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Oasis Managementから株主提案を受けたフジテック株式会社の2023年2月の臨時株主総会について①

皆様
初めまして。
アクロポリス・アドバイザーズと申します。
弊社は「Clarify True Value of Companies /企業の真の価値を明確化する」をMissionに、来たら喜ばれる存在となれるよう、日々上場企業様向けに資本市場戦略コンサルティング業務を展開しております。
資本市場の発展に寄与していく存在として、日々精進しております。

今回、新たにNoteを始めることになりました。
本Noteでは資本市場周りのトピック(アクティビスト、資本市場関連の経済産業省・金融庁の動き、資本市場関連のレポート紹介など)をNoteにまとめていきたいと思います。

今回は長らく話題となっていた、香港の投資ファンドであるOasis Management (以降オアシス表記)とエレベータ大手のフジテック株式会社(以降フジテック表記)の事例についてまとめていきたいと思います。
同社たちの動きは2023年2月24日の臨時株主総会での決議によって一旦収束した形となりました。

ここでの決議のように、株主提案によって社外取締役が解任されるのは数少ない事例であり、一連の流れに注目している方も多いと思います。
少々長くなってしまいますが、臨時株主総会の決議結果をおさらいした上で、それまでの経緯とその後について時系列毎に全3弾に分けてまとめていきたいと思いますので、どうぞお付き合いいただけますと幸いです。


■臨時株主総会(2023年2月24日)

 双方のそれぞれの見解(後ほど記述)があった末、臨時株主総会での決議の結果、5人の社外取締役のうち、取締役会議長を含む3人の解任が決定し、またオアシス側が選んだ6人の社外取締役候補のうち3人が選任されました。
 一方フジテック側が選んだ2人の候補者は両者とも反対多数で否決されました。
 この結果、社外取締役はオアシス側が多数派を占め、経営陣の半数近くが入れ替わることになりました。

【参考資料】
【臨時報告書】2023年2月24日開催臨時株主総会決議結果

■臨時株主総会までの双方の動き(〜2023年1月20日)

①2022年12月5日:オアシスがフジテックに対して、臨時株主総会の招集を請求

 オアシスは、創業家との深い関係などフジテックのガバナンス体制を問題視しており、主にフジテックの社外取締役6名の解任と、新たに社外取締役7名の選任する提案を行いました。
 オアシスは主に、フジテックの事業戦略の策定及び執行には問題があり新中期経営計画も実現できないこと創業家による関連当事者取引等が横行しておりガバナンス体制に深刻な問題があることこれらの結果株主は競合企業対比で十分なリターンを得る事ができていないこと、などを提案の背景としています。

株主提案の内容
第1号議案
 社外取締役6名(杉田 伸樹、山添 茂、遠藤 邦夫、引頭 麻実、三品 和広及び大石 歌織)解任の件
第2号議案 以下の社外取締役7名選任の件
[社外取締役候補者]
浅見 明彦、深田 しおり、トーステン・ゲスナー(Torsten Gessner)、クラーク・グラニンジャー(Clark Graninger)、金子 裕子、海野 薫、ライアン・ウィルソン(Ryan Wilson)
第3号議案 社外取締役の個人別の基本報酬額決定の件
第4号議案 社外取締役に対する事後交付型株式報酬の付与の件
第5号議案 社外取締役に対する株価条件付事後交付型株式報酬の付与の件
第6号議案 取締役(社外取締役を除く)に対する事後交付型株式報酬の付与の件

株主による臨時株主総会の招集請求に関するお知らせから引用

この提案はこの後4度に渡って修正されることとなります。

【関連資料】
株主による臨時株主総会の招集請求に関するお知らせ
総会招集請求時のプレゼンテーション資料

②2022年12月22日〜2023年1月4日:オアシスが臨時株主総会招集の請求にかかる内容を4回に渡って修正

 2022年12月のうちにオアシスは株主提案を4度に渡って修正しています。これに対して、フジテックは「株主提案が真摯に当社の企業価値向上を目的として検討されたものとは到底思えません」と表明しています。
一方で、オアシスのセス・フィッシャー最高投資責任者は「候補に対して、(社外取締役候補を辞退するよう)脅しがあった」と反論しています。
 実際に、各候補者には、一般投資家を自称する人物から送られた文書が届いています。この文書では、候補者の個人的な問題を根拠にして、フジテックとの関与を中止するよう要請しています。送り主の正体などは明確ではありませんが、非公式の場でもこのような動きがあったようです。

以下の表は、4度の修正でそれぞれ主にどのような変更があったのかをまとめたものです。

【関連資料】
株主による臨時株主総会の招集請求に関する議案の一部撤回及び招集の理由の変更並びに議案通知請求の撤回及び再請求に係る再三の書面受領のお知らせ

③2023年1月20日:フジテックが臨時株主総会の議案について、取締役会の意見を公表

 フジテックは、オアシスによる株主提案の議案全てに反対しています。

また①にて記載したオアシス側の提案の背景に対し、「これらの指摘事項は、いずれも、以下のとおり提案株主の調査不足による事実誤認、或いは、提案株主の姿意的なミスリードであると考えております。」と述べています。

(ア)事業戦略に係る指摘に対する見解
当社は、創業以来高い職業倫理に基づく製品/サービスの提供を通じてお客様の信頼を得ており、業績は順調に拡大しています。直近10年も売上高/営業利益を伸ばしており、中期経営計画でも目標数値を達成しています。
(イ)ガバナンス体制に係る指摘に対する見解
当社は、積極的なガバナンス改革を行っており、社外取締役と女性取締役の増員、監査役の適切な構成などにより、定量的に日本のガバナンス先進企業と評価できます。社外取締役は取締役会の67%を占め、女性取締役は22%です。また、実質的な能力や経験も備えた独立社外取締役がおり、国内でも最高水準のプロフェッショナル集団となっています。
(ウ)競合企業対比リターンに係る指摘に対する見解
当社のTSR(株主総利回り)は、競合他社(KONE Oyj、Schindler Holding AC、株式会社日立製作所など)を過去の1年間から10年間の各期間で上回っており、株価も過去10年間で5倍の上昇を記録しています。これにより、株主には一定のリターンを提供していると考えています。

取締役会の意見よりまとめ

【関連資料】
臨時株主総会の付議議案及び株主提案に対する当社取締役会の意見に関するお知らせ
Oasisの臨時株主総会招集請求に係る主張に対する当社見解について(プレゼンテーション資料)
Oasis主張に対する当社見解についての補足資料(プレゼンテーション資料)
当事者関連取引等について(プレゼンテーション資料)

※2023年1月25日に、フジテックは軽微な内容の修正を行いました。

今回は2022年12月~2023年1月までのオアシスとフジテックの動きをまとめました。2023年2月~臨時株主総会終了までの動きをまとめていきたいと思います。

楽しみにお待ちいただけたら幸いです。


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