米国の20世紀の偉大な作家カート・ヴォネガットの命日(2007年4月11日)

 15年前の2007年4月11日にヴォネガットは84歳で亡くなった。

ヴォネガットが亡くなった頃、その前に働いた米国スタートアップ企業がナスダックに上場したのに合わせて退職、IT企業の子会社に転職したばかりだった。

 この会社は「サステナビリティーをテーマにスタートアップへの戦略投資を通じて新規事業開拓するシンクタンク」という、どう考えても当時はぶっ飛んだ会社で、さまざまな業界からとんがった人材が集まっていた。

 新しい仕事はいつも刺激的で、特にそれまで自分が知らなかった分野に出会うことが楽しくて仕方なかった。
 一方で、それまでまったく知らなかった業界の人たちとの付き合いでは、業界特有の言葉や考え方を理解することにも苦戦していた。

 そんな日々の中で、ヴォネガットの訃報のニュースを聞いて、本棚の奥にある彼の単行本を取り出して、読み返す日々が続いた。

 40歳になるちょうど手前で、この頃に読んだヴォネガットは20歳の頃に読んだものとは全く違う内容に思えた。

 ヴォネガットは比較的裕福な家庭に生まれたのだが、若い頃に第二次世界大戦でナチスの捕虜となるなど過酷な体験をし、父親は事業に失敗、母親はそれに絶望して自殺。
 ようやく戦争が終わり結婚して子供できるが、姉夫婦が事故と病気で相ついで亡くなってその3人の子供を引き取って育てている(全部で7人の子どもを彼は育てた)。

 多くの若者がそうであるように、20歳の頃の自分がどのような人生を送っていくのかというイメージを持つことができず、当時は40歳なんていうところまで年齢を重ねていく自分がこの世に存在していることを信じることができなかった。

 ただ、この頃に比較的多くの海外の小説を読んだことで、イメージなど持たずとも人生というのは続いていくだけはなんとなく理解できた。

 20年空けてヴォネガットを読み返しその人生には触れることで、人生などしょせん行き当たりばったりの連続なのだということが、今度はわかるようになった。

 ちょうどこの年(2007年)の暮れに、ぼくは金子勇という天才プログラマーに出会うことになるのだけど、真の天才と出会ったことで、ぼくの「行き当たりばったり人生」は新たに大きく旋回をはじめる。

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