アーティストによるNFTの新しい解釈MetaFair#1 に参加してきました(前編)

こんにちは! アクセンチュア芸術部です。2022/03/11~3/13にソノ アイダ@新有楽町ビルで開催されたMeta Fair#1に参加しましたので、レポートします。

まず、本展覧会はマーケットツールとしてのNFTではなく、あくまで表現媒体としてのNFTを追及するという点で非常にユニークなものでした。展示されている作品も、「NFT」によってどのようなアートが実現可能なのか、一体何がNFTアートとなりうるのか、という本質に迫るものばかりで、わたし自身ずっと目から鱗が落ちっぱなしでした。

また、最終日の3/13には「ART × TECHNOLOGY × BUSINESSS」をテーマに、アーティストの皆様とアクセンチュア山根氏、佐藤守氏でのトークイベントが開催されました。各参加者の異なる思考・観点が予想外の相乗効果を生み、とても刺激的なものとなっていました(個人的には登壇者の方々の博学さに終始圧倒されていました…)。

このイベントの様子はYouTubeにアーカイブされているので是非ご視聴ください。


【展示作品紹介】

本展覧会の作品はどれも本当に素敵だったのですが、わたしが特に気になった作品を3つだけピックアップして紹介します。

①    失題(東城信之介 2022)

「その瞬間に突き付けられる問い」

銅で出来た片手程の大きさの半球にQRコードが書き込まれた作品「失題」は、個人的に今回出品された作品の中でも一際異才を放っていました。

一見すると非常に物質的かつソリッドなこの作品のポイントは、上部のQRコードが錆と顔料で刻まれている点にあります。というのも、時間経過とともにQRコードが腐食し読み込めなくなる(=つまり作品のNFTにアクセスできなくなる)という非常にユニークな仕掛けが組み込まれているのです。

本作品に対する作者の東城信之介さんのコメントも非常に印象的でした。

いつかQRコードが読めなくなった瞬間にふと気づくのではないかと思います。自分が結局「物質的な作品」と「そのNFT」のどちらに価値を見出していたのかという点に

個人的には「錆びるNFT」というコンセプトはもちろん、
物理作品:経年劣化 ⇔ NFT:半永続的に持続
という漠然としたイメージを完全に逆転させて来ているところもすごく面白いと思いました。

NFTが失われた瞬間に突き付けられる「問」とそれに対する「自身の答え」、もしかしたらそれこそが本作品の最も大きな価値なのかもしれません。(ちなみに本作品、会期早々にSOLDOUTとなったようです)

図1;失題(東城信之介 2022)

②    風景の発見/未見の風景(三野新 2022)

「チェックが入ったものが購入となりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。」

本作品は会場に展示された風景写真のNFTを来場者に販売するものです。こう書くと何の変哲も無い作品のように思えますが、実はNFTが発行されるのは写真それ自体ではなく、それを説明した一連の文章(とその編集)である点が非常にユニークな作品です。

具体的な流れは以下の通り。

  1.  作品を選ぶ

  2. 作品を表現した文章を読む

  3. 2の文章群から3つ以上を選択する(チェックを入れる)
    ※選択した文章が増えるほど、作品の価格が上がる

  4. 3の文章がNFTとなる。なお、作品名の冒頭には購入者の名前が付与される (例)三野新の風景の発見

作者と購入者の共同作業によって作品の価値を決まっていく点、そして物理的な作品それ自体ではなく、購入者が作品に感じた「印象」をNFTにしてしまった点は「そんなものもNFTにできるのか!」とまさに目から鱗でした。

ちなみに、NFTを買うと物理的な写真もセットでついてくるのですが、選んだ文章の数によって受け取る写真の解像度が変わる点もウィットに富んでおりとても面白かったです。

図2:風景の発見/未見の風景(三野新 2022)
図3;作品注文書(冒頭の一文は注文書の序文より引用)

③    The Laughing Man #1, #2(松田将英 2022)

「泣き笑いなのか、それとも笑い泣きなのか」

恐らくほとんどの方が知っている超使い勝手が良い「あの顔文字」を松田将英さん(以下、松田さん)はNFTアートへと昇華させました。この顔文字は実は世界で最もポピュラーなものであり、世界中でやり取りされる顔文字の実に5%以上がこの顔文字なのだそうです。

一方でこの顔、見るほどにどんな気持ちなのか分からなくなって来ませんか? 泣いているのか笑っているのか、あきれているのか皮肉っているのか、考えるほどに見方が変わってくる気がします(ちなみにわたしは立体になった本作品を見たとき、なんとなく能面を思い出しました)。

作者の松田さん曰く、

そのような多面性・匿名性も含めて、この顔はいわば「現代を象徴する顔」である。そのような現代(web2.0)の象徴をweb3.0の象徴であるNFTに持ち込むことに面白さを感じた


普段見慣れたものを新たな観点から見ることで、こんなにも新たな発見があるのだと、驚きと感動を覚えた作品でした。

図4;The Laughing Man #1, #2(松田将英 2022)

本作<Black>は富の再分配をテーマの一つに掲げており、初期の購入者にはリセール時に以下のリターンが入ります。これは、「価値がまだ定まっていない作品を購入する」行為を尊重したい、という松田さんの思いから。

・1人目;2%
・2~4人目;1%

他作品もNFTという技術を表現や解釈へ落とし込む、アーティストそれぞれの創造的な視点が多数盛り込まれており、興味深いものばかりでした。
来年以降も継続して開催される予定とのことでしたので、NFTについて理解を深め、また鑑賞したいと思います。

(後編:対談レポートに続く)

記事作成者:芸術部 戸田貴裕