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M&Aにおける各種デューデリジェンスについて①|企業がM&A(合併や買収)を行う際の調査手続き

本記事は、2020年12月6日にSuperstream様の『管理部の実務課題解決コラム』へ寄稿したものを、一部修正した上で再掲載しております。

M&Aにおける各種デューデリジェンスについて(その1)|企業がM&A(合併や買収)を行う際の調査手続き


(1) はじめに

株式会社アクリア代表取締役の川崎です。

今回は「M&Aにおける各種デューデリジェンスについて」としまして、企業がM&A(合併や買収)を行う際の調査手続きについて、2回に分けて取り上げていきたいと思います。

(2) デューデリジェンス(DD)

デューデリジェンス(Due diligence。以下「DD」と記載します)は直訳しますと、「当然払うべき注意・努力」といった意味になりまして、M&A実行に際して事前に行う買収対象企業の適正評価に係る一連の調査手続きをいいます。

中古車を試乗せずに購入したり、或いは不動産の内見を全くせずに高額な物件を購入したりする人が殆どいないように、企業のM&Aを行う際にもその実情について詳細を把握し、しっかりと検討を行うことが必要となります。
仮に適切なDDを行わず、対象企業の価値が毀損していることを看過してM&Aを実行した結果、買い手に損害が生じた場合、善管注意義務違反として経営者はその責任を問われかねません。
M&Aを本質的成功に導く意味では勿論、そういった株主からの受託責任を果たす意味でも、M&Aを行う際にはしっかりとDDを行う必要があります。

一口にDDと言いましても、財務/税務/法務/ビジネス/人事/IT…と多岐にわたる範囲で実施されることとなります。ただし、必ずしもこれら全ての範囲のDDが行われるとは限らず、買い手にとっての当該M&Aの重要性や意義、或いは対象会社の業種・業態やその特色を理解したうえで、必要充分と認められる範囲に限定して実施されることが一般的です。
M&Aの検討・実行に際しては当事者双方の事情により時間的制約を伴うことが通常であり、また買い手側の予算等の関係により調査コストを無限にかけることも許されないことが殆どですので、その中でどの分野にどの程度の深度で、効果的かつ効率的な調査を行うかの事前方針の確定もDDの実施に際しては肝要となります。

以下、それぞれのDDに関する一般的な概要を見ていきたいと思います。

(3)財務DD

財務DDは主に過年度の財務諸表やその基礎となる会計帳簿等を出発点として、対象会社の財務会計全般における調査を行います。

具体的には、

①資産の実在性や負債の網羅性、或いはそれらの時価の検討等を通じての実態純資産の把握
②損益項目の内容把握や異常項目の有無の検討を通じての正常収益力の試算
③過去の資金繰り等の検討に基づくキャッシュ・フロー分析
④経理の決算体制や会計方針の把握検討

といった項目を主に調査していきます。

まず①は対象会社のBSに計上されている資産がそもそも実在しているか、減損等の必要は無く帳簿価額は適切なものとなっているか、帳簿に計上されていない負債は無いか…といった点等を調査していきます。特にこの①は買収時の企業価値に影響する他、仮に看過した場合には、買い手の連結範囲への加入後に資産の減損や簿外債務に係る引当といった項目を通じて、連結PLを大きく痛める要因となりかねませんので、通常、重点的に検討が必要な項目となります。

②については売上高や各段階利益といった表層的なPL数値に目が行きがちですが、特別損益項目は当然ながら、例えば引当金の戻し入れや補助金の受け入れなど、営業損益~経常損益にも非経常的な項目が混入していることはよくありますので、対象会社のPLの内容をしっかりと把握・検討するとともに、それを排除した正常収益力の算出等の分析を行います。それらを排除した形での正常収益力を把握することは、対象会社の現状を理解するうえでは勿論、M&A後の事業計画の検討を行ううえでも大いに意味を持ちます。

また、対象会社のキャッシュ・フローに不安があれば③も重要となりますし、対象会社の決算体制が脆弱であることによりM&A後に連結決算全体の締めが遅延するというケースも散見されますので、PMI(買収後の統合プロセス)を視野に入れますとDD時に④を意識しておくことも重要となります。

以上、今回はDD全般と財務DDに関する一般的な概要を見ていきました。次回は引き続き、税務DD~法務DDといった各種DDの概要等について、取り上げていきたいと思います。


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