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1日20分の免疫学(2)免疫とは②

一つの抗原に対応できるリンパ球は1万個に1個

本「特定の抗原に対応するリンパ球は、多くて1万個に1個程度」
大林「だからその選ばれしリンパ球がクローン増殖するんだよね!」
本「もしかして君は、侵入してくる"非自己"が1種類の抗原しか持っていないと考えてる?」
大林「えっ…」
本「仮に10種類の抗原を持っていたとすると?」
大林「そうか、1つの病原体≒1つの非自己=1つの抗原じゃないのか。もし10抗原あるなら対応できるリンパ球は1,000個に1個か!増えた!」

ヘルパー細胞について

本「そう。それでも少ないから、急速に増殖を開始し、他のリンパ球がそれを助けるべく作動する」
大林「その助けるリンパ球ってヘルパーT細胞のことですね」
本「免疫学では、抗原にまだ反応したことがなく未だ機能を示さないリンパ球をナイーブ細胞、細胞破壊や抗体産生といった仕事をするようになったリンパ球のことをエフェクター細胞(効果細胞)という。エフェクターの中で、他の細胞の働きの補助するリンパ球をヘルパー細胞(補助細胞)と呼ぶ」
大林「お、エフェクター細胞の説明、今まで読んできた中で一番わかりやすい!」

本「ヘルパーとその他の2種類がいることで、相手が本当に非自己であるかのダブルチェックにもなる」
大林「ふむふむ。補助を受ける側、与える側の両方の細胞が非自己と判断することで初めてGOサインが出るってわけだね」

レギュラトリー細胞について

本「さて、急激に加速した反応は、排除対象がなくなれば不要になるが、そのまま収まらない可能性もある」
大林「制御役の登場ですね!」
本「他のリンパ球を抑える役割のリンパ球がいて、サプレッサー細胞(抑制細胞)もしくはレギュラトリ一細胞(制御細胞)と呼ばれている」
大林「サプレッサーって呼び方はややこしいから消えたのではなかったの?」

本「抗体が作られるとその抗体の産生を抑える抗体も作られるという自己制御機構(イジオタイプネットワーク)も存在する」
大林「なんと!それは気になる!詳しく!」
本「第15章で詳しくやるよ」
大林「15章……725ページだ!遠い!!」
本「サボらず毎日勉強しなさい、毎日3ページ強読めば1年で読み終わるよ」
大林「簡単なようでいてなかなか毎日やるのは厳しいんやぞ」

本「活性化して増殖したリンパ球の多くは死滅し、一部が次回に備えたメモリー細胞(記憶細胞)として残る」
大林「うん、知ってる」
本「活性化された後に死滅する機構を活性化誘導細胞死という」
大林「それは初耳!機構としての呼び名があったのか〜」

主要組織適合抗原について

本「ヒトという同じ種族でも他の個体の細胞表面には自分の細胞とは異った抗原がある。自己の変異細胞でも本来とは異なる抗原がある。細胞表面分子で、個体ごとに異った抗原としての性質を示すものを組織適合抗原histocompability antigenと呼ぶ」
大林「MHCか!あれ、Mがついてないな」
本「臓器移植の際拒絶反応の原因となっている抗原であり、組織が適合するかどうかに関わっているので組織適合抗原と呼ぶ」
大林「そういう名前の由来だったのか……Janeway’sにも同じようなことは書いてたんだけど、なんだかこちらの説明の方がしっくり……あっ!もしや、Janeway’s生物免疫学もエッセンシャル免疫学も『原著は英語』だからその辺の文章の独特の読みにくさがあったってことか??!やっぱり同じ分野の専門書は複数著者・出版社のものを複数読むと知識が立体的になる気がする」
本「その中で特に重要なものを主要組織適合抗原(MHC抗原:major histocompability antigen)という」
大林「お、Mがついた。そうか……ようやくしっくりきた。主要組織適合抗原って呪文みたいに覚えてたけど、今ようやく理解がおいついて、覚えなくても覚えられるようになったかも」
東邦大学「主要組織適合抗原とは、同種集団間で多型を示す細胞膜糖タンパク質の総称で、ヒトではHLA抗原がこれに相当し、赤血球以外の細胞の表面に発現している。移植抗原ともいい、移植片と宿主との主要組織適合抗原が異なると重度の拒絶反応を引き起こす」
大林「この説明も突然わかりやすくなった!読める!読めるぞ!たまんねぇなこの快感!」


本「MHC抗原には大別してクラスIとクラスⅡとがある。T細胞はIに対応するものとⅡに対応するものの2種類がある」
大林「うん、それは知ってるぞ。CD8T細胞クラスⅠを認識して、CD4T細胞クラスⅡを認識する。クラスⅠはほとんどすべてのヒト細胞※の表面にあるから、言い換えればCD8T細胞はほとんどすべてのヒト細胞に結合しうるってこと。他方、クラスⅡをもつ細胞は限られている」
※赤血球表面にはMHCがない

本「どのT細胞も、その対応抗原を持つ他の個体の細胞を破壊する。通常は前者が主として働く」
大林「クラスⅠがメインってことか」
本「T細胞の抗原レセプター(TCR:Tcell Receptor)は自己のMHC抗原と他の個体のMHC抗原とを区別することを目的として生まれたようである」
大林「ちょっと気になるのだけど。他の個体の細胞が体内に入ってくるって、臓器移植とかの医療の進化に伴うものであって、普通に生きてたら入ってこないよね?だから、T細胞攻撃してはいけない対象か、排除すべき対象か、という区別をするために、MHCを足掛かりにしてきたって理解でもいいと思う。自己(攻撃してはいけない)か非自己(攻撃を検討)かをMHC認識を使って区別する細胞がT細胞」

T細胞の抗原認識について

本「TCRは、自己のMHC抗原プラスαとの両方に噛み合う部分をもつ」
大林「ん?初めての表現だ……MHCと抗原との複合体を認識するって今まで読んだ本には書かれてたから」

本「自己のMHCとしか噛み合わないレセプターをもつT細胞は消去される」
大林「えーと、それはつまり、TCRが自己のMHCに噛み合ってさらにそのTCRが特異的なプラスαと反応することがT細胞の必須条件と言うことかな?」
本「T細胞は自己の主要組織適合抗原を基本としてそこにプラスαが加わった時に結合するようにできているようである」
大林「んん……ちょっと整理するね」

◆整理メモ
①T細胞の表面にあるTCR(T cell receptor:T細胞受容体)は、
ほかの細胞表面にあるMHC異常がある又は病原体(非自己)由来のペプチドが付着していて、尚且つそれに特異性をもつ場合は、結合し、反応する。

②1個のT細胞に発現しているTCRは1個の抗原にのみ特異性をもつ。
(「スーパー抗原」のような例外はある)

③1個の非自己には複数の抗原がある。つまり1個の非自己に特異的に対応できるT細胞も複数ありうる。

大林「今まで読んだ本とは違う角度からの説明だから不思議な感覚だけど、理解が少し深まる感じがする!たのしい!」
本「他の個体の主要組織適合抗原は、自己のMHCの一部が変化したものとして認識する」
大林「やっぱりそうなんだ、他の個体の細胞が入り込むのって、通常であればめったにないことだもんね。異常をきたした自己の細胞扱いで排除対象になるってことだよね」

本「B細胞などを補助するT細胞はクラスⅡ+αに反応する」
大林「ヘルパーT細胞だね」
本「T細胞は本来、主要組織適合抗原を相手とする性質なので、細菌物質などの"非自己"に対しては直接反応できない
大林「うん」
本「他の細胞表面のクラスⅡにその非自己抗原が連結することで、自己本来のものとは少し変化して初めて反応できる」
大林「推しが回りくどくて奥ゆかしくてかわいい~!」
本「このように、T細胞が抗原に反応できるように助ける細胞を抗原提示細胞という。クラスⅡをもつことが必要条件である」
大林「MHCを認識の足掛かりにするT細胞は、病原体のような非自己単体には反応できない。だから抗原提示細胞が自身のMHCクラスⅡにその非自己をくっつけて一部が異なるMHCを提示することで、ヘルパーT細胞が認識して反応できるってことだね!おk把握!」

今回はここまで!
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