見出し画像

隠ぺい増税「こども支援金」を野党が阻止できない理由

経産省の先輩でもある原英史さんが、こども支援金について、民主主義を揺るがす「隠ぺい増税」だ、と舌鋒鋭く批判を展開されています。

しかし、残念ながら、今週木曜日には、支援金制度を含む子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案は「すんなり成立」する予定です。原さんの言葉を借りれば、野党の「存在価値すら問われる」事態と私も思います。

では、なぜ、こんな事態になってしまったのか。原さんは、理解できない、と仰るでしょうが、私は、なるべくしてなった、野党は負けるべくして負けた、当然の帰結であると考えています。

1.歳出改革への覚悟と実行力で野党は負けた


岸田内閣は、歳出改革=社会保障改革を断行します。法律案に書いてあるのだから、必ずやります。

凄いことです。

いわゆる「改革工程」まで作って、その準備を整えてきた。確かに、もっと深くやれ!と野党は言えるし、私も審議の中で、厚労省そして財務省に更に深い社会保障改革を求めました。

しかし、結局、野党が提出する対案は、日銀が保有する上場投資信託ETFの分配金(立憲民主党)、国会議員定数の削減、行政改革そして資産売却(日本維新の会)、そして国債発行(国民民主党)。

こんな対案では、財務省、こども庁、厚労省連合はビクともしません。

2.少子化対策を社会保障に含めた時点で野党は負けた


2012年、当時の民主党は、自民党公明党を巻き込んで、いわゆる三党合意を取り決めました。消費増税です。しかし、三党合意の肝は、単なる増税ではありません。

消費税法に「年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる」と明記したのです。いわゆる「社会保障四経費」を法定したのです。

私たち野党は、支援金=社会保険料を少子化対策に使うのは目的外使用だと批判していますが、政府は、2019年9月に全世代型社会保障検討会議を立ち上げ、「お年寄りだけではなく、子供たち、子育て世代、さらには現役世代まで広く安心を支えていくため、年金、労働、医療、介護、少子化対策など、社会保障全般にわたる持続可能な改革」を準備してきたのです。支援金制度は、突然でてきたのではなく、着々と準備が進められてきたのです。

もちろん、制度として確立された年金、医療保険及び介護保険という社会保障給付とエビデンスも何もない少子化対策との間には、大きな溝があり、社会保障改革、医療制度改革の果実は、社会保険料、医療保険料の抑制に使わなければならないのですが、維新でさえ、「医療維新」に、医療制度改革の果実を少子化対策に使う、と明記してしまいました。TF事務局長として強く反対しましたが、平場の議論もないまま、岸田内閣の尻馬にのってしまったのです。おそらく、維新政調は、自分たちのやってることの意味さえ理解していないでしょう。少子化対策を社会保障に含めた時点で野党は負けていたのです。

3.税から逃げた時点で野党は負けた


そもそも野党は、歳出改革の実行力で劣勢であり、少子化対策は社会保障給付ではないというロジックでも対抗できなくなった。武器を自ら放棄した。

そうした中で、私たちの最後の砦は、歳入改革、税構造改革、負担構造改革となりました。支援金は、政策ではなく財源です。少子化対策に資する歳出とは何か、児童手当なのか教育無償化なのか、そうした政策論議ではなく、歳入の構造、負担構造そのものが議論の対象となりました。

社会保険料は、逆進性が強く、働く現役世代に負担が集中してしまうため、少子化対策に逆行する。こうした認識は、税・社会保険料負担率グラフ等を作成し広報に努める中で、確実に広がってきたように思います。

少子化対策のためには、政策を問うだけでなく、負担構造についても問いただしていく必要がある。所得ベースの社会保険料より、消費ベースの消費税、更には資産ベースの負担の方が、資産を有しない現役世代に優しいのは、明らかです。

だからこそ、医療制度改革TFの中間取りまとめに「資産ベースを重視した給付と負担に舵を切っていく」と明記したら、維新政調は、削除してしまった。武見厚労相でさえ「応能負担の強化」を繰り返し強調しているのに、「医療維新」には「(所得のみでなく)資産」がないだけでなく、「応能」という二文字さえない。

野党は、(税収中立を前提とした)税構造改革、負担構造改革のから逃げたのです。

財源に正面から向き合い支援金の創設を国民に愚直に訴え続ける政府与党に、覚悟も論理も準備もない野党が、勝てるわけがないのです。

以上、長くなりましたが、なぜ野党は勝てないのか、気づきの点を書き連ねました。

少子化対策法案は「すんなり成立」するのではありません。日本の未来を支えんとする霞が関の必死の闘いの成果として、新しい支援金制度が誕生するのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?