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スクリーンは窓

前の記事で駅地下の話を書いたのですが
昨日でかけたのは映画を見るためでした
映画館へいくまでの道のりを書いているうちに、いつのまにか駅地下に主題を奪われていた
たのしかったんだよね、駅地下も

駅地下と繋がったショッピングモール
その中に映画館がある
私の住む県や隣県でも上映されていたけれど
海を渡って行くその映画館が家から一番近かった

原作がとても好きで、映画の脚本も好きな方が書いたとあって、個人的に楽しみにしていた
私の中では2024年トップバッターかつビッグタイトルだったので、地元周辺の映画館でも上映しているものと思っていたのが、劇場一覧を見てみると地方ではあまりやっていなくて驚いた
日帰りで行ける範囲で上映されていてよかった
自分の住む場所の絶妙な位置加減に感謝



観に行ったのは、「カラオケ行こ!」
ネタバレはしないよう、感想を書いてみます

タイトルの長い映画たちの中で際立つ、文字のデカさが良い

シアターに入ると、そこそこ席が埋まっていた
平日の遅い午後にしては観客が多かった
サービスデーだったからかも
客層は10〜70代まで幅広く、男女比も5:5に見えた
元がマンガだし、なんとなく20〜30代の女性ばかりだろうと踏んでいたので面食らった

原作はほとんど2人芝居の会話劇で進んでいくのに対し
映画では主人公をとりまく人間関係が肉付けされ、細かに描写されていた
「中学生」のリアリティーが濃くなっている印象
最初は蛇足に思えたけれど、これが全体に効いてくる

原作のコミカルなシーンは忠実に再現されていた
・当人達は真剣だけど側からみたら変な会話
・喜怒哀楽の狭間にある表情
「隣のテーブルのやりとりをよく聞いてみたらおもしろかった」みたいな
そういう、原作者がもつ筆致
漫画だからこそ表現できる空気の流れがある
あの何とも言えないものが、映画にもあった
オリジナルのネタにも原作の味わいを感じられた

原作で笑った場面・セリフはほぼ出た
原作と同じところで笑った
「くるぞくるぞ…」という期待を裏切られない嬉しさ
他の観客も「ふふっ…」と声をもらしていて、要所要所で場内の空気が笑いにゆらいでいたのが楽しかった
大笑いが起きないあたり、原作への敬愛をとても感じる脚本・演出だった
そしてシリアスなシーンのシリアスさが際立つように脚色が足されている
これぞ脚本家の方の腕の見せどころ
それによってより一層、キャラクターや物語に入り込めて、愛着がわいていく
クライマックスで少し涙ぐんだ自分に驚いた
さすが、感傷を描く名手

ただ忠実に実写化したというのではなく
新たに映画として一から編み直してある
原作を徹底的に読み込んで、付箋を足してる感じ

漫画では描かれないシーンも追加されている
「おお、この場面が観れるとは…!」と感動
ひとりニヤニヤしていた
というか、2時間ずっとニヤニヤしていた
原作愛を感じられるのが嬉しく、頬が緩みっぱなしだった
一部だが表現が過剰になっているシーンや変更されているシーンもあり違和感が残ったけれど、それは映画的に必要な緩急や伝わりやすさのためであったと思う
「あれ?こんなんやっけ?」「いや〜そこのところはあの形に性格が表れてるからさ〜」などと思ったのもその瞬間だけで、全編通して観た時には気にならなくなっていた
これを書くまで違和感を感じたシーンのことも忘れていたくらいだ
この映画の評価が下がる要因にはならない
「映画を観て、原作読んで、映画を観て…」
そのサイクルを何度も繰り返したくなる出来栄え

キャスティングも素晴らしかった
個人的なMVPは、聡実くんの後輩「和田」
彼はよかったな…純度100の中2…
NHKドラマ「中学生日記」を思い出させてくれた

物語や人物に新たな解釈も得られる脚本
「カラオケ行こ!」の世界と自分のいる世界の次元がひとつづきになって、ドキュメンタリーを観ているようだった
目の前のスクリーンが、カラオケの扉や教室の窓のように思えた

原作が好きすぎて観るのが不安な方には
『劇場音響で聡美くん渾身の「紅」を聴ける』
これだけのためにでも観に行く価値がある
そうおすすめしたい

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