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【会話劇】ミューズ

「あの日みた夢を覚えてる?甘くしびれるような」

「覚えているよ。僕はあの日からいつもあの夢の続きがみたいと祈りながら眠りにつくのだから」

「とびっきりの美女がでてきてね、僕に優しくいうのさ。『もしも私があなたのものになったらどんなに素敵でしょうね』、と。」

「その願いが叶えられるのなら、僕はなにを引き換えにしてもかまやしない、と思っているのに、のに」

「肝心の夢をみない」

「そう。僕たちは近頃全く彼女の夢をみない」

「見る夢はきまって業火に包まれたまちの夢さ」

「そう。あんな夢ってみたことない。それぐらい強烈な夢。」

「僕たちの女神がみたらひどく悲しむのではないかな」

「そうだね。あれはひどすぎるね。僕たちは彼女を悲しませるわけにはいかない」

「消してしまおうか。いっそのこと。街ごと。」

「いや、そんなことをしたら僕たちは歴史を変えてしまうよ。それはご法度にされていることだよ」

「ああ、僕たちの女神、あなたならこの惨状をどう思われますか?」

「僕たちにできることはなんでしょうか」

その日ひとつの街が火の海と化した。二人の天使のみた予知夢のとおりに。彼らの夢にいまだ彼女は現れていない。遠い国の本当にあったお話。

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