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江國香織『東京タワー』を読んだ時の思い出

こんにちは。
4月21日(土)に、X(旧Twitter)で東京タワーがトレンド入りしていました。はて?何かイベントでもあったのかな?
ドラマに疎い私は、永瀬廉さんが主演で『東京タワー』のドラマが放送されていることをXで初めて知りました。

ん?東京タワー??何で?出版されてからだいぶ経つよね??

調べてみると令和の新しいかたちの『東京タワー』とのことです。

私がなぜ『東京タワー』のドラマを調べるほどに気になったかと言うと、原作小説を読んだことがあるからです。小説『東京タワー』を読んだ時を思い出して、とても懐かしい気持ちになったのです。そこで今回は私が江國香織さんの『東京タワー』を読んだ時の思い出を書きたいと思います。

私が『東京タワー』を読んだのは東京でした。
当時、学生で時間を持て余していました。そんな私の趣味は、図書館の本を借りてきての読書だったのです。

私がよく訪れていたのは、渋谷区立渋谷図書館です。


レンガ造りがカッコいい図書館でした。暇があれば足を運び、様々な本を借りました。渋谷の路地を抜けた先、住宅街の片隅にポツンとある区民憩いの場でした。本当にお世話になりました。

なぜ、私が過去形で文章を書いているかというと、渋谷図書館は閉館してしまってもう2度と行くことのできない図書館です。

渋谷の知の拠点ですが、建物の老朽化には耐えられなかったのでしょう。残念ですがしょうがないです。

この渋谷図書館で私は『東京タワー』と出会いました。
タイトルの東京という文字に惹かれて手に取ったことを今でも覚えています。私は地方の会社への就職が決まっていました。東京を離れることに未練があったのでしょうか。導かれるようにこの本を借りました。

普段は下宿先の部屋で読むのですが、その当時は外のベンチで読むことにハマっていました。何故かはよく分かりません。東京の風を少しでも浴びていたかったのでしょうか。

渋谷駅の南側に渋谷川が流れているのをご存知でしょうか。渋谷駅新南口付近から明治通りと並行するように恵比寿駅の方まで流れが続いています。
その渋谷川のほとりにベンチが数個設置されています。渋谷リバーストリートという名前が付いているようですが、当時の私はそんなオシャレな名前を知る由もありませんでした。私は渋谷川のほとりのベンチに腰掛けて『東京タワー』を開きました。

物語の主人公は私と同じ大学生です。しかし、東京の大人の恋愛が本の中にはありました。私には経験したことのない話です。東京ってこんなエキゾチックで淫らで、でもキラキラしている場所だったんだと改めて感じました。

私は渋谷駅の新南口から恵比寿の少し北側の広尾という地域までが好きでした。渋谷の大都会から南側へ歩いて15分ほど。大都会と下町の狭間のような雑多な雰囲気が心地よかったのです。

大都会のビル群を眺めながら読む『東京タワー』は「私の東京への未練」を映したように感じました。心地よいこの場所にもっと暮らしたいという思いです。

しかし、私は決断をしました。東京を離れることを。私にとって敢えて厳しい道へ進んだのです。


それから数年が経ち、現在も地方に住む私ですが、当時の決断は良かったと思います。東京に残る人生は経験していないので比べようが無いのですが、元気にやっています。

『東京タワー』のような刺激的な毎日ではないですが、日々楽しく過ごしています。『東京タワー』の見えない場所が私には合っていたのだとそう思います。

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