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【植栽家の日常】20230821 いろいろな教養がデザインのセンスに繋がるのだなという話

先日、建築家の武田清明さんとお話ししていて、「太田さんはピアノや生け花なども勉強してますが、それらって庭のデザインにも何かしら繋がるところがありますか?」と訊かれました。

ピアノも生け花も私自身が好きでやっている趣味という側面も大きいですが、どちらも私が植栽を考えるときの思考や能力にいい影響をもたらしていると思います。

その逆もまたありで、植栽家としての経験や美意識がピアノにも生け花にも役立っているとも思います。

もっというならばそれ以外にも、普段からしている読書や大学でも勉強し今でも好きな建築のこととか、園芸や庭に直接関係ない「私が知っている、興味がある」事柄の全てが私の園芸観や植栽のデザインセンスにつながっていると思います。

表面的には別個の仕事や趣味のように見えますが、それらが私の脳内で融合して新しい何かを考えるときの原料になっているわけですよね。誰にとってもクリエイティビティとはそういうものだと思いますし、その原料の質というのは結果に差が出る重要なポイントだとも思います。

植栽デザインでは、植物や植栽についての直接の知識も高いレベルで必要なのはもちろんなのですが、それだけだと「必須栄養素」を押さえているだけで、「旨みとか微量栄養素」が足りない、つまり感動や心を豊かにする要素が足りない状態に陥りやすいように思うんですね。

植物のことだけを熟知しているだけでは、相手の心に届く植栽ができるとは限らない。私個人の意見としては、植栽家が「植物以外の何を知っているか」で創り出される植栽のデザインも大きく変わるというか、そこで差がつくと思います。

庭って必要な量の植物があればたしかにことは足りるんです。植栽のデザインを審美的なものと捉えるならば、その審美な部分っていうのは突き詰めていえば必要以上のことであって、「なくても生きていけるもの」なんですよね。

にもかかわらず、いつの世も人は庭や植栽に美や感動を求めます。
つまり美や感動は「なくても生きていけるけれども、それがなくては生きている実感を味わえないもの」といえるではないでしょうか。

人生の「調味」みたいなものですね。味付けがなければ食べた気がしないし、平凡な味付けならば感動はしない。

というわけで、何がいいたいかというと、人の心に届き心を動かす植栽を考えるためには、美しいものを選び取る、美しいバランスを創り出す、新しいストーリーや組み合わせを発想するといった能力やその土台となる教養が幅広く必要ということなんです。

そういった能力はしばしば「センス」と呼ばれますが、それは純粋に感覚からくるものでは決してなくて、実はその人の教養と経験の融合から導き出されるものなのだと思います。

ちなみに私はピアノを勉強していますが、音楽って植栽のデザインととても似ている部分があります。

まず、どちらも「時間の流れの中で表現される審美的行為である」ということ。
時間が止まった絵のようなものではなくて、時間の経過の中でさまざまに展開していくシーンを表現していく。これから未来に起こることをシュミレーションしてデザインしていくということですね。

そして言語のような明確な意味を持たない音や植物といった抽象度の高い要素を用いて「心に届く何かしらの訴えかけ」が伝わるように表現することが重要であるということですね。

ピアノの演奏ではその音楽の表現にふさわしい音色や音のバランスについて先生からも細かく指導されますが、それってすごく微妙な差異の中からより良いものを吟味し尽くすような作業の連続なんですよね。植栽の設計における思考過程もよく似ています。

もちろん音をよく吟味しないピアノ弾きも植物をよく吟味しないガーデンデザイナーもいますのでその辺も共通ですね。

『言葉がなくなったとき音楽が始まる』

クロード・ドビュッシー



一方、生花は時間が止まったシーン(厳密にいうと生け花も常に状態が変化していますが)の空間的バランスの審美術とそのシーンでどのような思想やドラマを描けるかといった芸術行為といえますね。

しかも伝統的な型のフォーマットを基本もありつつ、コンテンポラリーだったり独創的な表現の実験も常に行われていて、新しい美の概念が現在進行形で追加されています。

生け花のお稽古には、仕事の契約のように重い責任やしがらみはなく、植物の美しさ・植物の組み合わせやバランスの美しさを自由に何度も試したり集中して熟考・吟味したりできます。

私にとっては生け花は植栽のデザインにもかなり直結したイメージトレーニングにもなっていますし、実際の植栽では成立しえないファンタジックな植物表現ができる学びと楽しみの場とも感じています。

『花は美しいけれど、いけばなが美しいとは限らない。
花は、いけたら、花ではなくなるのだ。いけたら、花は人になるのだ。
それだから、おもしろいし、むずかしいのだ。』

勅使河原蒼風「花伝書」


というわけで、植物や植栽についての勉強もたくさんしますが、それ以外の教養が植栽づくりには不要なんてことは全くなくて、むしろ深みのあるよい植栽を創りたいならば、その人らしいセレクトの幅広い教養があった方が良いという話でした。

『いわば、「センス」とは歴史的教養に裏打ちされた俯瞰的理解の上に成り立つ感性に他なりません。』

高城剛「白本 五」


以下、今日の日記。
今日は定休日でしたが、朝はいつも通りの時間(5:30)に起きて、毎日ルーティンのチャコールクレンズをしての瞑想タイム、そしてピアノ朝練。

7:00 休日の朝食定番、ご近所スタバでドリップコーヒーのベンティサイズを。

帰宅して、午前は連載記事を書き上げてホッとひと息😅

午後は、
私の「使っていない」所有マンションの売却の件で不動産屋さんと打ち合わせ。
私が以前、母のために買ったマンションなのですが、間取り的に母には狭くて住みにくい(そんなことはないのですが年寄りのわがまま)とのことで、母にはより広いマンションを借りてあげて、母にプレゼントで買ったこのマンションは手放すことにしました。

かなりミニマルでキレイなお部屋なんですよ😊

1DKの間取りですが、内装もキレイにリフォーム済みで、最寄りのJR新前橋駅までも徒歩圏内、緑豊かな公園に隣接していて、2階のお部屋なのですが、目の前に非常階段があるので、エレベーターを使わないでササっと身軽に部屋にアクセスできてとても便利な部屋です。

中古で購入した物件ですが、ほぼ買ったときのままの未使用に近い状態で再び売却ということで、なんだか勿体ないという感じなんですが、実際、私は使わない部屋なので売却するのが良い決断かなと。

ミニマリスト的に生活したい単身者の方や、自宅以外に小さなオフィスを借りて職住分離したい方にはちょうどいい物件かと思います(ちなみにかなりお手頃価格です)。

もしご興味ある方いましたらコメント欄でお知らせください。

打ち合わせの後は、ちょっとたまっていた外仕事をこなしてからピアノ練習。
久しぶりにレパートリーメンテでラヴェルのソナチネも掘り起こしてみました。
それなりに暗譜は薄れがちでしたが、あまり苦はなく復活できそうなレベル。
あと、以前よりも音色豊かに弾けるようになっているように思いました。

明日はまた早朝の電車に乗って鎌倉出張です。往復の電車で読む本とか準備しておこうっと。



【今日のピアノ練習覚え書き】

ウォーミングアップ

左右に広がって閉じるスケール ♯0から3個までの8種の長短調

ツェルニー 30番-14、15
ツェルニー苦手なので、時間多めに割いて頑張りました。

初見練習

【パスカル・ヒメノ 演奏会用リズムエチュード第1集5番 「タンゴ」 】

今出掛け中のファンキー、ボレロの次にこのタンゴをやりたくて軽い事前譜読みも兼ねて最初の3~5ページを読みました。

【ドビュッシー グラナダの夕べ】

今日は休日でいつもより時間があるのでコンクール1次で弾く予定のグラナダの夕べも含めて全3曲をおさらいしました。

グラナダの夕べは、最近、福間洸太郎さんによるギターを模したような表現や特徴的な歯切れのよいハバネラのリズムの刻み方が気になっていて、参考によく聴いています。


【スクリャービン エチュードop.2-1】

コンクールの2次で弾く予定。暗譜で本気通しを数回。2次では小品3曲弾く予定なので、その演奏順での全曲通しも。

【コンクールの新曲2曲 モンポウ「前奏曲第7番」、 ドビュッシー「燃える炭火に照らされた夕べ」】


今まで二次で弾く新曲は明かしていなかったのですが、note開始1周年記念に昨日明かしちゃいました。

前出のスクリャービンをメインに、大人っぽく、多彩で、かつまとまりのあるプログラムにしたくて熟慮して選曲しました。

モンポウの「前奏曲 第7番」は、モンポウというよりはメシアンのような現代っぽさが神秘的な1曲です。


ドビュッシーの「燃える炭火に照らされた夕べ」は2001年に発見された遺作で、ドビュッシーが亡くなる前年の1917年に作曲されたとされ、史実的にはドビュッシーが生前最後に書いた作品です。


前奏曲集第1巻「夕べの空気に漂う音と香り」や第2巻「カノープ」などの断片的な引用と思われるフレーズもあり、あまり知られていないけれども味わいの深い曲だなと思っています。

決して暗くはないくれど人の魂が昇天するような、ドビュッシーなりのレクイエム感が漂う小品ですね。


【ラフマニノフ 楽興の時 第3、4番】

3番の暗譜通しと、4番はゆっくりメトロノームで苦手箇所も含めて全体のテンポ感を整える練習。暗譜が難しかった中間部も覚えられていない範囲が狭まってきて、徐々に弾けるようになってきている手応えを感じています。

【パスカル・ヒメノ 演奏会用リズムエチュード
1-1 ファンキー、1-3 ボレロ】

ファンキーはあくまで自分比で結構弾けるようになってきたので、味付けをしながら全体を通す練習。前半部分の暗譜も踏まえた練習

ボレロは、超絶ゆっくりのテンポで間違えないように通す練習。

【ベートーヴェン 
創作主題による32の変奏曲】

今日はテーマから第11変奏までと第32変奏を、1変奏ずつかなり時間をかけてちゃんと弾けるように精密練習しました。


【ショパン バラード第2番 op.38】

今日は時間が足らずお休み。

【スクリャービン エチュードop.8-11】

一回最後まで譜読みはできたものの、私的には楽譜が入り組んでいてかなりややこしく感じる曲なので、引き続き最初から超絶ゆっくり楽譜ガン見で弾く練習。


【バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第1巻22番 変ロ短調 BWV867】

時間が足らず、この曲は今日はお休み。





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