見出し画像

ドラゲナイ♪は何故モッズコートを着て無線機で歌っているのか

モッズコートが好きです。

 モッズコートよ、お前はどんなものにも合う、キャベツ的存在

 仕事着バリバリなスーツの上はもちろん、私服ふりふりガーリーもOK。ちょっとそこのコンビニまで、パジャマの上に羽織ったって、ジッパーを上げてしまえばあっという間に外に出られる恰好。

 メッセージ性が少ないのも良い。ライダースジャケットは『漢!』っていう主張が強すぎて、なかなか着合わせに悩んでしまうが、モッズコートはなんでも包み込む。
 そしてちょいちょい流行に乗る。たいてい秋冬マストアイテム。どんな世代も違和感なく着られる。きみはいつだって、わたしに寄り添ってくれているのね。

 あのね、2015年の秋口、わたしと職場の女子2人、合計3人がモッズコートで出社してきたのさ。
 もうね、わたしはボソッと『さらば青春の光かよ~』ってつぶやいたんだけど、女子たち総スルー。
 わたし、めげない。これからもユースカルチャーについて語っていくから。


 そんなキャッチーで、世界に溶け込んでいるモッズコートだが、一時期妙にその存在がサブカルじみた時があった。
 それは、この歌が流行った時である。


 鮮やかなカーキ色、真っ白なファーがついたコートで、無線機で歌う彼の姿はお茶の間の目線を一瞬で奪った。

 そしてドラゴンナイト、という造語とどう聞いても『ドラゲナイ』としか聞こえない発音は、日常生活におけるちょっとした刺激に最適だった。
 その上、度重なるボーカルの過激な発言。お茶の間騒然。ネットは炎上。
 鮮やかなカーキ色に真っ白なファーがついたコート……モッズコートはあっという間に彼らの象徴になったのである。


 だいたい、なんでモッズコートを着てドラゲナイ言っているのだろうか?
 それは、歌の歌詞を見ればわかる通り、『Dragon Night』は戦争の終結を歌ったものなのだけど、モッズコートはもともと、軍用コートだったのだ。

 正式名称『M-51』……いいや、ドラゲナイで着ているコートの形状は『M-65』だろうか。

『M-51』というのはコレ。青島刑事が着ているコート。なんか、こう、デカい。あと基本的にはファーはない。一式そろえてくっつけることはできるそうだけど。


 『M-65』は51の後継として出たもので、ピッタリしてる。ちょっとスマート。

 うーん、軍用コートを着て、無線機で歌っているのなら、まさに戦争終結の歌のための演出として最高ですよね。
 でも、なんで軍用コートなのに、『モッズコート』って呼ばれているのか?


それは、モッズたちが自慢のスーツが汚れるのを嫌って、大量に出回っていたデッドストック品を羽織ったのがはじまり。

 モッズというのは輝かしい60年代英国、好景気とともに開放された若者たちの姿のことだ。その時の英国は儲かってて、若者はもう、家庭のために働かなくてもよくなった。働いて得たお金を自由に使えたのである。

 やがて、イタリアン・コンチネンタル・スタイルを真似たタイトで洒落たスーツが流行った。初期こそ馬鹿にされてたけれど、若者がお金を落とすと知れば、巨大なマーケットが出来上がった。
 うーん、なんかこの構図、我々ヲタクを取り巻く状況に似てると思いませんか?

 でもね、ヲタク文化は数えれば10年単位で続いているけど(そう、やがて『大人』たちのマーケットを巻き込んで、クールジャパンとかいうものに)モッズは残念ながら5年の命。
 好景気が終わっちまって、あっという間に若者の自由は廃れてしまったのさ。圧倒的な消費主義者、楽しみつくした彼らだけれど、だからこそ『モッズ』と名前がつくものばかり残って、その内容は世代じゃなければ知りえなくなった。
 だって彼らは消費するだけだったのだから。

 だから、モッズコートと呼ばれている軍用コートは、本当はモッズじゃない。それはあくまで包み紙、モッズたちが自慢していたのは中身のスーツ。
 しかし、なんていう皮肉か? スーツに軍用コート、その姿こそがカッコよかった。そしてただの包み紙であったからこそ、モッズコートは今でも、どんなものも包んでしまう。
 なんにでも合う、キャベツみたいにね。


 そんなわけで、ドラゲナイは戦争の終わりの歌だからこそ軍用コートを着ているんだけど、そこでなんでモッズコートなのだろう。
 軍服だって、兵士服でだって良いはずだ。

 それは、きっとわかっている。モッズコートと名前のついた『M-51』およびその後継コートは、軍という意味合いそれ以上に、オシャレに命をかけたモッズの防御服であったことを、きっとわかっているんだろう。
 だからこそ、歌いながら着る軍服ならば、(しかもそれが戦争の終わりを喜ぶのなら)モッズコート以外にありえないのだ。

 なんでそんなことを確信したのかというと、それは『ANTI-HERO』のジャケをたまたま見たら、『時計仕掛けのオレンジ』だったから。

いや……こいつら、絶対モッズコートの意味しってるでしょ!!

 あ、ちなみに彼らのインタビューとかを読めば真相がわかるのでしょうけど、わたしは一切読んでいないので、ここまでのことは全部想像です。
 もしほんとに彼らのコートがモッズ由来だったら教えてください(他力本願)




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?