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国家試験問題のタクソノミー分類と国家試験対策

鍼灸師のYaMatoです。今回は自習用の記事ではありません。ですが、国家試験に関する内容なので何かのヒントになったら良いなと思います。記事後半では個人的に国家試験はこんな風に挑んだという褒めてほしいだけの雑記となっています。

1、タクソノミー分類とは

taxonomy(評価領域分類)というのは、あまり聞きなじみがないかもしれません。私も数年前まで知りませんでした。
試験問題は「どの程度の思考過程が必要となるか」によって分類されています。これがタクソノミー分類です。Ⅰ~Ⅲ型があり以下のようになっています。

Ⅰ型-想起
Ⅱ型-解釈
Ⅲ型-問題解決

Ⅰ型からⅢ型へと順に高度な知的能力が必要となり、ⅠよりもⅡ、ⅡよりもⅢと高くなっていきます。(分かりにくいかもしれませんが、簡単にいえばⅠ型は思い出して解答するのに対し、Ⅲ型になると解釈の回数が増え、より判断力が必要になります。)

今回ははり師きゅう師国家試験の過去問を例にしながら、タクソノミー分類を理解しようという記事です。

2、それぞれのタクソノミー分類の特徴

ここからはⅠ型・Ⅱ型・Ⅲ型の特徴を詳しくみていきましょう。イメージしやすいように今年の2月に行われた第30回の問題を例にします。

最初に説明しておきますが、これを知っていれば成績は上がるかと訊かれれば、個人的には大した変化はないと思います
ただし、学校の試験や校外模試を見直したときに、自分の苦手とする傾向に気付いたり、どういった過程でその選択肢を選んだのかを分析するのには役に立つと思います。

①タクソノミーⅠ型(想起)

基本的な知識を理解しているかを問う問題です。
設問を読む→想起する→解答する
という思考プロセスを辿ります。

「次のうち、正しいもの(誤っているもの)はどれか」「○○なのはどれか」といった問題が多い印象です。
例えば第30回の問題20(解剖学)では食道について正しいものを問いてます。これは正しい知識を想起できれば解答できるものとなります。

②タクソノミーⅡ型(解釈)

基本的な知識を活用した解釈・理解といった応用力を問う問題です。
設問を読む(情報の提示)→状況や状態などを理解・解釈をする→→解答する
という思考プロセスを辿ります。

問題文や選択肢で与えられた情報から、理解・解釈を1回行うというのがⅡ型の特徴です。
主に状況や状態といった情報を提示し、理解・解釈をさせるような問題に多い印象です。
第30回の問題96(東洋医学概論)を見てみると、問題文で「気機を上昇させる五志=怒→肝」という理解をしたうえで、初めて選択肢を選ぶことができます。

③タクソノミーⅢ型(問題解決)

基本的な知識を活用した思考力や判断力を問う問題です。
設問を読む(情報の提示)→状況や状態などを理解・解釈する
選択肢を読む→問われている内容を理解・解釈する→回答する

という思考プロセスを辿ります。

問題文の情報を解釈するのみでなく、各選択肢の持つ意味も解釈できないと解答できず、解釈を2回行うというのがⅢ型の特徴です。
ほとんどが臨床問題であり、はりきゅうの場合は総合問題などが該当します。

3、これをなにかに活かせないのか(おまけ)

改めてこうした分類を見ると「うんうん、なるほどね…で、結局これって何に使えんの?」という気持ちになると思います。上記したようにこれを知っているだけで成績が上がるとも思えません。

しかし、毎回同じタクソノミーで落としていることに気がついて対策を立てる人もいると思います。ここからはおまけ程度の内容となりますが、そんな対策のお手伝いになるかもしれない、YaMatoの個人的な国家試験に向けた対策法や過ごし方を以下に書いていきます。

1年生から3年生までの3年間を担当したのは唯一第29回のはり師きゅう師国家試験を受験した学生さんだけなのですが、そこで教えていた方法のまとめにもなります。

①教科書を読み切る

勉強のメインテキストに何を選択するかは結構重要。学校のプリント、分かりやすく解説された参考書、最近ではYouTubeなどの動画コンテンツもあります。
個人的には教科書をオススメしています。理由は国家試験に出題される問題のほとんどが教科書から出題されているためです。
例えば生理学やはりきゅう理論では教科書内の文がそのまま選択肢になっていることもあります。なので読み飛ばしがないように基本的には通読となります。ただ読むだけでなく、理解しながら読むのが前提です。
一度に全てを読もうするとなかなか大変なので、各章が終わるごとに過去問を解いたりまとめを作るなどして知識の整理が必要です。要はインプットしっぱなしではなく、こまめなアウトプットが大切です。
そこでもし理解しにくい内容があれば、学校のプリントや他の参考書を見てみてください。

そしてこれがタクソノミーⅠ型の問題に強くなる方法でもあると考えています。想起できれば解答できるので、こうした方法で知識の出し入れを普段から行う練習になります。
ちなみに解剖学・生理学・病理学・臨床医学総論のほとんどがタクソノミーⅠ型での出題となります。教科書の通読→○✕問題→見直しだけでもかなり効果はあるはずです。

ある時期からYaMatoに「この時期はなにを勉強したら良いか」を訊くと、必ず教科書の通読しか言わなくなります。いきなり厚いものが大変であれば病理学などからでも良いと思います。
あんなに高いお金払って買っているわけですから、ボロボロになるまで使い込んでください。本読んでおけば臨床出てからもそんなに勉強が苦ではなくなるはずなので。

②過去問で穴を埋める

過去問の取り組みは早ければ早いほうが良いと考えています。まだ1年生であっても。先程説明した教科書を通読後に問いてみるのもアリです。

過去問の利点は「現在の知識レベルの確認ができる」ことと、「知識の穴に気が付ける」ことだと思います。
単純に過去問を解いて間違っていれば、そこはまだまだ頭に入っていないという気づきになります。解いてみて初めて知る情報もあったりします。

1年生のうちからでもやったほうが良い理由としては、まだ習っていない範囲もやることで、今後学習するときに「あ、ここは過去問に出ていたな」と注意を向けられるようになるためです。

29回の学生さんたちには、新しい単元に入る前にその範囲の過去問を解いてもらっていました。もちろん分かるわけがないので点は取れません。でも良いのです。点を取ることが目的ではなく「今からこんな道を通るぞ」「こんなモンスターが出るぞ」という警告みたいなものなので。
よく講義中に「ここは〇〇回で出てた」と言ったりするのも同様の目的です。わざわざアンダーラインを引いてと言わなくても、慣れてくると「こういうとこにも注意が必要だな」と自分で考えられるようになります。

③読書をする

急に国家試験対策と関係なくなったと思われるかもしれませんが、読書をするのもオススメです。できれば教科書や医学書と関係ないものが望ましいです。

タクソノミーⅡ型は最近ではリハビリテーション・東洋医学概論・経絡経穴概論で多くみられます。一度文を読んで理解や解釈をして解答しなければいけないので、読書がちょうどいいトレーニングになります。
これはどんな意味なんだろう、こういう解釈で合っているのかなと常に考えることは臨床にも繋がります。

読書がどうしてもキツイならドラマや映画でも大丈夫です。できれば倍速で観たりはせず、全然ストーリーでは言及されていない心の動きを考えながら観ると良いと思います。

④運動と睡眠

何時間でも追い込める人もいますが、適度に勉強から離れてリフレッシュする時間も作ってください。私の場合はオフ日は学校帰りに毎週適当な駅で降りてプラプラ何駅か散歩したり、当時はウエイトトレーニングにもハマっていたので、モヤモヤしたらバーベルを挙げたりしていました。

試験も勉強も体力勝負なので運動は推奨しています。勉強時間30分犠牲にしてでも身体は動かしたほうが良いと思います。
併せて重要なのが睡眠です。国家試験は朝なので早めに生活リズムを朝型にしてほしいと考えています。
私は22時以降は勉強をやらないと決めていたので、さっさと寝てました。夜1時間かかることって意外と朝の15分くらいで済むこともあるので、思い切って寝たほうが良い場合もあります。

⑤勉強法より継続性

基本的な勉強方法は①と②で、あとはいかに継続できるかしかないかなと考えています。他にも暗記重視や効率化や色々な方法がありますが、どれを選んでも結局続かないなら全部一緒だと思います。

継続できるための環境設定をしてください。家に帰ると勉強しなくなるのであれば、帰宅前にカフェでやるとかその程度でも継続に繋がります。
私の学生時代は学校前のベローチェか、家と職場の中間にあったジョナサンで自習をしていたのですが、絶対に元を取るまで動かないと決めていました。(本当にあのときはお世話になりました。今後も一生かけてお金落とし続けます。)
あとは一緒に勉強をする仲間でも良いと思います。近くに人がいればアウトプットもしやすくなります。

以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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