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理想のキッチン探し73一休み

 9月10日、私たちは以前も出ていたはずの成城のマンションへ内見に行こうとしていました。このエリアに行くたびに声をかけていた友人に、内見後にランチの約束を取りつけて。ちょっと前に、75平方メートルと狭めだけど間取りがいい千歳船橋は、決まったとして断念。一緒に見るつもりだった成城の部屋は大丈夫、だったはずなんですが、身支度を済ませてさあ家を出よう、とした瞬間に、夫にキャンセルの連絡が……。
 家賃的にはギリギリで難しいけど、最近すっかり煮詰まっているから、この部屋を最後にいったん終了しよう、と話し合っていたところでした。このnoteの連載は友人知人も多く読んでいて、最近会う人ごとに心配されます。でも楽しみなので、続けて欲しいとも言われますが……。で、先日も「今はタイミングが悪いんだよ!世の中はどんどん変わるし、ほら、コロナなんて起こるなんて思ってなかったじゃない!?」と励まされたところでした。
 そのマンションは実は割高で、キッチンも狭めなのが気になっていました。ある意味ホッとした私たちは、「じゃあランチに遊びに行こう」と考えることにしたのです。友人はおすすめのイタリアンを予約していてくれ、久々に彼女の夫さんもご一緒です。ダブルデート!
 実際、前回までのレポートをお読みになってきた方はおわかりかと思いますが、かなり私たちは煮詰まっていました。毎日、とまでは言いませんが、連日の話し合いもしくはケンカ。物件情報を見てはダメ出しする項目を見つけ出す私。観に行ってある程度条件をクリアした物件も、今一つ乗り気になれない。
 何しろ、騒音が予想されること、いずれ取り壊すことを除けば、今の部屋の条件はかなりいいのです。窓ガラスが薄い、敷地があまり整っていない、移動中にひんぱんに開かずの踏切にイライラさせられる、といった問題はあります。でも、内見段階で分かったのですが、家具置き場がしっかり設計されていること、キッチンの回遊動線がいいこと、あと最近分かったのですが、なんとキッチンは5畳半もあり、夫の仕事部屋より広い。駅からも割と近いし、自転車でしょっちゅう中央線の町へ遊びに行けます。最近人手不足でアテにしていたカフェの一つがしまったままですが、それでもいくつかカフェの選択肢があります。避暑地みたいなガーデンカフェもあります。中央線の町も、そのほかの自転車で行けるエリアにも、好みの書店もあります。  
 いつも私たちは、内見から帰ってくると「こっちのほうがいいよな」と思うことになります。

時期が悪い理由

 時期が悪いのも確かです。何しろここ何年も、不動産価格が上昇している影響を賃貸住宅も受けました。2年前に引っ越してきたときと比べても、近辺に出る新築マンションの相場は1.5倍ぐらい上がっています。通常なら家を買う人も賃貸にしている、最近はコロナ禍で郊外に引っ越した人が、リモートワークが減って都内に戻ってきているなどの理由もあって、ただでさえ相当少ない広めの部屋が奪い合いになっているという問題もあります。
 あと6万円余分に家賃を払えば、良質な設備で広くて便利な町の物件が借りられます。そんなお金、払えません。
 しかし、引っ越したかったのは、工事が始まる事、夫が60歳になってしまう前に長く住む場所を決めたかったからです。ところが工事は、こちらも人手不足で施工業者が決まらないまま予定を2カ月以上過ぎてしまいました。その状態も、危機感を薄める要因の一つです。
 私たちがまだ引っ越したい気持ちになりきっていないことは、数は少ないがいくつかの可能性がある物件を見送ったことから見えてきます。特に引っ越しを切実に考えていた私ですら、クオリティ・オブ・ライフが確実に落ちる引っ越しを、1週間も数十万もかけて行うエネルギーがなくなってきました。それどころか、だんだん性格が悪くなっていきます。
 何しろ、だんだんみんなは住まいで悩んでいなくていいなあ、持ち家でいいなあ、などと考え始め、フェイスブックの投稿を見るだけでも、いろいろな人生の悩みを抱えている人たちがいるのは明らかなのに、自分だけが不幸を背負った気分になってくる。明らかに、夫に対しては言葉にとげが入ってきました。そろそろ友達にも小出ししているんじゃないでしょうか。
 仕事は異常に滞っている一部を除けば、だいたい順調です。10年前には考えられなかったポジションに私は登りました。健康状態も悪くないです。去年と今年は、予想もしなかった業界の賞までいただきました。仕事が増えて活動の幅が広がり、友人も、気軽に仕事の相談もできる人も増えました。引っ越し問題さえなければ、今はとてもいい時期なのです。それを実感できていない私。
 夫もいろいろと思いがけない仕事をいただいたりしていますし、進めなければならない本の構想もあります。まだ元気な私たちは今、今後の地盤をきっちり固めるためにも、もっと仕事その他の活動に力を入れるべき時期なのではないでしょうか? 
 引っ越しのために取り置いたお金があれば、長年の夢だったヨーロッパ旅行も行けるのではないでしょうか? 
 夫は私が思い詰めていると言います。もっと引っ越しも楽しめばいいのに、と。確かに心の余裕がなくなり過ぎました。引っ越し関係で時間を取られるのと、いつ内見が入るかわからないため、友人にもなかなか積極的に「会おう」と言いづらい日々が半年も続いています。
 引っ越し騒動で、もう脱出したと思っていたネガティブな自分をまだまだ持っていることに気づかされました。私はもう30年以上、生い立ちと資質から困った自分を育て直していますが、まだ甘かった……。周りにはポジティブでステキな友人・知人がたくさんいます。彼女・彼たちからもっと吸収して、人生を楽しめる人になって、物件の欠点も笑い飛ばせるようになって、仕切り直すのがいいのではないでしょうか?
 ああこの書き方自体、ネガティブですね。自分の欠点・弱点しか見えなくなってしまったのは大いに問題です。
 とりあえず、真剣に物件を探すのはいったん終了です。もちろん、くり返しになりますがいずれ引っ越しはしなければならないので、縁があれば引っ越しはします。皆さん、お付き合いありがとうございました。続く!

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