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アステルの奇跡

僕が小惑星だった時のこと

ここは宇宙。
時間という概念がない。
だから、いつからとか、どれほど存在してるのかは分からない。

小惑星帯の中にいて
他の小惑星たちと一緒に浮いていた。

意識がか細い中
そこでいつも見ていたのは

青くて綺麗な惑星
『地球』

何故か、それだけは僕の目に留まり
何か惹きつけられる。

そんなある時
小惑星帯をいつもどうり浮いてたら
ドンッて
凄い衝撃が走った
と思ってたら
体が飛ばされ
『うわあああ!!!』
軌道からずれ
あっという間に
小惑星帯から離れてしまった。
『どうしょ…これからどうなるのかな?』

外宇宙で発生したエネルギー衝撃波の影響で
飛ばれてしまったようでした。

そのまま身を任せ
流れるままに‥‥
火星を通り
月を通り
そのまま地球に向かっているよう

大気圏に突入
『うあああ!』
大気圏での摩擦力で
かなり溶けてしまいました。

目が覚めると
僕は小さな岩になってました。
その姿に、驚きを隠せなかった。
ひとまず周りを見ると
草むらでした。
『ここはどこだろう?』
辺りは緑、緑でいっぱい
上は青かった

初めて見る風景に
不安よりもわくわくの方が大きく
胸を踊らしています
空は青く周りは緑
見る物全て初めてで
興味深々
恐怖も何もありません。

落ちてすぐは衝撃がすごくて
混乱してて分からなかった
けど、少しつづ観察していくと

生き物がいる事に気づき
言葉も分かりはじめ

ここが森で
見えるのは木、山、草、花
そして家

僕が落ちたところは
山の上の方
景色が綺麗で
西洋風の街並みの家が見える

それにここ何年間で
人や動物達の行動も分かってきた。
動物は決まったパターンで行動する事が多い
逆に人間はまちまちですごく興味を持った。
人間と言う生き物は残忍で卑劣と思えば
とてもか弱く、とても繊細で優しいと思う事もある。人それぞれだと僕は思った。

ある時
僕の目の前に一匹の子うさぎが
ぴょんぴょんと通り過ぎた
でも、その時
なんか違和感を覚えた
その姿を、見ていると
違和感が確信に変わった

子うさぎは右足に怪我をおって
痛そうに足を庇って歩いてた

痛そうに歩いていた
『なんて、無力なんだ‥‥』
僕は初めて無力さを味わった

僕は知ってる動物が怪我を負うと
どうなるかを
ここに来てから色々見てたから

子うさぎを目で追ってみてると
子うさぎの後ろから何かがやってくる
その影は子うさぎのすぐ側で止まり
何かをしている様子
良く目を凝らしみると
人間でその人間は女の人だった
女性は子うさぎの様子をみて
すぐに怪我をしているのを分かったようだった。近くに男性もいて
男性も女性の姿を見て何かを察した様だった
二人は子うさぎを抱き抱え何処かへ過ぎ去っていった。

僕はその様子を遠くの方から
見ていたけど
何故かあの人達なら大丈夫かと
安堵した。

それから数日が経った。
あの子うさぎが元気良く僕の目の前を
ぴょんぴょんと過ぎ去って行く
僕は急に飛び出して来た子うさぎに驚いたが、
あの時の子うさぎだと気づいたら
なんだか嬉しい気持ちになった。
子うさぎが来た方向をみると
あの女性と男性が立っていた。
その人達は優しく微笑んで子うさぎを見送ってた。

僕の運命を変える出来事が起きた
その日も僕はそこに居た
違ったのは天気が悪いこと
どんよりしてて曇ってた。
いつ雨が降ってもおかしくない
冷たい風が吹いてた。

どこからか誰が泣いている声が聞こえた
小さい男の声だった。
「えーん。えぇーーん。」
「お‥‥っおかーさん。お‥っとーさん。どーこー?」
泣きながら両親を探しているようです。
『迷子か‥天気が悪いから早く見つかるといいけど』
周り見渡しても誰もいません。
そうこうしているうちに雨が降ってきました
男の子は雨で濡れ始めてきました。
『このままでは‥』
男の子も探し回って体力の限界です
男の子は木の丸太に座り込んでしまいました。
雨宿りできそうなところはなく
このままで男の子が危ない
僕には、ほんの少し力がまだ残っていました。
男の子を助けたい思いで最後に残された力を使い人間の姿に変身。
僕の姿は少年に変わりました。
僕は何も考えず直ぐに男の子の元へと駆けつけました。
男の子の体は冷え切って冷たかった
この時初めて冷たさを知った。
何故だか不安も過った
とりあえず声をかけて安否の確認
するとか細い声で
「お兄ちゃん助けて」と助けを求めて
僕は安堵しその声に応えてあげたいとおもった。
とりあえず僕は記憶を辿って
男の子をおんぶして麓まで行くことに
初めて行く道だけど
何故か不安はなかった。 
男の子が少しでも濡れないよう、アキタブキの葉っぱを傘の代用に
これは通り過ぎる人達が急な雨の時に良く傘の代用にこの葉っぱをさして歩いている。

雨も本格的に降り僕も体力の限界が近づいていた。
そんな時誰かが呼んでいる声がした
「ゆうたーー!ゆうちゃん〜」
「おーい!!どこだ?返事しろー」
男女の声が聞こえてきた。
「ゆうたくーーんー!ゆーうーたーくーん!!」
聞き覚えの声もある
『おーいー誰かいるかー』
その声にだんだん近づく
そして
「あの〜?、、、」
その女性は僕の背中の子をみて
「ゆっゆうた!!」
「良かったぁぁあー」
女性は涙を堪えて僕の背中から降ろし、男の子を抱きしめた。
近くで探していた男性もその様子をみて駆けつけて来た
男の子は目が覚めて
「‥っお、おかあさん‼︎おとうさん、」
泣きながら抱きついてた。
男の子の名前はゆうたっと言って
両親と一緒にハイキングに来てたが
飛んでいたチョウチョに目が行き
そのまま追いかけてきたらはぐれて迷子になったそうだ。
両親は深々と頭を下げてお礼言いそのまま仲良く三人で帰って行った。

聞き覚えがある声の主は
子うさぎの件で見かけた女性と男性の声だった。
実はこの二人は夫婦で名前はまゆみさんとさとしさんだと言う。
二人はこの山の麓で小さな料理屋を経営している。
料理屋に食べに来ていた家族さんの子供が迷子になったと言うので一緒に探してたと経緯を説明してくれた。

僕はもう体が限界だった。男の子も笑顔で手を振り帰って行く姿を見送ると
安堵して気が抜けてその場に倒れかけたところをさとしさんに受け止められそのまま
深い眠りに入っていく。
薄れゆく意識の中暖かい温もりを感じ
なんだか安心感を感じた。

次に目が覚めたのは2日後だった
その間僕は眠り続けてたようだった
人間になった反動の中無理をし過ぎて
2日間も寝ていたようだった。
二人は心配している様だったがお医者さんにも診てもらっていたので起きるのを待ってた。

僕は二人を驚かせない程度で
僕の経緯を説明した。
二人は真剣に聞いてくれた。
ただ聞いて頷き時折質問や励ましてくれた。
話終えると
「当てがないなら一緒に暮らさないか?」とさとしさんが
言ってくれた。
「そうよ!その方がいいわ!アステルくんが嫌じゃなければ!部屋も空いてるし」笑顔ですかさず、まゆみさんが同意してくれた。
こうも言った
「アステルは貴方の名前ね。小惑星の事をアステルって言う呼び名もあるのよ。だから貴方はアステルよ。」
僕は二人の言葉に心を温たためられた。
ただひとこと言った「宜しくお願いします」と、頭を下げた。

僕はこれから起こる事も待ち受けてる事もまだ知らない。
これからがアステルの始まり。

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