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掌編小説 空飛ぶたいやき

 猫のミャーは思いました。三軒隣りにあるお店、お祖母さんがずっと一人でやってるお店で売られているあれ、魚の形をしたあれは何なのだろうと。人間たちが嬉しそうに買っていくあれは何なのだろうと。魚の形をしてるけど魚じゃない。中に黒っぽいものが入ってる。

 ミャーは夢をみました。魚の形をしたたくさんのあれが空を泳いでいる夢を。一人ひとりの手に舞い落ちてくるそれを男も女もサラリーマンも子供も皆嬉しそうに食べています。ミャーもおそるおそる食べてみました。うえっ。何これ。まずい。うえっ。思わず吐き出してしまいました。大好きなお魚じゃない。

 夢からさめると夕飯の時間になっていました。ミャーの前には大きな大きなホッケが置かれました。「お父さんがね北海道に出張に行ってたからお土産だって。ミャーにも奮発」とはお母さん。ウミャウミャウミヤ。やっぱりこれが一番。ウミャウミャウミャ。げふっ。

 ホッケ、ホッケ、ホッケ、今晩はホッケがたくさん降ってくる夢をみそう。

 

 

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