンピオン”Barshim"選手に遭遇

大西English炸裂の日々

 さて、初めての留学生の受け入れということでてんやわんやする毎日であった。
もちろんコミュニケーションは全て英語。この合宿に向けて少しでも語学力向上を試み、オンライン英会話を始めるも来日までに行った時間は17分。まるで向上しないままに迎え入れることに。

 トレーニングの様子

 毎日の競技場までの送迎では会話が成立しているのかわからないレベルから、お互いの文化の話ができるようになったりトレーニングの話をできるようになった。それほど自分のトーク力が上がっている気がしないので、彼の大西Englishへの対応力が向上されたことが大きいと感じる。
 1ヶ月を過ぎた頃には「Hey Coach,Your skin color same! We are Nigger!」と言うまでに。Niggerは差別用語と学んでいたが、同じ黒人同士が使う分には「Hey! Brother!!」と同義らしく心を開いてきてくれたことを確信した。

Hey! Brother!

 子供たちとの練習にも何度か参加してもらい、コーチの英語なんか変じゃね?あんなんで伝わるの?という姿を見てもらった。子供たちには気を遅れする必要がないことを学んでもらえたと思う。何かを伝えようとすること、伝えてくることを受け取ろうとすることこれがコミュニケーションの本質だったのではないかと思う。(自分を正当化指定だけに過ぎないかもしれないが。)

日本文化への対応とトレーニング

 2019年に同じようにアジア途上国(スリランカ・ラオス・ブータン・レバノン・ネパール)のアスリートを迎えての合宿を行った経験がある。その際には、食事や文化の違いでなかなか日本を堪能させてあげることができなかったが、今回はこちらが日本人じゃないの?と思うくらいに日本文化に対する受容度が高かった。
 来日した翌日には、寿司に、納豆、温泉といった外国人なら難色を示しがちなものも「Oh,It’s good」と言って受け入れていった。全日本実業団後に、訪れた奈良はとても気に入っており、一番好きな日本食は”きしめん”だそうだ。好きな歌は”カイト”で勉強中にエンドレスリピートしていた。

日本文化への見事な対応力

 日本については都会なのに街にゴミが投げ捨てられてなくて非常に綺麗なこと、ゴミの分別が細いこと、星が全然見えないことにに驚いていた。また、奥さんが怖いことや思春期で親とうまく行かずに喧嘩することは日本でもバヌアツでも変わらず世界中で同じであることを教えてくれた。 

 キャンプとしては、9月末の日体大で200mでPBをマーク。10月に400mにチャレンジというプランであったが、怪我のため当初のプラン通りにはいかず・・・。途上国あるあるの非常に長い腱を持っているものの、それを制御する土台がなく、中心から大きな力を出すことが苦手であった。また、スキルについてもまだまだ知らないことが多く、それが原因となって膝を痛めていた。トレーニングを中断する期間もあったが、それはそれで身体の使い方、これまでの技術を見直すいい機会にもなったと思う。もちろんAccel流のおもてなしもして、3回くらい「I will be a basketball player when I come back to Vanuatu.」とのたうち回りながら言っていた。11月の中旬にパシフィックゲームがあるので、活躍を期待したい。

おもてなしをした結果「俺はバヌアツに帰ったらバスケットボール選手になる」と言っている様子

See you againの意味

 チームメイトをはじめ交流してくれたみなさんには本当に感謝をしている。限りある時間で楽しい時間を過ごすことができたと思う。帰国前には、一人一人にさよならを言うのが悲しいと話していた。何をまたそんなに深刻な顔してと思っていた。いくつか方法はあるが、オーストラリアもしくはフィジーでトランジットを経てバヌアツに向かうことができる。航空券も往復20万円前後からあり、時間とお金さえあればいける距離である。そう認識していた。

 ただ出国日が近づくにつれの彼の表情、エキサイトしている姿を見ていると我々が思う以上に”See you again”の言葉の意味の深さがあったのではないかと思う。
 今回は彼はIOCの途上国アスリートに向けた奨学金を得て長期間の日本でのキャンプができた。(詳細はこちら) 長期間いることで、多くの人に会うこと、経験することができた。しかし、この奨学金が次回もあると言う確約があるわけではない。彼と同じように環境を求めている若きアスリートは世界中にいる。そう考えると、彼にとって日本に長期間滞在できるチャンスはもしかするとこれが最初で最後になるかもしれない。彼が日本で言い残していったSee you againは、”また”がないこと(限りなく可能性が低い)をわかっていたのかもしれない。もし来れたとしても、今回と同じメンバーが同じように迎え入れることもできないかもしれない。一期一会の出会いであることを我々以上に感じてたのでないかなと思った。

 成田で見送る彼の後ろ姿を見てそう感じた。彼が何気なく過ごしてしまっている日常の大切さを改めて教えてくれたように思う。

See you againの意味の深さを感じた瞬間

It's a Small World

 See you againの意味深さを書いてから、こんなことを書くのも憚れるが、”陸上競技を共通言語に”することができた2ヶ月間だったと思う。

  子供達、チームメイトとのトレーニングで詳細は伝わり切ってなくても、見よう見まねで動くうちに距離感はあっという間に埋まっていった。いつかObedに会いにバヌアツに行きたい。他の国にも行ってみたい。英語話せるようになりたい。
 どこか遠くに感じていた世界が身近に感じられるようになっていた。SNS等によって会ってなくても毎日会ってような感覚になることがある。特に、コロナの影響もあり画面越しにコミュニケーションを取ることも日常になってきた。そんな中、久しぶりに”リアル”な温度感のあるコミュニケーションの場があったことで、多くのことを五感で感じられたように思う。
 このような機会をくれた糸見君には感謝したい。そして、”また”会おう。
   

Ale,ta ta!Obed!!(ビズラマ語で”またね”の意味)

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