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掌編小説 危険なお洒落

エスカレーターの部分は私の実体験に基づいたお話
 
 小さい頃母と行ったデパート。そこで喫茶店に入ってチョコパフェを食べるのが私の小さな楽しみだった。バナナとコーンフレークと生クリームが入った何の変哲もないパフェ。だけど2人で美味しいねと言い合って食べるパフェは何ににもまさるご馳走だった。

 その日の帰り。下りのエスカレーターにいると女の人の悲鳴がきこえてきた。訳のわからない、完全にパニックに陥った人特有の金切り声で女性は何かを訴えている。よく見るとスカートがエスカレーターに挟まれてしまったようだ。慌てて係員の人が駆けつけてきてエレベーターは一時休止されてしまった。女の人の苦しそうな表情が遠目からでも確認できた私はその情景が今でも脳裏に焼き付いて離れないのだ。

 お洒落は危険を伴うというのはダンサーのイサドラ・ダンカンが首に巻いていたスカーフを自動車の車輪に巻き込まれ死亡してしまったことからもうかがい知れるが、その女性がその後ロングスカートを履かなくなっていたらそれは同じ女として残念なことだなと思うのである。

 

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