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大腸内視鏡検査を受けてみた記録


ケツから血が出た。

時は8月12日、益子でひまわりを見て帰ってきたところであった。美しい益子焼、青空の元広がるひまわり畑、その思い出が便器に滴り落ちる鮮血で塗りつぶされた。
すわ!!月モノなんじゃないかと出血位置を確認したが、完全に肛門です。ありがとうございました。


心当たりはめちゃくちゃあった。
日頃座り続ける生活、プログラマーという職業、趣味のほとんどが座りっぱなし。酒を好む食道楽、おまけに父親は過去大腸がんをやっていた。
脳裏に、Twitterで流れてくる『些細な症状で病院行ったら大病だった件』が走る…………
30代で大病は怖い!!!!
その日のうちに病院を予約し、翌日駆け込んだのであった。


〜触診編〜

大腸なのか?肛門なのか?
どちらにしろお医者様に自分の肛門を晒さなければなるまい。
数えて10年、なんか違和感を抱えながらも億劫で無視し続けてきた。それを、精算する時が来たのだ。
他人様に肛門を晒すなんて恥ずかしい、それが異性ならなおのこと。予約した病院ではレディースデイをやっていたが、鮮血にビビって即日予約したためレディースデイでもなく、お医者様は普通に男性だった。
まぁ、いうてお医者様も毎日他人の尻穴見てるんだからええやろ、と思いつつもいざ行ったら患者は老人ばかりで、30代半ばのわたしは明らかに若かった。
これも、鮮血が出るまで無視し続けた罰なのね…………わたしは全てを受け入れることにした。


しかし上手くできているもので、触診するからには下半身の秘部を全て晒す覚悟もしていたのだが、医者の言う通りにポーズを取っていくと……横になり、尻を少し突き出すことで、効率よく肛門だけを見せることに成功したのだ。
ちょうど、お笑いで出川哲郎やダチョウ倶楽部がやりがちのケツだけ丸出しポーズである。クレヨンしんちゃんのケツだけ星人と言っても良いかもしれない。
いいだろう、患部である肛門は諦めた。だが、ついでに他の秘部まで晒すであろうことが我慢できない!!という人には朗報である。人の体はケツ穴だけ出せるように出来ていたのだ!!


さて、お医者様が言うことには、肛門付近には今は出血の痕も見られないし、気にされてる通り多少は痔の気配もあるがさほどでもない。
徹底的に見たいなら大腸の内視鏡検査をやってみますか?とのことだった。
わたしも生半可な覚悟で他人に肛門を晒したわけではない。こうなったら殲滅戦よ!!!徹底的に可能性を潰してやるわ!!

ってことで内視鏡検査の説明を受ける。受けるのには条件があって、ポリープが見つかった場合小さいものなら切除するのだが、その場合1週間は激しい運動や飲酒、遠出はNGとなる。念のため1週間予定を空けられるようにしておくこと。
そして前日には食事制限がある。それらを守れる日程は……
9月11日ですね……
かくして慌てて駆け込んだくせに、本丸の検査は1ヶ月後となったのだった。


〜内視鏡検査編〜

さて、食事制限がある検査前日、わたしは横浜に居た。
前日は楽しい飲み会があった。それが最後の晩餐になるのかもしれないわね……という気持ちでうどんを啜る。
食事制限は簡単に言うと、野菜の類やイカタコエビなどがダメだった。逆に、主食系やお肉魚はオッケーである。
野菜や果物はジュースでさえダメなのだから驚きである。ヴィーガンは死ぬんじゃないのか。


地元に帰ってきて21時、下剤を飲む。ここから一切の食事は禁止である。水と麦茶で耐える。
起きてても腹が減るから寝る。


そして当日…………起きたら検査までに2時間かけて、2リットルの下剤を飲み干す!!

必死で飲み進めている下剤の図

腸をまっさら綺麗にするためなのだが、内視鏡検査をしたことがあるものは皆、これがなにより辛いと言っていた。フォロワーも言ってたし父も言っていた。趣味趣向の違う老若男女が皆いうのだから、そりゃ辛いのだろう、と覚悟していたが
辛かった…………
他人に肛門見せることなど2リットルのおいしくもない下剤を飲み続けるのに比べたら屁でもない。
味は経口補水液に似ている。ちょっと塩の味がする。そして薬剤が混ざっているから粉っぽい。そのせいなのか腹に溜まるような気がする。
しかし不思議なもので、飲む端にケツから出ていく。尿にならないのである。看護師は、2リットルの下剤を飲み始めたら5回はお手洗いに行ってくださいね、10回行くのが望ましいです、と言っていたがその通りになった。
そして出てくるものは固形物から液体になり、最後には色もなくなった。消化器官がただの管になったような気分だ。わたしは妖怪ホース人間……


病院には父に送ってもらった。看護師曰く、鎮静剤を打つから帰りは車を運転出来る状態じゃないという。鎮静剤など打たれるのもはじめてだ。映画みたいにスンッ……て静かになるのかな……

検査室に通され、専用の服に着替える。これがまた上手く出来ていて、膝丈まであるサウナ施設のムームーみたいなものに、下半身は紙のパンツを履く。ケツの部分に切れ込みが入っているからムームーを捲り上げてケツを突き出すだけで、ケツ肉さえ見せずに肛門のみを医者に見せることが可能である。
患者の目線からはもはや、下半身は露出してないように見えるのだ。患者の羞恥心に配慮した素晴らしい仕組みだといえよう。
感心しながら審査室に入るとそのままストレッチャーにねかせられ、転落防止の金具を上げられ審査器具の前に運ばれた。こんなことしなくても審査器具の前まで歩いて行くが……逃亡防止なのかしら……

さあ、いよいよ鎮静剤のご登場だ。
そんなモンマジで打たれたことないからワクワクである。タバコに憧れる未成年のごとき、背徳感に満ちた期待。映画みたいにフゥン……ッて気が落ちるのかしら!!??それってどんな気分なのかしら!!?逆に興奮してきたぞ!!!
「…………血管が逃げますね……」
医者は冷や汗かいていた。わたしの腕の血管は異常に細く、健康診断では常に採血担当看護師を泣かせてきた。百戦錬磨の採血担当が泣くのだから、内視鏡検査技師にはまさに歯も立たないのは自明だったのかもしれない。
「見せて!」
そこに颯爽とあらわれたのはまさにベテランという風情の中年女性看護師だった。わたしの血管は彼女の腕を前に持ってしても逃げ回っているらしかった。わたしは、アニキサスのような回虫に針を通さなければならない状況を空想した。
それは、難しそうだなぁ……
「やっと入ったわ!」
ベテラン看護師は見事回虫を串刺しにした。いやあ、わたしのほっそい血管がご迷惑をかけて申し訳ない……そう謝っているうちに、横に置いてあった画面がうにょよんと蠢き、謎の肉壁を映し出していた。
「えーこれが小腸の前まで来てて……」

え!!???
内視鏡入ったの!!???

注射針が入らない入らないと苦戦しているうちに、いつの間に内視鏡はスタンバイされていたようだった。鎮静剤のせいなのかどうか分からないが、全く何の感覚もなかった。
フゥン、こんなもんなのね……
処女がそれを喪失した瞬間にも似た手応えのなさ。鎮静剤は全然スンッてならないし、内視鏡はいつのまにか挿入されている。内視鏡検査における官能的なイベントがサラサラと流れていってしまった。内視鏡検査で官能さを期待するな。

だが、生きている自分の内臓を見るって機会も中々ない。エロさで言ったらこっちの方がレベルが高いのではないだろうか!?
と、興奮することもなく画面に映し出されるそれを「焼肉のミノみたいだなあ」と思いながら眺めていた。鎮静剤の効果かもしれない。

検査が終わりに近づく頃には腹がすごい張っていた。これは普通のことのようで医者も「我慢しないでおならしてくださいね。どうしても張るので。お手洗いに行ってジェルをウォシュレットで流してから着替えると良いでしょう」と言う。
では……と思っても出ないのが屁である。結局、お手洗いに行くまで出ることはなかった。言っていた通りジェルが塗られていたがそれも気が付かなかった。
鎮静剤の効果なのかなあ……
実は10分ぐらい時間が飛んでたりする……?


着替えて待合室に戻り、診察室に呼ばれるのを待った。後は内視鏡の映像を見た医者による検査結果を聞くのみである。
いやぁ、なかなか濃い経験をした……大変だったが人生の経験値が増えた気がする。審査結果を聞けば肉体の不安も消えるし良いことづくめだったな……
そう思いながら、診断結果を聞きに診察室に入ると診断担当医がオネェだった。

ごく普通の男性である。ちょっと濃い顔をした男性が
「ん〜〜アナタの腸、とっても綺麗な白色ねぇ〜〜100点満点❤️血が出ちゃった、ってコトだけどぉ、痔も酷くないし、たまたまちょっと、切れちゃっただけだと思うわぁ、安心して💋」
と言うのだった。
鎮静剤を打っていてよかったな、と思った。


しかし、100点満点である!!!
長年密かに悩んでいた肛門や大腸への不安…………それらから解き放たれて身軽な気分だった。今なら自宅まで歩いて帰れそうだ。
そうだ!

カレー食べて帰ろ!!!


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