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掌編小説 シンディ姫と7つのエメラルド

 あるところにとても美しいお姫様がいました。名をシンディといいました。シンディは7つの誕生日に東方からやってきた3人の博士にある予言を受けました。

「姫が18の誕生日を迎えられる頃、西の方からある魔物がやってきて姫をお后にと望む動きがあります。大事な姫が危険な目に合わないよう私達は7つのエメラルドを置いていきます。命の危機を感じたときにはこのエメラルドを魔物にかざすのです。きっと姫を守ってくれることでしょう」

 国王は博士たちを信じ、シンディをなるべく危険な目に合わせないように、愛情深く見守りながら、西の方角にはくれぐれも注意して18年間大切に大切に育てました。

 そして18の誕生日を迎える頃、心身ともに美しく成長した姫に隣の国の王子から求婚の申し出がありました。名をアビエル王子といいました。この求婚に国王はシンディ以上に喜び、喜んで承知したという旨の手紙を使用人に渡すと急ぎ隣の国に届けるようにと言付けたのでした。その時シンディは思いました。隣の国は西の方角に位置するではないかと。これは何かの罠なのではないかと。すると国王は隣国とはもう先祖代々にわたり何百年と交友がある大切な間柄である。そこの国の王子が魔物であるはずがないと。妙な胸騒ぎを覚えたシンディはこのときから7つのエメラルドを肌身はなさず持つようにしておりました。

 そして当日シンディの前に現れたのはたくさんのお付のものを従えた見目麗しい若者、アビエル王子でした。シンディは内心「杞憂に終わったのだろうか」と思ったものの、エメラルドだけは肌身はなさずもっておりました。2人が話しながら噴水のある広場を歩いていたちょうどその時シンディはふと王子の影に異変を感じました。何やら大きな尻尾がついているのです。ふわふわと揺れるそれに、シンディが恐る恐る尋ねると、王子は急に声色を変えて「気づかれてしまっては仕方がない。これはね私の本当の姿なんだよ」というと忽ち大きな大きな狼に変身しました。シンディは悲鳴を上げることも出来ずに咄嗟に首から下げていた袋を胸元から取り出すと口を開けて7つのエメラルドを狼にかざしました。

 「ぐええ。」

 狼は悲鳴を上げるとそのまま倒れてしまいました。シンディが気づくと息絶えておりました。その時です。エメラルドがぱぁと輝いたかと思うと7つが1つに集まって一人の男性の姿、アビエル王子その人になったのです。「これは一体?」シンディが驚きで声を発せられないままでいると王子は「ありがとう」と一言礼を言い、「私は悪い魔女に騙されて長年狼男に姿を変えられていたんだ。本当の私はエメラルドの中に閉じ込められたままで。あなたが開放してくれた。ありがとう。」そしてシンディの唇に軽くキスをしました。「私のお后になって下さらないだろうか」「ええ喜んで」

 それから2人は末永く幸せに暮らしたということです。

 

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