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還暦、退職、富士山登頂1

 定年退職、そして転職して初めての夏休み。
退職したら元気なうちに富士山に登ろう!と、この何年間か漠然と考えていた。
 6月末にふもとっぱらでソロキャンした時に、その富士山が目の前に。富士山が手招きしている、よし、行くか!
 しかし、コロナ明けで山小屋は予約がいっぱい、出遅れたか。ところが運良く空きが出て、実行が決まった、決まってしまった…。
 還暦のお祝いとして、モンベルのレインウェアとバックパックを家族からプレゼントされていた。もちろん、赤いやつ。ここで使うしかないでしょ。山頂から家族に猛アピールだ!
 たくさんのYouTuber先生から、吉田ルートの様子や服装・装備を教わり、準備を整える。
体調は万全とは言い難い。この歳になって満点の体調なんて滅多にあることじゃない。
 朝4時過ぎに家を出る。下道を通って富士山パーキングへ。遠足の前日みたいな寝不足。しかし、山中湖近くから見える富士山の姿に、一気に目がテンションが上がる。
 順調に車を走らせ、7時過ぎにパーキングに到着。7時半の五合目行きバスに乗る。バスの窓からの景色を見ながら、ワクワクが最高潮に。この時は、後に味わう厳しさを想像することはできなかった。

あの上に登るんだなぁ。

 8時半、スバルライン5合目スタート。吉田ルートで、この日の宿泊地である白雲荘を目指す。
 天気は薄い雲がかかったり、青空が出たり。暑すぎず、快適。3連休明けの平日で、人もそれほど多くなく、初心者には絶好のコンディションだと、ニヤけていたのも束の間。体の重さを実感する。山登りって体が慣れるまでいつも初めのところでキツさを感じるよなぁって、自分に言い聞かせて歩みを進めていたが、いっこうに楽になる気配がない。体調が万全じゃないからなのか?いや、そもそもこんなに重いもの背負って登ったことなどない、空気がすでに薄いのか?いろんな考えが頭を巡ったが、とにかく休み休みゆっくり行くしかない。早く家を出たのもそのため。2時くらいには山小屋につけばいいんだから。
 六合目まではすぐについた。見上げると九十九折りの登山道が延々と続いている。なんで富士山に登ろうなんて思ったのかなぁ。ちょっと後悔する気持ちが、ここで頭をもたげてくる。

先は、果てしなく見える…

 時々立ち止まりゆっくり息を大きく吸い込みながら前に進む。とにかくYouTuber先生の言う通りにしないと高山病になる、バテて身動き取れなくなると、恐る恐る先へ進む。この臆病さが、結果的には良かったのだと後になって思う。歳を重ねて、少しは考えて行動できるようになったかもしれない。

山小屋に着くたびに休まないと…。

 体力的にはどんどんキツくなってくる。呼吸、肩にかかる荷物の重さ、足の筋肉の疲労。七合目からは山小屋があちらこちらに。その度に休憩し、バックパックを下ろす。水分、行動食の補給。息を整えて、ストレッチ。これを何回繰り返したことか。

なめてたわけじゃ…。キツかったなあ。

 七合目からは、足場の良くない岩場のような道が続く。これはきつい、足が上がらないし、息が切れる。なんで、富士山に行こうとか考えたんだ?こんなにしんどいのは、いつぶりだろう?はっきりした動機が思い出せないなぁ。
それでも、進めばゴールは逃げずに近づいてくる。昼を過ぎ、出発もうすぐ5時間。計算ではそろそろ着くはずだ。
 あ、足が〜。ピキピキいってるぞ、もうすぐつっちゃうよー。と、モモ裏とふくらはぎの筋肉の声が聞こえてくる。

着いたー。しんどかったなぁ…。

 そんな時に目に入ってきた白雲荘の文字と、小屋のお姉さんたちの元気な声。助かった、筋肉つらずに済んだ。もう今日はこれが限界、というちょうどいいタイミングで到着。13時半になんとか山小屋にたどり着いた。
 さっそく受付を済ませて寝床へ。先にお隣さんが横になっていた。自分と同年配らしきおじさん。山小屋って隣との距離感が半端なく近いな。夫婦でもあんなに近くないぞ。
 疲れたので昼寝でもしようと横になったものの、なぜか寝られず。となると、おじさんの横にずっといるのも気づまりで、外の様子を見ながら休むことに。自分も十分おじさんなんだけどね。八合目からは雲が下に見える。あれが雲海か。普段見られない景色は疲れた心身を癒してくれる。

ずいぶん上まで来たんだなぁ。

 夕飯はハンバーグ入りのカレー。疲れているからか、よく味がわからないまま食べ終わる。お隣に大阪からのご婦人。話しかけてくれて、山やアウトドア、車中泊の話など楽しい時間だった。前日ご来光を拝んだ経験から、いろいろアドバイスもしてくれた。これが本当に役に立った。出発時刻、服装など、ここでの会話が、後の行動に大きな影響を及ぼすことになる。
 初心者の自分に神様が遣わせた人なのではと
今でも感謝している。
 さて、明日は頂上でご来光。アドバイスを生かして、AM1時に出る。早く寝床へ。あの隣のおじさんより早く寝て体を休めなきゃ。
 しかし、おじさんはすでに横に。そしてイビキもスタート。これは厳しい。でも、頂上はもう近くまで来ている。あとは気合いだ!

富士吉田の町がきれいに見える

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