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【植栽家の日常】20231106 ナチュラリスティックプランティング関連の参考書まとめや雑観など


【ピート・アウドルフ氏の著作、待望の日本版が出ました】

私も、私自身の20年以上の園芸人生でずっとその動向に注目し続けてきた、もっとも尊敬する植栽家のひと組、ピート・アウドルフ氏とその同志ヘンク・ヘリッツェン氏による名著「Planting The Natural garden (初版時の原題 Dream Plants)」の
待望の日本語版が出版されました。

ピート氏関連の書籍は、手に入るものはほぼ全て洋書で持っていますが、やはり母国語で読めるというのはとてもありがたいことなので早速購入。

今日は定休日だし、ちょうどピアノの本番もひとつ終えたところなので、午前中はゆっくり植栽読書タイムにしました。


【「ナチュラリスティック・プランティング」というムーブメント】

ここ数年、園芸・ランドスケープの分野で注目されている、「ナチュラリスティック・プランティング」と呼ばれる植栽法。

主に冬季落葉性の宿根草を組み合わせて、野原のようでありながら、花や葉やグラスの穂や花後のシードヘッドをデザイン要素として組み合わせ、季節の花や穂の造形構成の移り変わりやドライになった冬場の枯れ姿までを美的な鑑賞対象とする植栽手法で、オランダの植栽家 ピート・アウドルフ氏の一連の植栽実例やそれを紹する著作や書籍などから人気が広がり、今や世界的なトレンドとなっている植栽法といえるでしょう。

ところで、「ナチュラリスティック・プランティング」という言葉はピート氏が名付けたものではなく、宿根草を積極的にデザインの素材としつつ自然植生的にも持続する植栽の考え方に対して、後からメディアサイドがつけたネーミングです。

私が知る限りではナイジェル・ダネット氏の著作「Naturalistic Planting Design」(2019)あたりが先駆でしょうか。

とはいえ、「ナチュラリスティック・プランティング」という言葉、この社会現象を表現するにはとてもキャッチーかつ意味と呼称がマッチしたネーミングだと思います。

ピート氏の作品およびその影響を受けたと思われる植栽手法については、これまでも「ダッチウェーブ」とか「ニューペレニアルムーブメント」などとも呼ばれてきた経緯があります。

が、ピート氏とその植栽ライフを追ったドキュメンタリー映画「five seasons」の中で、彼は以下のように述べています。

「いつも少し困惑するよ
人々が 『ダッチウェーブ』 『ニューペレニアル ムーブメント』
『ニュージャーマン ムーブメント』 という言葉を 私に使うたび。

自分が 良いと思ったことをやっているだけさ  

植物は 私がつくった舞台にあげる 役者のようなもの
自分は ただ舞台にあげるだけ あとは植物が演じていく」

映画「five seasons」より

つまり、ピート氏が個人的な表現としてやっていた落葉性宿根草を中心とした植栽の作風がまずあり、その影響を受けた植栽のトレンドに対して2023年時点では「ナチュラリスティック・プランティング」という呼び方が主に定着しているということですね。

で、映画「five seasons」の字幕版の公開や、今回の「Dream Plants」日本語版の出版などを通して、日本人にとってもピート氏の植栽手法をより身近により分かりやすく知ることができるようになりました。

これはこれで文化的な普及としてはとても良いことだと思います。

が、一方で、もとはピート氏独自の美的表現だった植栽手法が、パッケージ化されたメソッドやマニュアルのような「誰でも使える便利な方法」として安易に解釈され、ムーブメントあるいはトレンドとして消費されていくような流れには、私は内心かなり違和感も感じています。

彼が自身の庭の植栽について「これは自然の風景ではない。‘自然の中で見たい風景’だ」というように、ピート氏の植栽自体は、自然の再現ではなく、儚さと移ろいに満ちた自然植生の美しさへの「憧憬と幻想」を体現したものです。

つまりピート氏がヨーロッパやアメリカで実現している植栽は、現地の気候に合わせて考えられた「新しい植生」なんですよね。
なので、降水量が多く夏の高温多湿環境が厳しい日本の気候下では、そのままマネをすることはできません(し、安易な気持ちで模倣するべきではない)。

ピート氏も各現場で個別具体的に、とても深く考えていると思いますが、「その土地で持続可能な植生を考える」ことが重要だと思うし、日本に住む私たちは日本の気候環境に合う植物を組み合わせて持続可能な宿根草植栽を考えることでピート氏のマインドを継ぐことができると私は思うんですね。

ピート氏の植栽写真をマネするだけだと、それは「自分が作った舞台に役者を上げる」ことにもならないし、日本の気候環境では、多くの場合「Un-naturalistic」な植栽になりやすいと思いますね。

「ナチュラリスティック(自然主義者的)・プランティング」、字義のように捉えるならば、今日の日本の気候で持続的に成長sる「自然の中で見たい新しい植栽風景」を考えることなのかなと常々思っています。

ピート氏を尊敬するからこそ、影響を受けつつもマネはしないで自分なりの回答を出したい、と。

いろいろ個人的な雑観を書き連ねてしまいましたが、まずはインプットとして「ナチュラリスティック・プランティング」的な植栽について多く知ることは大切だなと思いますので、私も参考にしてきた関連書籍をいくつか紹介したいと思います。

【ナチュラリスティック・プランティング関連 太田敦雄オススメ書籍 前編】

まず、ピート・アウドルフ氏の作品集や著作から3冊紹介します。
ピート氏関連書以外でナチュラリスティック・プランティングに対しての視野を広げてくれるようなオススメの参考書(5冊)は、本記事の一番最後で紹介します。

2023年現在、最新に近いピート氏の作品集です。庭園だけでなく氏の美しい植栽図ドローイングも多く収録した過去最大規模のアンソロジー。

オランダ フメロのピート氏自庭からニューヨークのハイライン、ドイツのヴィトラ・キャンパス、ハウザー&ワースのサマーセットなどの代表作や有名庭園から、あまり知られていない庭園までが紹介されています。

特に、2010頃以降のピート氏の植栽図は、アート作品ともいえるくらいドローイング自体が美しいですし、本書では植栽図と同じ画角で実作の写真が掲載されていたり、竣工時と植栽が育って真に完成した状態の比較なども掲載されていて、思考から完成までのデザインプロセスもなぞることができて、たいへん内容の濃い一冊です。

どちらというと本書は植栽デザイン寄りの内容で個別の植物の図鑑的要素は薄めです。


ピート氏が植栽にしばしば用いるボキャブラリーとしての植物図鑑的な役割としては、上記の「Dream Plants for the Natural Garden」が内容充実しています。
とはいえ、今回日本語版が発売された「オールシーズン美しい庭」の原著でありますので、日本語版で間に合うっちゃー間に合いますが、洋書の方が版が大きいので写真集としての見応えは洋書の方がよいかもですね。


いわゆる「オーナメンタルグラス」を用いたガーデニングの先駆的名著です。この本で表現された世界観が2023年現在のナチュラリスティック・プランティングの源流と思いますので、そういう意味でいうと20年以上を経て日本でのマジョリティトレンドになっているということですね。


【今日のピアノ練習覚え書き】

【ウォーミングアップ】
スケール シャープ系全調
ツェルニー 30番 25、26番


【パスカル・ヒメノ 演奏会用リズムエチュード 1-1 ファンキー、1-3 ボレロ】

この2曲は2023年内に一応の仕上げまで持っていきたいと思っていて、2曲とも時間を割いて丁寧に練習しました。

【ベートーヴェン 創作主題による32の変奏曲】

第18〜32変奏を弾きました。

【ショパン バラード第2番 op.38】

この曲もこれまであまり手が付けられなかったので、本腰入れなきゃなと思い、
今日はじっくり譜面をよく見ながらゆっくり最後まで通しました。

【スクリャービン エチュードop.2-1】

観客的にどのように聴こえるかも確認したくて、攻めた舞台衣装も着てみて録画してみました。

太田 敦雄 on Instagram: "#休日の過ごし方🤗✨ #スクリャービンエチュードop2-1 の仕上げ練習動画です(まだミスあるけど)😊 今日の気分で舞台仕様の衣装で弾いてみました。 この曲は、2年前にかなり暗譜に苦労しながら1回仕上げた曲です。今回はより音楽的な表現を目指して、2回目の仕上げに向けて頑張っております😅 自分比完成度としては90%くらいかなと思いますが、それなりに自分らしい表現形態になってきたかなと思います🤗✨ より良い演奏ができるように引き続き精進いたします😊✨✨ ・ #スクリャービン #スクリャービンエチュード #scriabin #scriabinetude #インスタピアノ同好会会員番号77番 #ipdjp #インスタピアノ同好会 #大人ピアノ #ピアノ練習 #pianolove #pianostagram #instapiano #pianocover #pianoplayer #piano #pianopractice #趣味のピアノ #ピアノ #ピアノ演奏 #ピアノ練習記録 #太田敦雄 ・ #大人のピアノ #インスタピアノ同好会会員番号77番 #太田敦雄" 61 likes, 3 comments - acidnature0220 on November 6, 2023: "# www.instagram.com


【新曲の小品3曲 モンポウ「前奏曲第7番」、 ドビュッシー「燃える炭火に照らされた夕べ」、 ファリャ「ドビュッシーの墓に捧げる讃歌」】
モンポウの「前奏曲 第7番」は、モンポウというよりはメシアンのような現代っぽさが神秘的な1曲です。

ほぼ弾けるようになってきているので、超絶ゆっくり弾きながら音色などを確かめつつ、暗譜も進めています。

ドビュッシーの「燃える炭火に照らされた夕べ」は、2001年に発見された遺作で、ドビュッシーが亡くなる前年の1917年に作曲されたとされ、史実的にはドビュッシーが生前最後に書いた作品です。

この曲も未完成ながら、スクリャービン→モンポウからの流れでプログラムとして弾いてもまとまりある感じにしたいと思っています。

単体で弾くというよりは、このセットでひとつの世界観を作りたいので、進捗としては順調かなと思います。

この曲は技術的に難しいということはありませんが、輪郭をぼかしたような雰囲気の中に、平坦にならずにいろんなシーンや像を描き出せるかが肝心なところで、この曲の雰囲気を魅力的に表現しながら演奏するのはとても繊細な味付けが必要で難しいと思います。

前奏曲集第1巻「夕べの空気に漂う音と香り」や第2巻「カノープ」などの断片的な引用と思われるフレーズもあり、あまり知られていないけれども味わいの深い曲だなと思っています。

決して暗くはないくれど人の魂が昇天するような、ドビュッシーなりのレクイエム感が漂う小品ですね。

ファリァの「ドビュッシーの墓に捧げる讃歌」は、もともとギターのために書かれた曲ですが、作曲者自身によるピアノ版があり、その版を弾きます。
この曲のラストでは、私がコンクール1次予選で弾いたドビュッシー「グラナダの夕べ」のラストのフレーズが登場するんですよ。

本コンクールでは、1次と2次も同じ先生が何人か重複で審査する場合があるので、1次2次を通して、ドビュッシーのグラナダで始まりドビュッシーの墓の捧げたグラナダで終わるプログラムを楽しんでいただけると嬉しいかなと。

この曲も練習と同時に暗譜を進めていて、1小節ずつ細かく練習しています。

【ラフマニノフ 楽興の時 第3、4番】

昨日のピティナステップで第3番を激・本気で弾いて出し切った感があり、今日はやや燃え尽き状態で、リフレッシュ休暇。


【ドビュッシー 版画より「塔」】



次の舞台プログラムは
「塔」+「スクリャービン op.2-1」なので
このセットで衣装も着て仮本番通しをしました。


【初見練習 スクリャービン エチュード op.8-5】

たいへん難しい曲なのですが、とても美しくて、最近「ぜひ弾いてみたいなー」と思っている曲です。
4ページの曲ですが最初からラストまで読みました。




【ナチュラリスティック・プランティング関連 太田敦雄オススメ書籍 後編】

前編のピート・アウドルフ関連書籍に続き、ピート氏以外の植栽家の視座によるナチュラリスティックな植栽観を学べる参考書を、今回は5冊ご紹介します。

全世界的に「ほぼピート氏のまんま」なコピー植栽が多く見られるようになっているので、ピート風一辺倒ではなく、いろいろな植栽観を取り込んで自分独自の視座を得るのに役立つと思います。

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